インタビュー

Rotten flower

第1話

虫も眠る深夜、都会で若者にインタビューをしてみた。

「いや、今日のライブも凄かったですよ。」

全員、口を揃えてそう言った。そもそも、何のライブかも分からない我々は若者へこんな質問をしてみた。

「誰のライブですか?」

また全員、口を揃えてこう言った。

「DJ Takezawa。」

今日はそんな若者に話題な、DJ Takezawaについてインタビューをしてみた。


「本日はよろしくお願いします。」

「お願いします。」

派手に染められた髪色とは裏腹に、挨拶はとても丁寧に返事された。結局、外見と内面は全く違うということなのだろう。

「ところで、Takezawaは本名ですか?」

「えぇ、本名です。まぁ、アルファベット表記じゃなくて漢字の武沢ですけど。」

「なぜ、アルファベットで?」

「漢字だと硬く見られるじゃないですか。でも、アルファベットなら、まだ和らぐ感じがしていいかなって。まぁ、それの意味がわからないですけど。」

心理学的なことなのだろうか。かっこよく感じるが、硬いものは硬いままだ。


「最後に少し質問いいですか?」

「いいですよ。」

彼に一番気になった質問をしてみた。

「なんで、DJをされてるんですか?」

彼は少し重たそうにこう言った。

「彼女が好きだったんですよ。音楽が。」

「彼女が好きだったんですよ。」と濁しているところ、きっと何かあったのだろう。我々はデリケートではあるが彼にこう問いかけた。

「何故過去形なのですか?」

彼は隠さずに、一息をついてから我々にこう答えた。

「トラックに轢かれて…」

最後まで行っていなかったが続きの言葉は想像できてしまう。嫌ではあるが。

「人生なんて、いくらでも崩れるものです。結婚すると誓ってから、見えている道、つまり未来に進むと思ってました。でも、進んだ道は僕たちが見えない、いや、見えていない道だったんです。」

部屋の中には重たい空気と沈黙が続いた。

「でも、人生は後から後から変えることができるんです。」

「僕がDJになったのもそのためです。」

「彼女のために、僕は明日も明後日も音楽をかけて、そして、ターンテーブルを回すんです。聞いてくれないとしても。」

彼の思いが彼女さんに届け。と我々は心に思う。

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