第2部

富士山のダンジョン感想雑談

 俺達6人が富士山のダンジョンを攻略したことで、世界中は結構な大騒ぎになった。


 世界的大ニュースと言ってもいいだろう。


 ダンジョンが現れて以降ずっと停滞していた、高難易度ダンジョンの攻略が成されたのだ。攻略中は様子見、ダンジョンの全体像を把握しながら準備を進めていた者も多かっただろうが。


 まぁ、俺はとりあえず溜まっていた鍛冶の依頼をこなす意味も含めて一番熱のある時期を籠もってやり過ごしていたのだが。

 取材やらが押し寄せてきたので、面倒事を避けるには良い方法だったろう。


 そういうのを煩わしく思う奏はイライラしているようだったが。


 兎も角、こうして落ち着いて配信ができるのはあれ以来初となった。


「えー、ではまず完走した感想を」


“草”

“マジの完走w”

“ミームわかるんかマサ”


 一旦解散となり、それぞれの活動に戻ることになった。

 俺には鍛冶依頼が舞い込んできており、協会関係者への報告、擦り合わせなど色々なことにも追われていた。


「まだ皆さんから貰ったメッセージ読み切れてないんですよねぇ。視聴者さんからの応援コメントもそうですけど、案件の依頼とかコラボのお誘いとかも」


“そらそうだw”

“攻略中見ないようにしてるって言ってたからなぁ”

“めっちゃ来てそうw”


 雑談枠としてのんびり話す今回の配信が、攻略配信の次の配信となる。

 それまでは鍛冶をこなすので精いっぱいだった。2ヶ月で10本の依頼をこなせるとは思ってなかったので、思っていたよりは空いた期間は短いのだが。


 久し振りに外界に触れた俺達は、色々な情勢に置いていかれていた。他の5人は問題ないだろうが、俺がこうしてゆっくり情報に触れるのはあれ以降初だ。


「鍛冶の期間と合わせて約1年世間に触れてないんで、変わったこととかわからないんで教えてもらえると有り難いです。あ、話題に上がったヤツだけでいいですよ」


 牙呂や凪咲は早々にそういった部分を取り戻していったみたいだが。元々そこそこ疎いので。


「あと今更ですけどチャンネル登録者数1000万人突破ありがとうございます。記念配信とかするかわかんないですね。一応1周年もあったんですが」


“そら忙しいだろうしな”

“配信者としての活動が少ないからしゃーなし”

“無理になんかしようとしなくていいぞ”


 温かいコメントが並ぶ。外国語のコメントもいっぱいあるが、俺が軽い英語ぐらいしかわからないので後でロアに確認しておこうと思う。

 案件やコラボの管理も全て彼女に任せることにしていた。


 そんな彼女は俺の隣に並んで座っている。


「とりあえず今後の予定みたいなのを発表しなきゃなんですが……結構詰まってるよな」

「はい。マスターの予定は先半年埋まってしまうかと思われます」


“エグいw”

“一気に人気者になったなw”

“デビュー1周年の大物配信者だからな”

“矛盾で草”


「ということで、案件とかコラボとかは順次返答していきます。俺達6人を呼びたい場合は、牙呂か凪咲宛にしてもらえると多分早いですね」


“あの2人はその辺も慣れてそう”

“決定してる大きな予定とかある?”


「決定してるのか……。とりあえずまた配信が1週間だか空くのと、あと対談コラボがあるのと、5人で受けた案件があって」

「スケジュールはみっちりです。あと協会の方から早めに新モンスター素材の提供と査定をしたいとのことで連絡が来ていました」

「あぁ。値段決めないと造った武器にも値段つけられないからな。神剣売りに行くのもあるし、直近の予定前に協会顔出すか」


“みっちりかぁw”

“仕方ないとはいえ配信もして欲しい”

“5人の案件ってことはロアちゃんなしか”

“ロアちゃんは村正とセットみたいなところあるしな”

“6人の予定押さえるの難しいぞ、頑張れ企業w”

“対談コラボが気になるんだが”


 色々やることやりたいことが山積みで、今は首が回っていない。


「対談コラボは、知り合いの鍛冶師とのコラボですね。富士山のダンジョンを攻略してから、自分も実際にダンジョンに行きたいって言ってる鍛冶師がいまして。配信者になるわけじゃなくて、攻略中に同行したいみたいです」


“おっ!?”

“鍛冶師対談!?”

“きちゃ!”

“ワイらよりも、鍛冶師探してる探索者が喜びそうw”


「予定してるのは2人で、どちらも総合力では俺と同等の鍛冶師です。得意分野が多少違いますけど、防具が得意な鍛冶師と特殊な能力のない純粋な武器が得意な鍛冶師ですね。この2人は俺と同じである程度戦えるので、鍛冶師探してる人は是非。対談後から俺経由で連絡取り合って、それから直接会ってどうするか決めるって感じになると思います」


 鍛冶師側も慎重だ。当たり前の話だが、いくら戦えると言っても所詮は鍛冶師。いざという時には命を預けなければならない。そこまで信頼できる人物かどうか見定めなければならないのだ。

 俺とは毛色が違うものの、2人共充分強い部類だと思う。


 本人からの申告がなければこんなことしないのだが、これから挑みたい探索者にとっては朗報だろう。実際いい鍛冶師を紹介してくれとメッセージを送ってきた探索者は多かった。


“めっちゃ楽しみ”

“どんな人物かも重要だからな”

“ただ2人かぁ”

“マサでも2人だけってなると、なんならマサ自身にお願いする人もいるかもね”


「一応前情報だけ。2人からオリハルコンの加工に成功したって連絡が来たから。それくらいの腕前は保証されてると思ってください」


“マサだけじゃなかったんか”

“マサのを見てって感じではありそう”

“腕前を保証するのに充分すぎる情報で草”


 2人共鍛冶師として超一流。戦闘力も申し分ないと思う。


「というわけでお楽しみに。配信者としてまだ初心者なんで、他にも色々やってこうかなって思ってます。案件とかは基本あいつらとやることになりそうですけど」


 俺の方に届く案件も誰かと、というパターンが多い。単独での案件は少なめな気がする。


 それからも今後の予定についてのんびりと話しつつ、久し振りの単独配信(ロアはいるが)を終えた。

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