第39話 増え続ける分裂体

【前回のあらすじ】

やっとの思いで田中を討伐したかと思った長野の木下。

しかし田中は、心臓を破壊しても消滅する事無く、全身に包丁の刃を生やして、復活してしまった!



田中の体中から生えた包丁から、振り動作無しで斬撃が一斉に全ての方向へ放たれた!!


「「⁉︎⁉︎」」



ズバァァァァァァァァァァァァン


床が削れて瓦礫が飛び交い、普通に危険な場所となった。


「木下!一旦引こう!」

「逃すかテメェら!○ね!」



田中の体を中心に、今までに繰り出した全ての技を放った!!


ズドカァズバァァァァァァァァァァァァンァァァァァァドンガラガッシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン


「長野ぉぉ!来るぞ!」


「⁉︎……(避け切れない!終わった……全てが……)」












シュルルルルルルルルルルルルルルルルルル………



突然全ての斬撃が消えて、田中の体は一気に消滅した。

断末魔を叫ぶ暇も無く……。


「………⁉︎」


「しょ、消滅したのか……?」




2人は彼がいた場所へ行き、確認してみたが、落ちていたのは包丁とプラモデルのみ。

おそらく、本来ならすでに消滅しているはずの体を、無理に再生して、あれほどの力を一気に使ったから、体が受け付けなかったのだろう。



「あ、岩波さん!」



長野は突然甲高い声を出すと、倒れている岩波の元へ駆け寄った。


すでに岩波は○亡しているようだ。

長野は彼の手を握る。




「…………僕が入隊した頃から様々な事を教えていただき、本当にありがとうございました。

がいたから、今の僕がいるのです。

もう会う事も話す事もできませんが、空から身守っていてほしいです。

本当に、ありがとうございました………」



蓮の葉が浮かぶ部屋で、彼はそう呟いた。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



その頃、現実くんの分裂体である、激怒、テンション、鬱、無は、アメリカ人たちと戦っていた。



バチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチ!!


激怒の雷鳴が響く。辺り一面電気が走り、一気に多くのアメリカ人を感電させたッ!

どうやら彼の雷は、筋肉の機能を一時的に停止させる事が可能なようだ。


そして筋肉の機能が停止しているその隙を、無が殴って○していた。

鬱は雷が届かない距離にいる敵を、ブーメランで撃退する。


非常にバランスの取れたチームだった。

しかし一方で、テンションは……。




「ひゃっほーーーい!

あぁ、爆発ってどうしてこうテンション上がるんだ!

生物の本能に対応していると言うか、なんと言えば良い事か。

俺の性格に合っている」


彼は見境みさかい無く、爆弾をぶん投げまくっていた。

瓦礫が吹き飛び、埃が舞うせいで、敵の位置が掴みにくい。


ついに激怒が怒鳴る!


「おいテメェ!いい加減やめろ!

爆弾は敵に投げろ!どこにでも投げてれば良いわけではない!

少しは真面目にやれッ!」


「えぇ?なんつった?ww」


爆音にかき消されて、激怒の説教はテンションには聞こえない。


「おい貴様ァァァ!連携を取れ!

少しは貢献しろ!

あぁ、腹立たしい!」


「いやお前もう怒ってんじゃねぇかよ」


鬱はブーメランを投げながら、ブツブツと小声で言った。


「そりゃ怒鳴りたくなるだろ!あんな遊び人が仲間だと思うと反吐が出る」



彼らが喧嘩している様子を、アメリカ人は遠くから見ていた。


※ここからアメリカ人のセリフに、英語を入れません。

日本語だけのセリフも、アメリカ人のセリフの場合がございます。



「マイク、あいつらなんか喧嘩しているぞ?」


銃を持って箱の影に隠れているロッキーが、同じく箱に隠れているマイクに言った。


「そうだねぇ。もしかすると有利になっかもしれないけどよぉ」


彼らは追跡バッジを胸につけていた。

ヨーワーインから盗んだ品である(というより、田中が無断で渡した)。



マイクは言った。


「なぁロッキー、あいつら、とうとう攻撃をやめて、喧嘩し始めたぞぉ?」

「ハァ?」


箱から頭だけを覗かせると、激怒たちは口喧嘩していた。

雷もブーメランも爆弾も飛んでこない。


「おいこの勝負もらったんじゃねぇ?」


「よし、今がチャンスだな!」


バァァァァァン

バァァァァァン

バァァァァァン

バァァァァァン



全員の心臓を同時に破壊すれば勝てると考えたロッキーは、銃を全員に撃って、胴体を真っ二つにしたッ!!



ブシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!


「ギャァァァァァァァァァァァァ!破壊されたァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」



テンションの甲高い声が鳴り響く!

彼の上半身は吹き飛び、少し下の方へ落ちてしまった。


「うぐっ、痛い!ヒィィィィィィ」


鬱もブーメランを落として、泣き始めた。

無の上半身は相変わらず、無表情で吹っ飛んでいた。

激怒の吹っ飛んだ上半身が怒鳴った。


「チッ、喧嘩してるからっ!そう喚くなお前ら!

落ち着いて再生しろ!心臓を破壊されても大丈夫だろぉ⁉︎

俺らは分裂体なんだからなぁ!

そんな事よりも、早くお前ら出てこい!」



彼の立ち尽くしている下半身から、恨のお面を被った、新しい分裂体が生えてきた!


「「⁉︎⁉︎」」

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