第53話【クリスタルレイク村へ出発】

「よーし、出発するぞー」


軍団の戦闘に立つドリドルが掛け声を掛けると馬車の一団が進み始めた。馬車の数は10車ほどの行列だ。ドリドルを始めとした古参のメンバーは自前の馬を持っているのか騎乗した馬で走り出す。


自前の馬を持っているのはギルドマスターのダリゴレルとドリドル。それに数人の冒険者たちで20騎程度である。その他の連中は今回ギルドが用意した荷馬車の荷台に乗っていた。


俺たちの乗る馬車にはジェシカ、アビゲイル、アンジュ、ミゼラ、それにラインハルトのパーティーが4人相席していた。その他に説明会で一緒になったヒーラーのフランダースが同席している。ちなみに御者はラブリリスが努めている。その馬車の横を軍馬に乗ったカルラが付いてきていた。ゴリラ顔でミゼラちゃんを見守っている。


そして、馬車が出発した直後に美人な盗賊風のお姉さんが俺に声を掛けてきた。


「こんにちわ。あんたが有名な天童ゴーレムマスターのアトラス君だね」


彼女の喋り方は気取っているわけでもないのに格好良い。まるで宝塚の男役のような喋り方だった。


「姉さんは?」


「トワイライト団のリーダーでアイシャってもんだ。よろしくたのむぜ」


刈り上げショートカットの美人さんはウィンクを飛ばしながら手を差し出した。その手を掴んで握手を交わす。


ああ、やっぱり彼女は女性である。手が綿雪のように柔らかい。


「俺の名前は知ってるようだが名乗らせてもらうぜ。ゴーレムマスターのアトラスだ。隣のがメイドゴーレムのアビゲイル。その上のが使い魔のアンジュだ」


俺に紹介されたアビゲイルは無表情だったが、代わりに頭の上のアンジュが妖精スマイルで愛想を振りまいた。


するとミゼラちゃんも己から自己紹介を始める。


「僕の名前はミゼラ・デズモンドと申します。アトラス先生の一番弟子です」


ミゼラちゃんがボーイッシュな笑みで言うと大人っぽいボーイッシュが驚きながら言った。


「へぇ〜、その若さで弟子を取るなんて、相当魔法が使えるのかい、アトラス君は?」


「違いますよ。僕はアトラス先生の彫刻の弟子です。魔法などは習っていません」


「あれれ。ゴーレムマスターとしての弟子じゃあないのかい?」


「はい、僕は彫刻の弟子ですから。そもそもアトラス先生からは彫刻以外に学ぶところはひとつもありませんよ、あはははは〜」


「なんだと、弟子の分際で先生を侮辱するか!」


すると俺の隣に座っていたジェシカが述べる。


「ミゼラちゃんもこの数日でアトラスの薄ペラさが理解できてきたようね、関心関心」


「お前も黙ってろ、ジェシカ。おっぱい揉むぞ!」


すると今度は待ちかねたように僧侶の美人が手を上げた。馬鹿明るいテンションで喋り出す。


「はいはいはーい。レイチェルも自己紹介がしたいでーす!」


「いいわよ、レイチェル。自己紹介してあげて」


アイシャが大人な笑みで言った。許可が取れたレイチェルがルンルン気分で自己紹介を始める。


「レイチェルの名前はレイチェルって言うのぉ。職業は僧侶でぇ〜す。好きなことはターンアンデッド。お祓いが大好きなのぉ〜♡」


うん、名前は自己紹介前から名乗っているから分かっていた。職業も身なりを見れば分かることだ。要するに、この娘はお馬鹿である。乗りから醸し出す空気までオーラ全開で馬鹿である。何故にこんな馬鹿に神様は美貌と巨乳を授けてしまうのだろう。


だが、その矛盾だらけの運命が堪らない。揉みたい。顔を谷間に埋めたい。パフパフしたい。お願いしたらやってくれるだろうか?


「レイチェルさん、ちょっとだけ乳を揉んでいいですか?」


「だめよぉ〜、アトラス君ったらエッチなんだから〜♡」


ゴンゴンゴンゴンっとメイスで頭を叩かれた。しかも連打で叩かれた。痛い。


美人巨乳僧侶のレイチェルが自己紹介を終えるとラインハルトとフランダースが自己紹介を始める。だが、野郎の自己紹介なんて詰まらないから飛ばすことにした。こんなモブの自己紹介なんて誰も聞きたくないし時間の無駄である。よって割愛。


そして、馬車に乗る全員の自己紹介が終わるころにはギランの町を出て目的地を目指す。目指すはクリスタルレイク側の村である。


村の名前はクリスタルレイク村。湖と同じ名前である。うむ、安直だな。


そして、2日の旅で馬車の一団はクリスタルレイク村に列をなして到着した。村は谷間に挟まれた地形で入口だけに石壁が築かれている。その石壁には櫓もあるから防御は万全なのだろう。


「結構と立派な門だな」


俺の独り言にアイシャさんが反応して語り出す。


「クリスタルレイク村はクリスタルレイク湖の資源を活かして潤っている村だからな。だから年に一度の祭りを開けるだけの予算があるんだよ」


その言葉にジェシカが続く。


「そうよね。潤って無ければ年に一度とはいえ、冒険者ギルドを貸し切って祭りイベントなんて開催できないわよね」


何気なく参加しているが、今回のイベントは相当なビッグイベントのようだ。確かにギルドメンバー総出のクエストだ。普通ではないだろうし、予算も相当掛かっているのだろう。まさに祭りである。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る