第26話 セルフレイティング 残酷描写あり、なのよねぇ……。


 「……」

 「……オイ、『コイツの顔』覚えたな?」


 「……大丈夫、なんだろうな?」

 「あぁ、あっちの方に顔が効くから、上手い事もみ消してやるよ、フッ!」



 ※※※



 夏の暑い夜、蓮と沙樹は仕事終わりに待ち合わせをして、俺のコンビニに向かっていた。

 腕を組んでベタベタしながら歩いちゃって、別に二人で食事に行ったりすれば良いのに……。



 「沙樹〜っ、別にコンビニ行く必要なくない? イチャついてんの見せつけられてさっ

……、その、……俺もシタくなるから……♡」


 「んー、私も社長にね、麻里ちゃんがちゃんと書ける様になるまで見守ってくれって言われてるから……」


 麻里の事を何で社長が気にかけているのか良くわからないけど、……ま、いっか。


 「私だって、……蓮と……っ?」


 「……っっ!!」



 「あぶな〜いっっ!!」



 沙樹は咄嗟に蓮を突き飛ばした。



 キキィーーッッーーッッ!!!!


 ドンッ!!




 「誰かひかれたぞーっ!」


 キャーッ!!  キャーッ!!



 「沙樹ぃ〜っっ!!」




 「ちっ、……オンナの方か、まぁいいさ」

 フルスモークの黒い車が猛スピードで走り去った。



 蓮の目の前には、車にねられて横たわる沙樹の姿が、……道路に血がみるみると溢れ出した。


 「救急車っ!、救急車を呼べーっ!」

 周りの人達が叫んでいる。


 「沙樹ぃーっ、しっかりしろ、沙樹ぃーっ!!」


 蓮は沙樹を抱き寄せて大声で叫んだ。


 「私、医療関係者です、動かさないで下さいっ、急いで止血しますっ!」


 偶然にも、通りすがりの人が応急処置を始めてくれ、すぐに救急車も到着した。


 蓮も救急車に乗り込んで、沙樹に声を掛ける。

 「なんでっ? なんでだよーっ! 沙樹ぃーっ! しっかりしろぉっ!」


 すると沙樹は、うっすらと目を開けて、

 「蓮……気をつけて……、アナタを……狙ってた……わ」


 「沙樹っ、もういいからっ、喋るなっ!」

 蓮が泣き叫ぶ


 「バネ……太も、……あぶな……」


 沙樹はそのまま目を閉じ意識を失った。


 「沙樹ぃぃーっっ!!!」




 ※※※




 「バネ太、沙樹が、……沙樹がぁ〜っ!」


 泣きじゃくる蓮から連絡を受け、俺と麻里は病院へ急いだ。


 「ひき逃げ、だってよ……」


 タクシーの中、麻里が涙を流しながら呟いた。

 「沙樹さん、……大丈夫だよね?」


 ブルブル震えている麻里を抱きしめ、


 「大丈夫っ、沙樹はそんな事で死ぬ訳ないじゃないかっ!」 


 そう言いながらも、俺も震えが止まらなかった。


 ※


 病院に着いたら、ほぼ同時に社長と蓮の事務所の堀船社長もタクシーから降りて来た。


 「走らないで下さ〜い!」


 俺達は看護師さんの静止を振り切って病院内を走って手術室へ急いだ。


 手術室の前で、呆然と立ち尽くす蓮を俺は後ろから抱きしめ、……何も言葉が出てこない。


 麻里や社長達も、ただ立ち尽くしていた。



 ※



 手術中のランプが消え、執刀医が出て来た所に蓮はすがり付き、


 「先生っ、沙樹っ、沙樹は……っ!」


 執刀医はマスクを外し、蓮の両肩に手を置き、

 「大丈夫です!」


 「額を切って出血しましたが、事故直後に直ぐに止血をして、応急処置をしてくれたので助かりました。後は全身打撲と右足骨折、咄嗟に頭を庇ったのでしょう、奇跡的に命に別状はありません」

 


 力強い口調で言い、蓮の両肩を優しく叩いた。


 「ありがとうございます、ありがとうこざいま……っ!」


 蓮は全身の力が抜ける様に、執刀医の足に泣き崩れた。



 ※



 社長達が蓮の腕を取り待合室のソファーに座らせ、……しばらくは皆、無言になった。


 口を開いたのは、……蓮だった。


 「沙樹は、……俺をかばってかれたんだ。 俺を、……狙ってた、って」


 そしてうつろな目で俺を見て、

「バネ太も、……危ないって言って意識を失ったんだ……」


 「……っ!」

 麻里が両手で口を抑える。


 蓮は続けて、

 「俺とバネ太を狙ってるって事は、……犯人はアイツしか居ないっ!」


 「まさかっ? 翔也がっ? ……アイツ、気が弱いからそんな事出来るとは思えないけどっ?」


 俺が言うと、蓮は首を横に振って、


 「……多分、兄貴の龍也だ。アイツ、裏の世界のヤツとも繋がってるって噂だしな」


 そしたら堀船社長が、

 「あぁ、アイツならやりかねないな、……多分ひき逃げもアイツの指示だろ?」


 そして社長も、

 「それならバネ太だけじゃなくて、麻里ちゃんも気をつけた方がいいぞ! 噂じゃ手段を選ばないで何でもやるらしいからな」


 「バネ太ぁ、怖いよ……」


 俺は麻里の肩を抱き寄せ、反対側の手で蓮の手を強く握りしめて、



 「絶対、大丈夫だっ!」



 「とりあえずオマエ達には小型のGPS発信機をつけて、何かあったらすぐに駆けつける様にしておこう」


 社長がそう言って俺達の肩を叩いた。


 「もう、これは立派な犯罪だ、証拠押さえてアイツらぶっ潰してやるっ!」


 堀船さんは意外にも武闘派だった。



 第27話につづく


 追記


 いつも読んで頂きありがとうございます。


 このお話、前日までは沙樹は意識不明で生死を彷徨い、そしてその後天ちゃんも犠牲に……、そして龍也は薬物中毒、麻里は拉致られ犯される寸前にバネ太と蓮が登場!


 すみません、ライトなお仕事ラブコメなのに、一人興奮してありえない方向に暴走してしまいました。


 当初のプロットに戻して書き直します。


 毎日更新を楽しみにしていた皆様、大変申し訳ありませんが、試行錯誤しながら続きを書き直しますので、1日おき更新になると思います。


 ラストはもちろんハッピーエンドです!

 そこまでの過程をお楽しみくださいませ。



 ※※



 


 黒桜「どうよ? 一切おフザけなんてないでしょ?」


  桜「ングーっ、ンゴンゴゴ……」

 (口を塞がれ手を後ろに縛られている)


 黒桜「はぁ? 離脱ぅ? 勝手にすればいーでしょ、知った事じゃないわっ!」


  桜「ングー、ンゴゴンゴンゴっ!」


 黒桜「んあ?」

   「★くれ、♡くれ、フォローくれですって?」


 黒桜「んなの、いらねーよ、ぺっ!」

   「そうね、……マンションなら頂くわ!」


 桜「♪ンゴゴ、ンゴンゴ、ンゴゴーッ♪」


 ♪読んで頂きありがとうございました♪

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