最強メイド!おぼっちゃまたちをお守りします!
緋村燐
第1話 ヴァンパイアとハンター
まん丸大きいなお月様が見えるようにカーテンを開けた部屋。
そんな部屋で私、
満月が明るいから月の光だけでも十分明るいし。
それに満月ってすっごくテンションが上がるんだもん。
「ふふふーん、ふ~ん……あとはこれっと」
鼻歌を歌いながら大きなバッグに荷物をつめ込んで、最後に一番大事なものを手に取る。
黒い十五センチくらいの筒状の棒。
これは警棒みたいに伸びて、一メートルくらい長くなる私の専用の武器なんだ。
女の子が何でそんな武器持ってるのって言われそうだけど、何を隠そう私は普通の女の子じゃない。
実は――ヴァンパイアなの!
と言っても、人間の血を飲んだことなんてないんだけどね。
生まれたときから人間より身体能力が高いヴァンパイアだけど、血を飲みたいっていう吸血衝動が出るのは早くても中学生くらいからなんだって。
この春やっと中学一年生になるという私が、そんな衝動出たことなんてある訳がない。
そんな半人前のヴァンパイアな私の夢はハンターになること!
ヴァンパイアを狩る側のハンターにヴァンパイアがなるなんて、昔だったら絶対有り得ない夢。
だけど、今は普通に目指せる夢なんだ。
ヴァンパイアのお母さんから聞いた話では、百年以上前にヴァンパイアとハンターは和解したんだって。
そのとき色々法律みたいなルールを決めて、ハンターはそのルールを破ったヴァンパイアを取り締まる警察みたいな役割をするようになったんだ。
警察みたいなものだから、別にヴァンパイアがなったっておかしくない。
むしろ身体能力が高いヴァンパイアを取り締まるんだから、同じヴァンパイアがなれるならその方がいいよねってところでもある。
ついでに言うと、人間のお父さんは昔からハンター
この黒い棒も、そんな父方のおばあちゃんから中学入学祝いにって貰ったもの。
ハンターとしての闘い方とかも教えてくれたおばあちゃんらしいプレゼントだよね。
でも私も気に入っていて、すでに相棒みたいに思ってるんだ。
だから名前も付けて、クロちゃんって呼んでる。
そんなクロちゃんをお供に向かう先は
そこの三人の兄弟の護衛を
ハンターは基本ハンター協会に所属していて、警察みたいに一つの組織で動いてる。
だから普通は何か事件や相談があってからそれを解決するために動くんだけど、たまにそういうケースから外れた案件があるんだって。
そういう案件は、昔からハンター家業をしているうちみたいな家に持ってこられる。
だからたまにお父さんがそういう依頼をこなしているのを見たことはあるけれど、まさかまだ見習いの私に依頼が来るとは思わなかったからビックリしちゃった。
なんでも、常盤家はお母さんの親友である
主に、今年から中学三年生になる長男と中学一年生になる次男の護衛をしてもらいたいらしくて私にって指名依頼が来たんだって。
初めての依頼で緊張するけれど、ワクワクした気持ちの方が大きい。
「ふっふふっふふ~ん」
私はまた鼻歌を歌いながらご機嫌に荷物を詰めた。
「って、あれ? クロちゃんを持ち運ぶためのベルトどこ行ったんだろ?」
いざというときクロちゃんをすぐ取り出せるようにと買ったベルトが見当たらない。
「あっれー? リビングに置いてたっけ?」
首をかしげながら、私はベルトを探すために一階へと下りた。
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