第25話【水色魔石】
ジンさんの店を出た俺たちは冒険者ギルドの酒場に向かって歩いていた。何か新しい仕事でもないかと掲示板を見に行くところだ。
掲示板を見るついでにジェシカのおっぱいもガン見しようと俺は考えていた。
本当はジェシカの後ろから、あの大きな乳をモミモミしたいのだが、そんなセクハラをジェシカが許してくれるわけがないと想像だけで俺は諦める。
そして、俺たちは冒険者ギルドに到着した。俺が入り口をくぐると酒を織っていた冒険者たちの視線が一度だけ俺に集まった。
まただ──。
だが、その視線も直ぐに散る。来店し来たのが俺だと知ると興味を無くしたようだった。再び各々でワイワイと酒を煽り始める。
「相変わらず酒臭い酒場だぜ……」
俺が二人用の小さなテーブル席に座るとアビゲイルが俺の背後に立つ。アビゲイルは必ず俺とは同席しない。メイドとしての立場を弁えているようだ。
しかし、チビッ子メイドのアンジュは別である。俺の頭から飛び降りるとテーブルの上に胡座をかいてドッシリと座った。
なんとも行儀が悪い妖精である。なんだか電車の中で地べたに座り込むギャルの姿を俺は思い出していた。
そんなアンジュが明るく言った。
「ねぇー、アトラス~。お酒飲むの~。あたいも飲みたいな~」
「なんだお前、酒が行ける口なのか?」
「少しならね~」
ならばと俺はウェイトレスさんを呼んでエールをふたつ注文した。それと枝豆の摘まみも頼む。
「はぁ~い、お待たせしました~」
しばらくするとウェイトレスのララーさんが注文した品を運んできた。その気に俺はララーさんの巨乳をガン見する。
やはりデカイ!
間違いなくジェシカよりも大きいだろう。こんなエプロンの端から溢れ出そうなぐらいの巨乳を好きなだけ揉んでみたいな。これは健康な男の子が抱く当然の夢である。
そこに乳があるから揉んでみたい。そこに巨乳があるなら揉みしだきたい。これは男の子ならば当然の願望だ。だから罪ではない。
「ぷっはぁ~~~。お酒ウマウマ~。ゲップ~~」
矮躯な体でエールのジョッキを煽るアンジュがおやじ臭いゲップを吐く。汚い。
「おい、アンジュ。お前だって乙女なんだからゲップなんてするなよ。男の子たちの夢が壊れてしまうだろ」
「なんであたいが野郎どもの夢を気にしないといけないのさ?」
「男の子って奴はな、妖精に夢を抱いているんだよ」
「どんな夢なのさ?」
「普段は無邪気に小五月蝿く主人公の周りを飛び交っているのに、その実は主人公のことをスキスキで夜な夜なひとりエッチに励んでいる卑猥な姿とかに憧れているんだぞ。そして、もしも巨大化出来るポーションを見つけたらプリティーな妖精に飲ませてアダルトなハッピーエンドをベッドの中で迎えたいんだ」
「人間の雄って、そんなことを考えているんだぁ」
「まあ、健全な男の子なら当然の妄想だわな」
そこまで言うと俺は後ろから頭を軽く叩かれた。俺が振り返るとジェシカがエプロン姿で立っている。
「あれ、なんだジェシカ、その格好は?」
「見ての通りエプロン姿よ」
「そうじゃない。なんでエプロンなんてしているんだ?」
「今日は酒場のウェイトレス当番だからよ。ギルドの受付とウェイトレスを交代で掛け持ちしているのよ」
「へぇ~、そうだったのか」
「はい、注文していた枝豆よ」
そう述べるとジェシカが皿に盛られた枝豆をテーブルに置いた。するとアンジュが枝豆に手を付ける。
「わぁ~~い、枝豆だぁ~。しかも新鮮だぁ~」
「あら、なに、この妖精?」
ジェシカはアンジュを観てキョトンとしていた。珍しげにアンジュを観ている。
「あれ、昨日紹介しなかったっけ」
「されてないわ」
俺は枝豆を咥え込むアンジュの頭を突っつきながらジェシカに妖精の使い魔を紹介する。
「こいつは前回の冒険で拾ったウッドフェアリーでな。本人が望むから使い魔にしたんだ。アンジュって言うから宜しく頼むぜ、ジェシカ」
「あんた、森の妖精を使い魔にしたの。珍しいわね。でも、髪は緑か。もしも水色ならぱ、一儲け出来たのにね」
「水色魔石のことか?」
「そう、水色の髪をした妖精はエリクサーの素材になる水色魔石を産むって話らしいからね。森で水色妖精を捕まえられたらラッキーよ」
「ふん~~。まあ、こいつは緑の髪だから関係ないけれどさ」
「そうね」
そう言うとジェシカは手を振って俺のテーブルから離れていった。ウェイトレスの仕事に戻る。
俺は酒を煽るアンジュに言った。
「お前、やっぱり水色魔石を産めるんだ」
「そうよ。でもあたいは産んだことが無いけれどね~。ぷっはぁ~」
「そうかそうか、産むのかぁ~……」
俺は想像してしまう。アンジュの出産シーンを──。
アンジュが水色魔石を産む瞬間は、どんな顔をするのだろうか?
やっぱり苦しそうな顔をするのかな?
汗だくになって、ウーウーと呻くのかな?
それに、どこから水色魔石を産み落とすのだろうか?
やっぱりあそこからかな……。
むむむむむむっ!
想像しただけでドキドキしてくる。妖精の出産シーン。それに興味がわいてきたぜ。
絶対にアンジュが水色魔石を産み落とすときは見逃さないぞ。
そう誓うアトラスであった。
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