下層へ行く前に
中層のボス、白の純色竜の上位種を討伐した。
続けて下層に行きたいところだが、牙呂の持っていた武器が2本共粉々に砕け散ってしまう。……修復して無理させてしまったからな。戦いが終わるまで持ってくれてありがとう。
「オリハルコン製の武器が砕けちまったな。まぁ無理させてたからしゃあないんだが」
「オリハルコンならもうちょいいけると思ってたんだが、これで武器なくなったな。仕方ない、少し早いが鍛冶始めるとするか」
「元々予定はしてたもんね。武器を人数分、10本とか用意してたら数年かかっちゃうからある程度現場でやればいっかって話になってたし」
「だな。悪いが頼んだぜ、村正」
「ああ」
俺は牙呂と話してから倒れた白いドラゴンの下へ向かう。ドラゴンの素材の中でも最上位の素材が目の前にある。記録上は未だ誰も扱ったことのない素材。ワクワクすんな。
「村正の邪魔はしないように、今日はゆっくり休もうぜ。流石に疲れたしな。配信も終わるか。明日また朝から今後の方針話し合うような配信すると思うから、観に来てくれよな」
牙呂が配信を締め括る。
視聴者からのお疲れ様コメントで溢れ返り、スパチャが無数に飛び交う。多分決着直後はもっといっぱい来ていたと思う。
死力を尽くしての熱い戦いではなかったかもしれないが、強敵と戦ういいシーンが撮れたんじゃないだろうか。
配信を終えて、俺は素材の剥ぎ取りに注力。折角の貴重な素材なので余すことなく回収したかった。話し合いは他に任せる。
「今後の方針をざっくりとだけ話しとくぞ」
「了解」
「牙呂君の武器がないので、しばらくはお休みですかねぇ」
「ああ。配信的にはつまらんだろうが、無茶して死ぬよりかマシだ」
「その方がいいと思う。様子見だけしたい気持ちはあるけど、取り返しがつかない可能性だってあるし」
一旦待つ方針のようだ。進行具合で言えばまだ半分。無茶をするタイミングではない。余裕がある内に休んでおくのは悪くない。
俺は鍛冶についてはスタミナが別腹なので休みなく作業を続けた。
翌朝になって起きてきた5人で配信を開始している。
「つーわけで、まぁちょっと話し合ったんだが一旦待ちにするわ」
“安全策取れて偉い”
“配信者は冒険しがちで事故多いからなぁ”
“探索者としてもプロだからな”
“ガチ感あって良き”
「ってことでしばらくは雑談配信とかなんか適当な配信するわ。村正があんな感じだし」
“鍛冶やってんな”
“ちゃんと休んだの?”
“マサ君鍛冶になると終わるまで休まんからなぁ”
「あぁ、あいつは鍛冶バカだから素材剥ぎ取って直後から休まずに取りかかってんぞ。曰く、鍛冶に関しては別なんだと」
「マサかわいい」
「奏はずっとマサ君の方見てるし。ロアちゃんが耳栓持ってきてくれてて良かったよ」
「マスターの鍛冶を円滑に進めるためです」
「こんな感じで半分くらい使いモノにならんわけよ」
“なんかいつも通りだなw”
“安心感あるわぁ”
“つい最近のことなのに、もうなんかこの面子って感じする”
「じゃあしばらくのんびりしましょうねぇ。ゆっくり休んで、下層に挑まないとですからぁ」
「ああ。んで、その間は配信しなかったりなんか適当に配信したりするかもだ。予告はするからまた観てくれよな。チャンネル登録、SNSのフォローもよろしく」
後から聞いた話だが、翌日は本当に短く話だけをして終わったらしい。
次からは俺が武器を造り終えるまでの間、残ったメンバーで雑談したり中層ボス戦の振り返り配信をしたり普通にゲームしたりしていたらしい。なにそれ楽しそう。
「終わったーっ!!」
そのため、俺が鍛冶を終えてばったり倒れ込んだ時にも配信していたらしい。
「お疲れ。今の配信終わったら今後のことを――」
「おやすみ」
ただ流石に戦闘直後の鍛冶はキツかったので、俺はぱったりと倒れて意識を失った。
◇◆◇◆◇◆
“終わったかと思ったら倒れてて草”
“大丈夫か? って言おうとしたけど満足気だから大丈夫かw”
“村正が鍛冶やってる間にUN○で遊んでる仲間いるってマ?”
“お疲れ、マサ”
鍛冶が終わったと聞いて飛ばしていたドローンがそちらを向いたのだが、そこで村正が地面に倒れて寝始めた映像も映っていた。
「そんなとこで寝たら風邪引く。ベッドに運ばないと」
「その前に、汗を掻いたままですので身体を拭いて着替えさせなければなりません」
「それならお風呂入れちゃえばいいんですよぉ」
そこに奏、ロア、桃音が近寄っていく。
“マサ裏山;;”
“女の子にお風呂入れてもらえるってこと!?”
“は?”
“狡いぞマサぁ!”
“寝てる間に敵作ってて草”
「あー……悪ふざけもそこまでにしとけ? 杞憂民湧くから。あと村正が後で大変だろうから」
“牙呂優しい”
“視聴者に気を遣って悪ふざけって言ったのに3人共ガチで首傾げてんの草”
「とりあえずゆっくり寝かしておいて、ってこと! 配信終わってマサ君が起きるまで待つからね」
という凪咲の提案によって、村正は一旦放置された。一応布団だけは被せられていたが。
そんなこんなで無事村正が目を覚まし、ゆっくり風呂に浸かって装備を整えたところから配信が始まる。
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