第34話【デズモンド公爵④】
そんなこんなでいろいろとあったが、その晩はデズモンド親子は俺の屋敷に泊まって行くことになった。
お付きの騎士たちも泊まるのだが、俺の屋敷には一度に十人も泊まれるだけの部屋もベッドも無いと告げると彼ら騎士団はロビーの雑魚寝で良いと言ってくる。
しかもデズモンド公爵が宿泊中の警護は彼らでやると言ってきたのだ。どうやら交代で睡眠を取り、常に屋敷の警護に励むらしい。流石は軍人だ。鍛え方も考え方も俺ら平民とは違うようである。
そして、まだ婚約の話は正式には組み交わしていないが、デズモンド公爵の勢いから俺とミゼラちゃんがフィアンセになるのは時間の問題だと思われる。
そして、俺は夕食の席でミゼラちゃんを観察していたが、これはこれで悪い話ではないのかも知れないと悩んでいた。
何せミゼラちゃんは可愛いい。それに大人に成れば美人に育つのは確定している容姿だ。
ボーイッシュで整った顔立ち。貧乳だがスレンダーなスタイル。食事を取る姿からテーブルマナーもなっている。性格も真面目だ。何より俺を敬愛している。これだけの条件が揃っていれば嫁に貰うほうとしては文句も付けられないだろう。
しかし……。
俺は食事を取りながら思い出していた。それはジェシカの豊満なおっぱいを……。
俺はおっぱいが好きだ。出来れば大きなおっぱいが好みなのだ。それなのにミゼラちゃんはぺったんこさんなのだ。それが最大の不満だったのだ。
大は小を兼ねる。これは乳とて変わらない男の願望である。
だが、ミゼラちゃんはまだ13歳の少女。まだまだムッチムチに成長する可能性が十分に残っている。その可能性を見極めずとして判断を下すのは時期少々ではないだろうか。断ってから数年後に巨乳に育ってしまったら後悔しか残らない。そんな失敗だけは犯したくないのだ。
そして、悩みに悩んだ俺はデズモンド公爵に提案した。
「デズモンド公爵。やはり婚約の話は少し待ってもらえませんか」
デズモンド公爵は皿の上の分厚い肉をフォークとナイフで刻みながら問う。
「何故かね、アトラス君?」
「そもそも公爵は、俺の作品が欲しいのですか、それとも俺本人が欲しいのですか?」
「私は欲ばりでね。両方だ」
「まさに欲張り。ですが、二兎追うものは一兎も得ずですよ」
「一理はあるが、くだらん例え話だな」
そこで俺は駄目元ながら提案した。
「それでは俺を眷属に加えなくとも天才をデズモンド家で確保できたのならば、問題は無いのですね」
「何を言いたいのかな、アトラス君?」
俺は顔の前で手と手を組み合わせると口元を隠しながら言った。怪しさを気取る。
「新しく天才を育てれば良いのでは、っと言ってるんですよ」
「天才を育てる?」
デズモンド公爵が肉を刻む手を休めた。俺の話に集中する。
「ミゼラちゃんを俺の弟子として迎えましょう」
「なに!?」
想定していなかった提案にデズモンド公爵が驚いていた。肉を刻んでいたフォークとナイフを置いた。それからワインを一口だけ飲む。
「ミゼラを弟子に取るとは本気かね?」
「それで俺自ら手取り足取りミゼラちゃんに彫刻作りを伝授して新たな天才に育て上げますとも。そうすれば俺とミゼラちゃんが結婚しなくとも天才とその作品が公爵閣下の手に入りますよ」
「それは名案だな!」
公爵もミゼラちゃんも歓喜していた。特にミゼラちゃんは自分が弟子になるなんて未来は想像もしていなかったから驚いている。
「だがしかし……」
デズモンド公爵がナプキンで口元を拭きながら言う。
「もしもミゼラに彫刻の才能が無かったらどうするのかね?」
確かにそうである。この提案はミゼラちゃんが彫刻の才能があって初めて成立する提案なのだ。もしもミゼラちゃんがクッソ不器用だったら話にならない。
「そ、その時は、俺も覚悟を決めて結婚を承諾しますとも……」
そう言うしかなかった。そう言わなければ殺されそうなぐらいデズモンド公爵が睨んでるんだもの……。
「では、ミゼラの才能が花開くかどうかを様子見しようではないか」
良し、食い付いた!
デズモンド公爵が片手でピースを築くと渋声で言った。
「期限は2年だ。ミゼラが15歳になるまでに才能が開花しなければ、おとなしく結婚してもらうぞ」
「分かりました、公爵閣下」
2年か……。2年もあればいろいろ仕込めるだろう。少なくとも一端の彫刻家には見せかけるぐらいは出来そうだ。あとはミゼラちゃんの才能と努力しだいだろう。まあ、少なくともヤル気はありそうだから、それだけが救いかな。
俺はミゼラちゃんに告げる。
「ミゼラちゃん、聞いてのとおりだ。君は今日からアトラス・タッカラの一番弟子だからね。それを承知してもらえるか?」
ミゼラちゃんは歓喜に興奮した表情で瞳を輝かせながら言う。
「よ、宜しくお願いします先生!」
「でも、君は良いのかい。それで?」
「僕も嬉しいです。直々にアトラス先生に手解きをいただけるなんて最高じゃあないですか。良いも悪いもありませんよ!」
良かった。どうやらミゼラちゃんも弟子入りに前向きだ。これで2年間は自由に女遊びが出来るぞ。
俺は見極めたいのだ。俺の嫁になる女性のバストサイズを。どうせ結婚するなら巨乳が一番である。
そして俺は同じ食卓で夕食を取るお袋の胸を一瞥した。
お袋の胸は大きい。まさに巨乳だ。服の上からでも分かるほどに巨乳である。それにビーチクも可愛らしい。何せ子供のころにおっぱいをしゃぶりながら何度も確認しているから間違いない。
俺の理想は、お袋のおっぱいなのかも知れない。故に出来れば、あれほどの乳を有した女性を嫁に取りたいのだ。だからミゼラちゃんでは役不足なのである。
あれほどの乳と言ったら──。
俺はとある人物の胸を思い浮かべていた。それはジェシカである。
あれは美しい。形も素晴らしい。小さなころに覗き見たがビーチクも可愛らしかった。
「ジェシカか……」
本格的に口説いてみるかな。何せ俺には期限が2年しか残されていない。
もしも2年後までにミゼラちゃんが彫刻の才能に花開かなかったとしても、俺が既に結婚していれば諦めてくれるかも知れないしね。ここは打てるだけの策は打っておくべきだろう。
そして、夕食が終わり食後のティータイムとなる。するとデズモンド公爵が親父に述べた。
「済まないがタッカラ夫妻、少し息子さんと二人で話したいのだが、人払いをお願いできないかね」
「二人っきりで、ですか?」
親父は少し不満気な表情を浮かべていた。
「ああ、今度はシネマス王国将軍としての職務だ。国家秘密になるから貴方がたは聴かないほうが賢明だろう」
あまりにも真剣な表情でデズモンド公爵が述べるものだから親父は気後れしてしまう。
「分かりました、公爵閣下……」
一礼する親父。頭を上げた親父がミゼラちゃんに述べる。
「それではミゼラ嬢、客間の寝室に案内しますのでこちらに」
「有難う御座います、タッカラ殿」
親父とお袋に連れられてミゼラちゃんが食堂を後にした。その後にメイドたちも食堂を出て行く。
こうして食堂には俺とデズモンド公爵だけが残った。俺の背後にアビゲイルだけが残っていたがデズモンド公爵は気にしていない様子である。
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