第11話 知らない方が幸せな事ってあるのよねえ……。


 「ナニコレっ! 天ちゃんなの〜っ! 私の思ってた『風花』のイメージにピッタリ!!」


 「流石は声優さんだわぁ〜! それに、相手役の赤羽さんもいいっ♡」


 数日後、事務所に仲原さんを呼んで原作の第一話の前半部分を聞いてもらった。


 俺と天も同席したから、仲原さんのテンションがおかしな事になってる(笑)


 「天ちゃん、ありがとう! 無理言ってゴメンね、でも私っ、ずっとずっと大ファンで……」

 

涙目になり、


 「あぁ〜っっ!! 夢が叶ったぁ〜っ♡ ふぇ〜んっっ、もう、死んでもいぃ〜っ!」


 仲原さんは号泣してしまった。


 「私の方こそ、ありがとうございます! 私の『新しい声』が出せたのも『風花』ちゃんのおかげなんですから♪」


 天は仲原さんの隣に座って優しく両手を握って微笑んだ。


 「てっ、天ちゃ〜んんっっ♡ しゅっ、しゅきぃぃっっ♡♡」


 完全に涙腺が崩壊してしまった。



 ※※※



 「……実はね、アニメ化、まだオッケーしてなかったの、…………この二人がやるなら、私の大切な作品、預けてもいいわっ!」


 落ち着いた仲原さんはいつものクールビューティーに戻って、俺達全員と握手をした。


 「聞いてるわよ、……あの新しい事務所が仕事取りまくってるんでしょ? 私は自分が良いと思った人しか使わないからっ、制作会社も監督も、全部私が選ぶから、みんなで頑張りましょ!」


 「ありがとうございます! 先生の作品、絶対満足のいくモノにさせますっ!」


 社長が深々と頭を下げたので、俺達も慌てて頭を下げた。



 ※※※



 それから暫くして、『コンビニ店員とOLさん』のアニメ化が正式に発表された。


 原作者の仲原さん監修の元で、来年の春に放映開始に向けて俺達は、少しでも作品の良さを引き出していける様に頑張っていこうと決意した。



 ※※※



 「亮太せんぱ〜い、ココのシーンの相手、お願いしますぅ♡」


 『新しい声』を完全に自分のモノにする為に、天はハードなスケジュールをこなした後も深夜のコンビニに頻繁に顔を出した。


 「天、……大丈夫か? 明日だって朝から撮影だろ? 俺に出来る事なら、何でも力になるからな!」


 すると天は真っ赤な顔を両手で隠し、クネクネしながら、


 「らっ、ラストの『キスシーン』の所なんですけどぉ〜♪ わっ、私ぃー、どっ、どうやっていいのかっ、わからなーい♡」


 ピピーッ


 イートインスペースから麻里がホイッスルを鳴らした。


 「天さん、『協定違反』ですっ、沙樹さんに言いつけますよっ!」


 「だっ、だってぇ、仕事だもん! それに、……私、ずっと声優目指して頑張って来たから……キス……とか、した事なくて……感触が分からないと、……リアルな演技出来ないかなって♡」


 チラチラと俺を見ながら、そっと目を閉じて顎を上げた。


 麻里は『ふぅ〜っ』っと溜息をついて、


 「もうっ、それじゃ一回だけですよっ、ちゃんと目を閉じてて下さいね!」


 麻里っ、いいのか?

 てか、……俺がするのか?


 「バネ太、……どうぞ、ちゃんと、……シテアゲテ♡」


 麻里はニヤニヤしながら俺に『マシュマロ』を渡した。



 ……そういう事ね。


 

 「天、いくぞ! ……ちゃんと目、瞑ってろよ!」

 「はっ、はいっっ!」



 ちゅっ♪



 俺はマシュマロを天の柔らかい唇に押し当てた。


 「せん、……ぱい♡」


 そっと目を開けた天はうっとりした顔で俺を見て……、暫くの間放心状態になった。


 そして、はっと我に返り、

 

 「わっ、私っ、明日の撮影っ、あっ、朝早いからもうコレで帰りますっ!」



 「それ……じゃあね、『亮くん』♡」


 真っ赤になって天は足早に帰って行った。



 「麻里、……いいのか? 勘違いしてるぞ、アイツ」


 「それで明日の仕事頑張れるならいーじゃない、ねっ、『亮くん』っ♡」


 麻里はイタズラっ子の顔でマシュマロを食べていた。


 酷いな、オマエ

 それなら……、


 「麻里……、今度は『俺の相手、……してくれないかな?』」


 真剣な顔で麻里を見つめて、両手で肩を抱き『新しい声』を使った。


 麻里はたちまち真っ赤になって、

 

 「えっ、えぇ〜っっ! どっ、どうしよ? 協定違反……」


 「『麻里、ダメ……かな?』」

 「バネ……太♡」


 麻里は真っ赤な顔のまま目を閉じ、クイっと顎を上げた。



 ちゆっ♡



 「はあぁぁ〜っっ! しゅ、しゅきっ♡」


 目を開けた麻里の前で俺はマシュマロを食べた。


 「えっ? えぇ〜っっ? 今の、……どっ、どっち? バネ太ぁ、どっちなのぉ〜っ!」


 「『いつも遅くまで付き合ってくれて、ありがとなっ、麻里っ!』」


 俺はウインクして麻里の頭を撫で回した。



 「そっ、その声っ、ズルいぃ〜っ、でっ、でも、……しゅき♡」

 


 第12話に、ちゅっ、ぢゅっ、きゅっ♡



 ※※



 さぁ問題です! バネ太はわた……麻里ちゃんにキスをしたのでしょうか?


 ヒント: 私こと桜蘭舞はマシュマロよりグミが好き♡



 ちょっとずつ二人の距離を縮めないと、本当に負けヒロインになっちゃうわ!


 「頑張れ〜! 麻里っ!」

 「負けるな〜! 天っ!」

 「沙樹……さん?」←空気


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 ♪読んで頂きありがとうございました♪

 


 

 

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