第19話 たまには自分を褒めてもバチは当たらないと思うのよねぇ♪


 そして当日、朝早くから物販に並ぶ熱心なファン達を横目に見ながら会場入りした俺は、……寝不足だった。



 ※※※



 そりゃそうでしょ! 昨日の夜、いきなり内容変更して『双魂』やるなんて!


 昨日はあの後、社長達や蓮と別れてから俺は不安になり、コンビニに戻って『双魂』の台本読みをしていた。


 ぶっつけ本番で、しかも千人のお客さんの前でやるんだぞ? オマケに配信もあるし。


 少しでも準備しておかないとマズいだろ?


 蓮は酔っ払って、『オレはもう寝るから、オマエ台本読んでおいてねー!』とか言ってるし、……流石は二年連続主演男優賞、って言うかメンタルお化けだな。


 麻里にもこの事をLIMEで報告したら、驚いて駆けつけてきた。


 「バネ太っ、凄いね!『双魂』だよっ! 大チャンスじゃない? うんうん!」


 早速イートインスペースにタブレットとノートパソコンを並べて、台本をチェックしながら二人でアニメの第一話を見直して、蓮の役を麻里が代わりに演じてくれた。


 今回の朗読劇で二人が演じる場面は、主人公で双子の敦也と克也二人の掛け合いの場面で、ヒロインの南は出て来ない。


 南をかばって、交通事故で死んだ敦也が克也の体に入り込んで来て、この後二人はどうしていくかを、面白おかしく掛け合いするという重要な場面を演じる。


 蓮が敦也で俺が克也を演じる事になったんだけど、蓮のヤツ『じゃんけんで勝った方が敦也っ!』とか言って、……そんなんでいーのか?



 「蓮さんは多分、こんな声出して来ると思うの!」


 そう言って麻里は、数ある蓮の主演作から声を割り出した。


 「でね、克也は原作よりもうちょっと頼りなさげで、……でも南ちゃんを好きって気持ちは誰にも負けない! みたいな演技をあの『新しい声』でやれば合うんじゃないかと思うんだ」


 俺は麻里に言われた通りにワンシーンをやってみた。


 「そうっ! そんな感じっ♪ これなら克也と敦也、お互いの個性が活かされて聞いてる人はスッキリすると思うんだよね、……ん? ……バネ太、緊張してる、の?」


 麻里が心配そうに顔を覗き込んで来た。


 「そりゃあ、……な、……まぁ、相手が蓮だし、たとえ失敗しても上手くフォローしてくれるハズだし、……何とかなるだろっ!」


 そう自分に言い聞かせる様に言ってはみたけど、久しぶりに大勢の前での朗読劇、ぶっつけ本番で蓮と二人、知らないウチに手が震えていた。


 「バネ太っ! 手ぇ 出してっ! 手ぇっ!!」


 恥ずかしいけど、震えが止まらない手を言われるがままに差し出すと、麻里は両手で、 まるで大切な物を包み込む様に握って、そこにおでこをつけてつぶやいた。



 「大丈夫、大丈夫……、明日は絶対に成功する……」



 目を閉じて何度も何度も、呪文を唱える様に……。


 そんな健気な麻里の姿を見て、俺は思わず抱きしめてしまった。


 「ばっ、バネ太っっ!」


 そして麻里のおでこに自分のおでこをつけて目を閉じて、


 「大丈夫! ありがとうな、麻里、……おかげで落ち着いたよ!」


 そのまま頭を優しく撫でて、柔らかくて薄茶色な髪に指を通しながら、


 「麻里にはいつも助けられてるよなぁ! 明日、上手くやれる気がしてきたよ!」


 「うんっ、バネ太なら大丈夫っ!」


 人懐っこい笑顔を見せる麻里がたまらなく愛おしくて、おでこにキスをした。


 「『ありがとう、麻里♡』」


 「あぁっ、ズルいっ、その声っっ、しゅっ、しゅきぃっっ♡」


 ヘナヘナになった麻里を抱きしめて、今度は唇に……、


 「はぅ……んっっ、もう、……監視カメラ見てるから♡」



 ※※※



 「おはようございまーす!」


 少しだけ高い声で警備員さんに挨拶をして控室に入る。


 今日の控室は蓮との二人部屋だ。


 パーテーションを挟んだ向こう側には、既に蓮が来ていて、俺が着いた事など気付かない程の凄い集中力で台本を読んでいる。


 普段のおちゃらけた雰囲気の蓮からは想像つかない、誰も寄せ付けないオーラを放っていた。


 俺も目を閉じて大きく深呼吸をしながら集中力を高めていった。



 ※※※



 「あーっ、バネ太来てたのか!」


 台本を読み終えて、いつもの感じに戻った蓮が顔を覗かせた。


 「あらためて、蓮、今回誘ってくれてありがとう! 今日の客席や配信見てるみんな、驚かせてやろうぜ!」


 そう言って俺が親指を立てたら、蓮が笑いながら、


 「おぉっ! …………本当だったらこの役、俺がやるハズだったんだよねー」


 そして真面目な顔で、


 「なんか知らんけど、……急に翔也に変わったんだ! だから今日は、絶対成功させてこの役、奪い返してやる!」



 「頼むぞ、相棒っ!」

 「任せろ、相棒っ!」


 俺達はガッチリ握手をして本番に臨んだ。



 第20話につづくぜっ!



 ※※


 桜「あー、こーゆー男の友情みたいなアツいヤツ、書いてみたかったのよねぇ!」


 桜「今回、イチャイチャも友情もあって、バランス良かったんじゃないの?」


 桜「ココで♡や★、フォローしなかったらいつするって感じよねっ、ねっ!」


 珍しく満足している桜蘭舞ちゃんでした♡


 しかし、次回は何度も書き直して、頭を抱えた問題の『公開生放送回』!


 どうして良いのか分からなくなってしまったので、読んだ後に感想なり、『ここはこうした方が読みやすい』とかコメントしてくれると次に活かせると思うのよね。



 ♪読んで頂きありがとうございました♪


 




 

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