鍛冶師対談パート2、と言うか雑談

 本日は鍛冶師対談の3度目。と言うよりただの鍛冶師コラボになってきている。

 2度目も画面を映さず話して配信に慣れさせるようにしていた。


 3度目の今回は、いよいよ虎徹ちゃん顔出しの時である。


「はい、配信始めまーす」


 今回はカメラあり、だがもしもの時のためにロアをカメラ役にしている。なにかハプニングがあった場合すぐに画面をオフにできるからだ。


 ロアが俺の対面に座り、俺はソファーに腰かけている。


“待ってた!”

“遂に虎徹ちゃんの顔出しか”

“きちゃ!”

“楽しみ”

“で、その虎徹ちゃんは?”


 肝心の虎徹ちゃんはカメラに映っていない。劇的に登場して欲しかったわけではなく、ただ直前で恥ずかしがって隠れてしまっただけである。


「虎徹ちゃん。大丈夫だから」


 俺はソファーの後ろに声をかけた。虎徹ちゃんはそこに隠れているのだ。


「うぅ……」


“ソファーの裏にいたか”

“恥ずかしがっちゃったかな?”

“心配しなくても大丈夫”

“虎徹ちゃんになにか言おうならロアちゃんの即BANが待ってるぜ”


 コメント欄の雰囲気も悪くない。

 虎徹ちゃんは大きな身体を屈めて隠れているが、ソファーの裏で顔を上げてくれた。笑みを返すと、ようやく決心がついたようだ。


 恐る恐るソファーの上から顔を出す。


“きちゃ!”

“かわ”

“結構童顔なんだな”

“顔大きめ? 遠近感か?”


「大丈夫だから出ておいで」


 俺は普段よりかなり下にある彼女の頭を撫でてやる。


「えへへ〜」


“かわいい”

“嬉しそうw”

“にっこにこで草”

“この感じ、間違いなく虎徹ちゃんだわ”

“普段笑ってる時もこんな感じだったんだな”


 それで落ち着いたらしく、虎徹ちゃんが立ち上がる。


「よい、しょ」


 ソファーに隠れていた全身が露わになっていった。


“でっっっっっっっっ”

“デカすぎんだろ”

“これが285センチ”

“マサって6人で一番身長高いはずなのにな”

“マサが小さく見えるぞw”

“しかもすらっと体型じゃなくて、結構がっしり体型なのね”

“桃音ちゃんよりでっっか、と思ったけど体格差で比率がわからん”

“普通の人の物差しじゃ測れないでしょw”


 画面に映し出された虎徹ちゃんの大きさに驚愕しているようだ。言葉で聞くよりも見た方がインパクトは大きいだろう。


「どうぞ座って」

「はいっ」


 俺が促すと、虎徹ちゃんは隣に座った。こうして俺が横に並ぶと大きさがよくわかるだろう。


“距離感バグるw”

“村正の方が小さいのに、虎徹ちゃんの方が幼く見える不思議”

“童顔巨体ってのがアンマッチでよろし”


「というわけで改めまして、虎徹ちゃんです」

「虎徹です! ……うぅ、やっぱりカメラはちょっと恥ずかしいです」

「大丈夫だって。普段通りにしてればいいから」

「はい。マサさんがいるとやっぱり安心します」


“虎徹ちゃんってめっちゃ村正に懐いてるよな”

“同類鍛冶師で気が合うし間違いない”


「さて。虎徹ちゃんの顔出しも完了したし、場所を移すとするか。と言うのも、今日は虎徹ちゃんの装備を見てもらうのも一緒にやるつもりなので。ここが協会に用意してもらった部屋なので、別の部屋に行きます」

「移動中は念のため周囲にモザイクをかけさせていただきます」


“了解”

“ロアちゃんいたんかw”

“今回は完全にカメラ役なのね”


 ということで別室へ移動した。完全防音、協会の技術によって頑丈に造られたトレーニングルームみたいなモノだ。白い広々とした部屋で、探索者の手合わせなどにも使える。


「虎徹ちゃん、装備の準備をお願い」

「はいっ」


 虎徹ちゃんには今回紹介する装備の準備をしてもらい、着替えるのでそっぽを向いておく。カメラに映る俺は俺で色々な武器を取り出しては並べていった。


“おぉ……”

“マサも武器使うんか?”

“虎徹ちゃんの装備楽しみ!”

“盾の性能チェックとかかな”


「準備できました!」


 虎徹ちゃんの少しくぐもった声が聞こえてきて、振り返ると同時にカメラに映す。そこには、大きくて重厚な藍色の装甲が立っていた。


“え?”

“鎧!?”

“カッコよ”

“重厚すぎてロボ感もある”


 機械のような造りを取り入れた、虎徹ちゃんが自分用に造った防具なのだろう。性能もさることながら、素材もいい。なによりも、


「おぉ、いいな。また腕を上げたじゃないか」

「っ! えへへへへ〜」


“顔は見えないけどめっちゃ嬉しそうw”

“見えないけどかわいい”

“兜もあるのに嬉しそうなのがわかるw”


 虎徹ちゃんのフル装備は、頭から爪先まで全身を全て覆う全身甲冑だ。全身装甲と言った方が正しいのかもしれないが。


 傍にはいくつもの盾が置いてあり、手に持っている藍色の盾は虎徹ちゃんの大きな身体を覆えるほどに大きく、重厚だ。

 当然武器も並べてもらっている。


「それじゃあ早速始めようか。最初は市販の鋼鉄の盾でお願い」

「はいっ」


 まずは小手調べ、というか俺の武器がどの程度の威力を持っているか示すための演習だ。


「これから虎徹ちゃんの防具がどれくらい頑丈なのか試していきたいと思います。ただいきなり見せてもどう違うかわからない可能性もあるので、まずは市販されている5万円の鋼鉄の盾から。俺の方は同じ武器で、どれくらい耐えられるかを見せていこうというわけです」


“鋼鉄の盾も結構な硬さ”

“一般探索者なら普通に使うレベルではあるな”


「今回使う武器がこちら」


 俺は並べた武器から一つを持ち上げ、腕に装着して見せる。


「破壊崩滅烈拳ガルドノヴァ。富士山挑戦中にコピーが使ってきた破壊崩滅拳メトロノヴァの改良版です。変わったのは基礎威力もそうですが、5段階まで威力を調整できるようにしました。内側のつまみで調整できて、段階に合わせて自動で使用者から魔力を徴収することで威力を発揮します」


“56されかけたヤツじゃねぇかw”

“視聴者のトラウマを抉っていくスタイル”


「マサさん、死んじゃったかと思いました……」

「死んでないから大丈夫だって。ほら、1個目いくよ」

「は、はい」


“本人が一番気にしてなくて草”

“むしろ造り直すいい機会になったとか思ってそうw”


 しょんぼりする虎徹ちゃんを促して、鋼鉄の盾を構えさせるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る