第14話【追加ミッション】

全裸のおやじは岩に腰掛けながら蟹股で堂々と振る舞っていた。その股間にはコーヒーカップが被せられている。その向かえに俺とアビゲイルは立っていた。


全裸おやじはコーヒーカップひとつの成りを恥じていない。それどころか清々しく振る舞っていた。


どうやらこいつも変態の類いのようだ。本当にこの世界には様々な変態が多く蔓延っているようである。野山の道を歩いているだけで変態に行き当たるのだ、その数は多いのだろう。


そして、全裸おやじの話だと、彼は田舎で蚕から糸を摘むいで、その糸で洋服などを作っている職人らしいのだ。


そして、今回作った新作の品物をギランタウンの洋服店に下ろしに行くところでゴブリンたちに襲われてしまったらしい。それで荷物はすべて奪われたが命だけは助かったらしいのだ。


ゴブリンに襲われて略奪だけで済むなんて珍しいことだろう。普通ではなかなか無いことだ。普通ゴブリンに襲われたら命を弄ばされるように虐殺去れるのが常識である。だからこの全裸おやじは運がとても良いのだろう。


その運の良い全裸おやじが言う。


「あんたら、ゴブリン退治に行くのかい?」


「ああ、そうだ」


「ならば、頼みたいことがあるんだがね」


「んん。話だけは聞いてやろう」


どうやらこの全裸おやじと俺が討伐しに行くゴブリンたちは同一の可能性が高いようだ。そこで全裸おやじに提案される。


「どうだろうか、少年。もしもゴブリンたちから奪われた荷物を、ゴブリン討伐のついでに取り返してもらえないだろうか?」


「まあ、もしも本当にゴブリンがあんたの荷物を奪った連中と一緒だったらかまわないぜ」


討伐のついでに略奪品の回収ならば問題ないだろう。そのぐらいならば受けても手間でもない。


「それで、あんたが略奪された品物は洋服ばかりなのか?」


「ああ、女性用の高価な下着ばかりだ」


双眸を見開く俺。


「なに、女性用の下着ばかりだと!!」


俺の煩悩まみれの脳裏に彩り取りのおパンティーやらおブラ様が浮かび上がる。


その光景はシルクやレースの下着が蝶々のように舞う景色であった。まさに桃源郷のピンク色の青空である。


んん、ピンク色なのに青空ってなんやねん?


まあ、いいか……。


そんな煩悩に浸る俺を余所に全裸おやじが交渉を進めていた。


「一着で金貨数枚の価格で売れる下着もあったから、無事に回収できたら下ろし代の三割を支払おう。その辺が妥当な交渉だと思うぞ」


俺は鼻息を荒くして言う。


「いやいや、代金の問題じゃあないぞ!」


「えっ?」


「もしかして、おっさんが作ってる下着ってこんな感じの品物か?」


俺は言いながらアビゲイルのスカートを捲り上げて彼女の下着を晒した。しかしアビゲイルはスカートを捲られても抵抗どころか嫌な顔すら見せない。無表情のままでいた。


すると全裸おやじが岩から腰を上げるとアビゲイルに近付き股間に顔を近付ける。そして、匂いが嗅げる距離でアビゲイルが履いている下着を確認していた。


それから言う。


「あ~、これ、私の作品だわ。これギランタウンの高級女性用洋服店で買っただろう。ギランタウンには、彼処しか下ろしていないから間違いないさ」


「あんたが、この芸術的な下着を作っていた職人なのか!」


「ああ、そうだよ。意外だったかね」


全裸おやじはドヤ顔で言っていた。


確かに意外である。何せアビゲイルが着衣している下着は気品と色気が混合している素晴らしい作品なのだ。


俺だって裁縫の心得は持っているからこの下着を作る難易度は理解できていた。これだけの作品を製作できる職人は少ないだろう。もう芸術品だ。


それをこんな悪代官のような成りをした全裸おやじが作っているとなれば意外中の意外である。世界七不思議に取り上げても差し支えがないだろうレベルの不思議である。


「なるほど、それならばもっと丁重に扱わなければならないか。何せ俺は職人には寛大だからな」


そう言うと俺は異次元宝物庫から財布を取り出して、中から金貨を数枚ほど全裸おやじに手渡した。


「これはギランタウンまでの馬車代と宿代だ。これでしばらくはやって行けるだろうからギランタウンで俺の帰りを待っててもらえないか」


「これは助かりますぞ。ありがたくお借りします」


全裸おやじは俺から金貨を受け取ると更にねだる。


「済まんが、やはり服を分けてもらえないかな。せめてパンツだけでも」


「それは無理だ」


俺はキッパリと断った。流石に衣類は分けてやれない。着替えが余っているが絶対に嫌である。何故ならば、そのほうが愉快だからである。


するとアビゲイルが言う。


『私が着替えに持っているマイクロビキニパンツなら御座いますが、こちらをお召しになりますか?』


「それ、私が作ったマイクロビキニパンツだよね……」


『今までの話を推測する限り、その可能性が高いでしょう』


「それって、ヒモパンツで、股間部分を隠せる三角生地が4センチの品物だよね?」


『流石は作成者本人です。そのマイクロビキニパンツです。お履きになりますか?』


「い、いや……。コーヒーカップでかまいませんから、お構い無く。4センチだとはみ出ちゃうからさ……」


『承知致しました』


アビゲイルは礼儀正しく頭を下げた。


どうやらマイクロビキニパンツとコーヒーカップとで天秤に掛けた結果、コーヒーカップに軍配が上がったらしい。


それから俺は全裸おやじと別れてゴブリンの洞窟を目指す。


今回は意外な展開からミッションの内容が少し追加になったが構わんだろう。結論的にはゴブリンを壊滅させる成功条件には変わりがないのだから。


そして、俺たちは森の中に入って行った。ゴブリンの洞窟を目指す。




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