第4話 新人準備中 1
あるだろ、と言うと、うん、と頷くアマリ。
Vtuberの話を持ってきてから、アマリは大手のVtuber動画を観て色々勉強をしているらしい。
「でも私、あんまり歌歌えないし……」
「でも歌は好きだろう?」
「うん……」
俺が学生時代、たまにカラオケに誘って歌うこともあった。
歌うのもストレス解消になるから。
兄の贔屓目も込みかもしれないが、あまりの歌声はとても綺麗だ。
いろんな歌を歌ってみてほしい。
「イラストや動画編集、MIXなんかも、会社の伝手で依頼できるから歌ってみたい曲があれば希望を出してくれ。もっと会社に金があれば倉庫になってる部屋をカラオケ室とかに改修できるんだろうけど……今のところそこまでのお金はないんだ。一応新人はボイスとアクキー、缶バッジ、アクスタが作られるんでボイスの収録は会社でした方がいいと思う。自宅のマイクよりどうしても性能いいし……」
「そ、そんな……グッズとか作ってもらえるの?」
「うん。会社の収入源ってライバーのグッズとかなんだ。うちの場合公式チャンネルでやってる茉莉花のラジオ番組収入とボイスとグッズ販売なんだ。チャンネルの広告収入はライバーのものなんだけどな。あ、ライバーは個人事業主扱いだから、ワイチューブから収益化が認められたら来年から確定申告しないとだめだからな? もし税理士に頼みたいと思ったら会社の方と提携している税理士さん紹介するから気軽に相談してくれ」
「う、うん」
まだそのあたりは難しいかな。
まあ、おいおい説明していけばいいか。
そんなことよりデビューボイスだ。
「ボイス、どこで撮る?」
「じ、事務所で撮る。お金を出してもらうのに、手抜きみたいな事したらダメだと思う……から」
「そっか。じゃあ収録スタジオ予約しておくよ。シナリオは自分で書くか? 発注するならスタジオの予約もシナリオ上がってからの方がいいと思うんだけれど」
「えっと、シナリオって、普通はどう、してるの?」
「お金のないライバーは自分で書いたりしてるけど、苦手なライバーはマネージャーにお願いしたりCOCODEMOっていうサイトでシナリオライターに依頼出したりするよ。料金かかるけど、安い人だと二千円くらいで書いてくれる。兄ちゃん書こうか?」
「う、ううん。自分で書いてみたい」
おお、意外だ。
結構シナリオって難しいんだけれど、本人がその気ならまあやらせてみよう。
ちなみに長くても三分くらいのものを千円で販売します。
「グッズはイラストができた時に発注したから、ボイス収録して編集してから他のライバーのデビューとの兼ね合いもあるから社内会議で決めると思う。初配信の内容もライバーに任されてるんだけど、手伝えることがあったら言ってくれよ。どんなことするのかとかも、一応教えてくれ。デビュー即炎上とかされたら即契約解除になるから、不安なことは絶対マネージャーに相談するようにな」
「う、うん。マネージャーって、お兄ちゃん?」
「にいちゃんでもいいけど、俺は茉莉花のマネージャーだし肉親贔屓防止で金谷っていうやつがマネージャーに就くと思う。金谷はスケジュール管理が得意なやつだから、うちのライバーは五人中四人が金谷担当なんだ。俺も増やせって言われてるけど動画編集とかばっかりしててなかなか……」
って、これは俺の事情だろう。
アマリには関係ないから仕事の愚痴はやめるんだ、俺。
「あ、でも相談はにいちゃんにしてもいいからな。ただ、金谷にもちゃんと同じ相談はしてほしいっていうか」
「うん、わかった……」
アマリに初めましての人との仕事はちょっと負担かもしれないな。
でも慣れれば金谷は本当にいいやつだから大丈夫だろう。
連絡のやり取りはディスコトークチャットルームでしてもらう。
社員全員が参加しており、マネージャー以外は既読をつけるたがだから安心してほしい。
「大まかな説明とデビューまでの流れはこんな感じだけど、なにか質問はあるか?」
「えっと……収益化って、どのくらいからできるの?」
「データ統計だとおよそ五千人から一万人が一般的だな。大手の箱だと初配信で収益化基準に到達して申請できるけど、うちだと茉莉花、夜凪だけが収益化しているな。大手の真似し始めてから徐々に増えてるけど、チャンネル者数の方はライバーに頑張ってもらうしかない。会社もサポート頑張るから、自分でやってみたい企画とかガンガン出してくれるといいかな」
「う、うん」
「ただ、収益化しても思ったように稼げるわけじゃないから気を抜かないでくれよな、登録者数は減ることもある。たとえ収益化が認められても登録者数が減れば収益化取り消しになることもあるんだ。まあ、脅すつもりはないけど普通に生活できる金額を稼ぐためには登録者数十万人以上は必要だ。それより少ないとにいちゃんの給料より少ないと思った方がいい。Vtuberは人気職になりつつあるから、今乱立している。簡単なことじゃなくなっているんだ。歌みたや独自の企画があると見に来てくれる人を増やしていけるから、本当、なんでも相談してくれよ」
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