第10話 デート終わり
そして、そんな美羽の様子を見た悠斗は、
「いきなりどうしたんだ美羽、急に情けない声を出して」
少し呆れた様子でそう言うと。
「えっ、いや、だって、夏休みでも明日は平日だから悠斗くんのお父さんとお母さんは仕事で家には居ないのに、悠斗くんの部屋に行くなんて……」
かなり慌てた様子で美羽はそんな事を言ったので。
「……お前が一体何を考えているのかは知らないが、お前を部屋に呼ぶのはお前の好きそうなアニメを一緒に探そうと思ったからだぞ」
悠斗がそう突っ込みを入れると。
「えっ、あっ、そうなんだ、びっくりした、私はてっきり」
「てっきり何だ?」
「……何でもないよ、それよりも悠斗くんは他に観たい本は無いの?」
誤魔化すように美羽がそう言ったので。
「ああ、今の所他に欲しい本は無いな」
悠斗がそう言うと。
「そうなんだ、それじゃあ次は、えっと……私は新しい服を見たいから、悠斗くんさえ良かったら付き合って欲しいな」
美羽はそんな事を言ったので。
「ああ、別にいいぞ」
悠斗はそう答えると。
「それじゃあ悠斗くん、早く行こう!!」
美羽は嬉しそうな笑顔を浮かべてそう言うと、再び悠斗の手を掴んでそのまま悠斗を引っ張りながら歩き始めたので。
「……相変わらず手は繋ぐんだな」
美羽に繋がれている自分の手を見ながら、悠斗がそう言うと。
「えっと……悠斗くんが嫌なら辞めるけど」
美羽は足を止めて少し寂しそうな表情を浮かべてそう言ったので。
「……別に嫌じゃないからいいぞ、何なら今日はこのまま手を繋いで過ごすか?」
悠斗は慌ててそう言うと。
「えっ、あっ、うん、悠斗くんがそう言うのならそうしようか」
その言葉を聞いた美羽は後ろを振り返ると、嬉しそうな表情を浮かべてそう言ったので。
「ああ、お前がそうしたいんならそうしたいのなら俺はそれで良いぞ」
悠斗はそう言って、美羽から顔を逸らした。
その後、悠斗と美羽は服屋に行って美羽が色々な服を試着したのを悠斗が見たり、他にも色々な店を見て周り。
昼が近づいて来たので、二人はメイクドナルドに入って二人でハンバーガーのセットを食べた後。
最後にアニメ映画を二時間くらいかけて観て、二人で映画の感想を少し語ってからショッピングモールを出ると、自転車に乗って帰路に付いた。そして……
「悠斗くん、今日はありがとう、私の買い物に付き合ってくれて」
美羽の家の玄関先で、美羽は少し照れ臭そうな顔を下に向けてそんな事を言ったので、
「いや、気にするな夏休み中は課題以外にする事がなくて俺も暇だったからな、俺でなんかで良かったらいつでも付き合うよ」
そんな美羽の表情を見て、悠斗も照れ臭くなって美羽から顔を少し逸らしてそう言った。すると、
「悠斗くん、ありがとう、それなら明日からも何か困った事があったら遠慮なく悠斗くんの事を誘うね!!」
美羽は嬉しそうな満面の笑みを浮かべてそんな事を言ったので。
「……おう」
美羽から顔を逸らしたまま、悠斗はそう言った。そして、
「ところで美羽、明日は何時頃家に来るんだ?」
悠斗は美羽の方へ向き直ってそんな事を聞くと。
「えっ? 明日?」
ポカンとした表情を浮かべて美羽がそんな事を聞いて来たので。
「ああ、お前がお勧めのアニメを教えて欲しいって言ってたから、明日俺の部屋で色々調べてみるんだろ?」
少し呆れながら悠斗がそう言うと。
「……あっ、そうだった、ごめん悠斗くん、悠斗くんとのデートが楽しくてすっかり忘れてたよ」
美羽は照れ笑いを浮かべながらそう言ったので。
「……そうか、でも、明日は忘れずちゃんと家に来るんだぞ」
悠斗はそう言った。ただ、悠斗としては美羽がデートと言った事にツッコミを入れたかったのだが。
それを指摘すると、美羽が混乱して大変な事になりそうだったので、悠斗は敢えてその発言はスルーした。すると、
「うん、分かった、それじゃあ悠斗くん、また明日!!」
美羽は満面の笑みを浮かべて、手を振りながらそう言ったので。
「……ああ、また明日」
悠斗も軽く手を上げてそう挨拶を返すと、美羽は自宅のドアを開けてそのまま家の中へ入ったので。
「……俺も帰るか」
悠斗はそう呟くと、自転車を手で引きながら直ぐ隣にある自宅へと向かって歩き始めた。そして、
(それにしても、今日は美羽がいきなり手を握って来るなんて思いもしなかったな……もしかしてあいつが好きな相手って俺なのか?)
悠斗はふとそんな事を思ったが。
(……いや、さすがにそれは無いな、きっと本命の相手に試す前に俺で予行練習をしたかっただけだろう……明日も勘違いしない様に気を付けないとな)
最終的に鈍感な悠斗は美羽の本心には気が付かず、そう結論付けて自宅へと帰って行った。
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