隣の席の豆腐

柔らかな桜の風を頬に受け 出会ったのは 豆腐の君

柔らかな桜の風を頬に受け

出会ったのは　豆腐の君

ぶつかって、恋も喧嘩も始まらず

床に散らばる君の欠片

窓際の光る君に目をつぶる

教科書眩しいニガリの涙

死にたいと嘆く彼女に差し出した

おぼろ豆腐の角は丸くて

SNS　炎上君は焼き豆腐

漏らしてしまった蒟蒻悪口

フラスコの底に眠る科学者の

想いは何処　柔らかな君

算数で君の体積出せるけど

不正解だと言い張る年頃

君は崩れていいんだと言うけれど、

君が崩れるとあの子が泣くの

配慮ではないとみんなが言い張った

豆腐の出ない調理実習

覗きたい　思春期男子　時代じゃない

興味はひとつ　湯豆腐の君

交換の消しゴムひとつ　昼休み

響く足音　君のようだね

放課後の　下手くそチューバの基礎練習

夕焼け校舎で君は震えて

少しだけ木綿を入れる冒険感

校則破りの制服だけど

巡る朝　巡る校舎の夢を見て

今は無くした　豆乳の記憶

宿題のノートに描く相関図

君はいつでも真ん中直角

ソイビーンズケーキと呼べと意気がる君

英語辞典の角に似ている

校庭に　咲き誇っているスニーカー

砂埃かな　おから舞い散る

昼休み途方に暮れる保健室

たなびく白衣に君は憧れ

見上げれば　白い雲に覆われて

絹のごとく　壊れるさざ波

似ていないモノマネをしながらサヨナラを

豆腐見せかけ鋼鉄メンタル