ゲームに例えたら
「配信開始したか?」
「こっちはオッケー」
「ん」
「大丈夫ですよぉ」
「ああ」
おそらく今回が初と思われる、5人それぞれのチャンネルでのコラボという形。
奏と凪咲はサブチャンネルがあるため、奏がサブチャンネルで配信を開始している。
“きちゃ”
“いつメンか”
“ロアちゃんは?”
“画面は同じっぽい?”
“ゲーム画面か?”
有り難いことに大勢の人が観に来てくれている。そして今回、またも案件配信であった。
「おーっす。つーわけで、今回はオレら“五帝皇”でのコラボだ」
「その呼び方名乗るの恥ずかしくないの?」
「誇らしいだろうが、オレらより上がいないって感じがしてよ」
「ダサい」
「カッコいいだろ!?」
通話を繋いでいるためヘッドフォンから聞きなれた声が馴染みあるやり取りをしている。
「企画説明してくれよ」
「おう! ってかお前がやればいいじゃねぇか」
「やだよ、面倒臭い」
「人に任せておいて!?」
“草”
“進めては欲しいけど自分ではやりたくないwww”
“でもこの5人なら仕切るのは牙呂君か凪咲ちゃんって感じするわ”
俺はなにかをやろうと言い出すタイプではない。自分でやりたいことは自分でやるし、誰かがやりたいなら言い出してくれればやるかもしれない。正直人付き合いのいい方じゃないのかもな。
「ま、いいか。今回はオレら5人への案件依頼での配信でな。今画面に映してるのは、もうじき配信開始予定のゲーム、MMORPGって言うんだっけか? の『D&W ONLINE』だ。タイトルのDとWはダンジョンだったりワールドだったり色んな意味が込められてるらしいな。全部は明かされてないが、それはゲームをプレイしてって話だ」
“このゲームやりたかったヤツ”
“ゲームの案件は珍しい”
“ゲーム配信者じゃないのに”
“ダンジョンがあるから、実戦もやってて影響力がある面子に依頼したとかかな?”
“コラボ期待”
「魔法とかも使えるし、スキルツリーっていうシステムでできることを増やして自分だけのプレイスタイルを磨くから、アタシ達にとっては現実と同じようなキャラクターを作ることもできるって」
“なるほど”
“ゲームってリアルでできないことを体験できるモノじゃなかったのか……”
“逆に考えれば、ワイらが5人のスタイルを真似できるってことか”
“楽しみ”
2人がざっくりと説明してくれたが、俺達のこの案件の役割は単純。ダンジョン配信を観ている人達は、当然それが面白いから観ているわけだが、自分達はダンジョン攻略に参加できないしないという人も多い。世界人口で言えば探索者なんて少ないモノで、ダンジョンとは関係のない暮らしをしている人達が多く存在する。
だからこそ、普段自分が観ている探索者達のような戦闘ができるようになる、というゲームは興味を持ちやすいのだろう。
元々ゲームが好きな人は情報を集めるし、ゲームの配信者を観る。俺達はどちらかと言えば初心者を集めるための宣伝をしようという立場だ。
「で、まぁ電子機器になるとロアが強すぎるから、今回は不参加ってことだな」
「そりゃな。AIがゲームしたら最適化効率化がエグそうだし」
今回ゲームをプレイするのはPCだが、ロア用のPCを持っていないというのもある。ロアも特に不満はなさそうで、今も家の中を掃除してくれている。
「ってことで早速プレイしてくぞー」
ゲームの中の風景らしき背景にタイトルと「NEW GAME」などの文字。タイミングを合わせてクリックするとゲームのオープニングが流れ始めた。
「映像綺麗ね」
「ああ。ゲーム界隈じゃ期待の新作みたいだな」
「結構現実を加えた世界観なんですねぇ」
各々でコメントしながらオープニング映像を眺める。
世界観としては、剣と魔法のファンタジー世界に数多と現れたダンジョンを攻略して世界の謎を解き明かしていこう。
といった感じみたいだ。確かに現実っぽい。俺達の世界にもダンジョンが現れて、今攻略していっている。世界の謎にも若干迫っているような気もするし。
“流行りのダンジョン要素を加えたRPGってことか”
“最近のゲームはクオリティが凄い”
“グラフィックが進化しすぎてる”
“オープニング観てるだけでやりたくなってるな”
ナレーションが世界観の説明をしてくれた後、最後に「さぁ、冒険の旅へ出よう」という言葉を放つ。ワクワクさせてくれるモノだ。そしてプレイヤーとなるキャラクターのクリエイト画面に移される。画面の左上に出ている文言が「君はどんな姿で冒険したい?」なのもいい。
「えーっと、運営側でオレらっぽいパーツの番号を貰ってるから、今回はそれでやってくぞ」
「ファンタジーっぽく色んな種族があるんだね」
「顔は決まってますけど、種族と職業は悩みますねぇ」
“公式から似てるパーツを貰ってる……だと?”
“つまり推しパーツがパクれるってこと?”
“クソ、やりたい”
“まんまと運営の策に嵌まってて草”
俺も種族と職業という2つの項目だけ後で選ぶことにして、運営から貰っているパーツ情報を基にキャラクターの見た目を決定していく。……確かに似ている。俺の姿をゲームに落とし込んだと言われても違和感ないくらいだ。
“めっちゃ似てるw”
“マサやん”
“上手いなぁ、ここの運営”
“模倣マサが量産されそう”
“俺、このゲームやる時は村正の容姿で奏ちゃんみたいな剣士にするんだ……”
“やめろお前、タヒぬぞ”
“どんなフラグだよwww”
「……ねぇ。なんか、アタシのスタイルの指定数値低くない!? もうちょっと、あるよね!?」
キャラクター作成中、凪咲が不満を言っていた。俺は彼女の画面を見ていないが。
“草”
“指定って言っても端っこやろ?”
“ゼロじゃねぇかwww”
“ないやろ”
「妥当じゃね?」
「凪咲はそれくらい」
「ゲームくらい盛りたいんですねぇ。けど、今回は案件なので我慢してくださいねぇ」
「煽りかぁ!」
実際に配信開始されたら急に巨乳にしてきそうだったが、まぁあくまでゲームなので好きにしたらいいと思う。
大体は終わったのでとりあえず、種族と職業についての説明を牙呂がしてくれるのを待つか。
「で、種族か。種族は結構大事で、素体の見た目にも関わってくるんだよな。ヒューマンなら現実の人間と同じ感じ。あとはファンタジーでお馴染みのエルフとかドワーフとか獣人とか」
「猫耳とか可愛いよねー」
「猫耳のマサ……」
「色々あって面白いですよねぇ」
“推しには軽率にケモミミを生やせ”
“マサ推しの奏ちゃんも生やしたがってるわw”
“草が生えるゾ”
“凪咲ちゃんの猫耳とか絶対可愛いが”
多種多様な種族が存在していて、見た目にも反映される。獣人なら猫とか犬とかもあるみたいだ。こういう楽しみ方もあるんだな。
「種族は決定すると変えられないから注意な。種族毎にステータスの差があって、ヒューマンならバランス型。エルフなら魔法寄り、獣人なら素早さとかが高くなるみたいだな。この時点で結構プレイスタイル決まってくるんだな」
「アタシはやっぱ魔法がいいからエルフにしよっかなー」
「鬼にする」
「私は天使にしますねぇ」
「オレは獣人だな。狼にすっか!」
「犬じゃないの?」
「犬より狼の方がカッコいいだろ?」
「犬の方が合ってると思うけど」
「なんだと!?」
なんと言うか、どんなプレイスタイルにするかわかりやすい種族選択だった。
“凪咲ちゃんのエルフわかるー”
“奏ちゃんの鬼はマサの鬼化か?”
“単純に近接キャラっぽいからってのもありそうだが”
“天使桃音、異常なまでに似合う”
“牙呂君が犬は解釈一致www”
“犬太”
“ケンタ草”
“wwwww”
「んー……。まぁ俺はヒューマンにしとくか」
「意外だな。ドワーフかと思ってたわ」
「まぁ、2択ではあったな」
ヒューマンなら現実でもそうなので、若干面白みに欠けてしまう。ドワーフみたいな特化した種族にしてもいいが、ここは逆にバランスの方にしてみた。他が特化していることだしな。
「ってことで、職業だが」
「マジシャン」
「ファイター」
「プリースト」
「スミス」
「……だよな。シーフだ」
“草”
“全員まんまじゃんwww”
“ゲームなんだから他のこと試してもいいのにw”
“やりたいことがゲームでも変わらんか”
“だからこそ推せる”
“別のことやらせたかったら自分でやるしかないってこと!?”
“クソ、ここにも運営の策に嵌まった犠牲者が……”
種族選択の時点である程度わかってはいたが、やはり現実と同じようなスタイルでいくようだ。まぁ俺達はそうするだろうな。少しくらい他のことをやってみたい気持ちはあったが、結局世界トップになるくらいそのスタイルを貫き通してる連中だから。
「んじゃ開始するか。序盤はチュートリアルとストーリーがあるから、それが終わってから合流しような」
「オッケー」
今回は所謂先行プレイというヤツになる。ゲーム内には俺達ぐらいしかいないみたいだが、紹介しつつ売り部分を見せていくのが役目だ。
初めてのモンスターとの戦闘をやってみたが、慣れない操作で苦戦するかもと思ってたが結構やれていた。
“なんだこのスミス”
“ここまで機敏に動けてスミスとか嘘だろ”
“反応早くないか?”
“探索者だからなぁ、動体視力と反射神経がエグいんだわw”
"コメ欄が初配信の時みたくなってて笑う“
“プレイヤースキル求められる部分が強いんだ”
コメント欄が盛り上がっているかと思ったら、なんだか驚かれていた。……ちょっと初配信の頃を思い出してしまう。
懐かしいと思うくらいに時間経ってたっけな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます