思い出の日記
福子
୨୧┈ Prefatory ┈୨୧
「
「はい。先月、大学を卒業しました。」
作家になると決めた高校二年のあの日から、数年が過ぎた。
私は、大学時代に書き上げた物語をたずさえ、出版社を訪ね歩いていた。
ここで、十社目だ。
「この物語に登場する動物たちは、今まで私が出会った実際の動物たちがモデルなんです。」
「ふうん……。」
男性は、読み終えた原稿をパサリとデスクに置いた。
「うちで、出しましょう。」
目の前の男性が発した言葉が、ふわふわと宙をただよってお腹に落ちてこない。私は、電信柱のようにつったったまま、男性を見つめた。男性は、そんな私の顔をのぞきこんで、くしゃっと笑った。
「どうしました?」
その笑顔を見て、宙をただよっていた言葉が、ようやくお腹の中にすとんと落ちた。
「あ……、ありがとうございます!」
こうしてこの物語は、玄井緇子である私、『福子』のデビュー作品となった。
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