第10話 少年と少女は出逢った
少女の所に行くと既に彼女はベッドから上半身を起こしていた。ずっと寝ていたせいか目が虚ろでぼうっとしている。
僕たちが部屋に入ってきた事に気が付くと焦点が合っていない目でこっちを見る。
寝ていた時も思ったがもの凄く綺麗な女性だ。プラチナブロンドの髪は光を反射して輝き、大きい目は少し垂れ目で優しい印象を受ける。
そんな半分寝ているような状態で僕たちを見つめること十数秒。突然スイッチが入ったように彼女の目が見開かれる。
「あ、あれ!? ここは……? それにあなた方は……? 私は……!! そうだ、確か輸送機が攻撃を受けて……私は<タケミカヅチ>に……」
さっきまでのミステリアスな雰囲気は一瞬で吹き飛んで突然忙しなくわたわたし始める謎の少女。
慌ててベッドから降りようとすると、まだ身体の動きがままならないのか体勢を崩してしまう。
「きゃあああ!!」
「危ない!」
スライディングして床への落下を防ぐことに成功した。かくいう自分は受け止めた時に後頭部を軽く床にぶつけてしまう。
「あいてて……大丈夫ですか?」
「は、はい、大丈夫です。ありがとうございます、助けていただいて……」
優しく透き通るような声でお礼を言う少女。それに加えて何だか甘い香りがする。そう言えば同年代の女性とこんな風に密着したのは初めてだ。
手に触れる柔らかい感触に驚いてしまう。掌に収まりきらない温かいマシュマロみたいな感触だ。
「……ん? これって……」
「んんっ……!」
思わずマシュマロを軽く握ってみると真上で倒れている少女から甘い声が漏れる。
まさか……これって……もしかして……。
恐る恐る視線をマシュマロを触っている自分の手に向ける。するとそいつは少女のボリュームのある胸を鷲掴みにしていた。
その事実に気が付くと少女の方も同時にそれに気が付いたらしく、みるみる顔が赤くなっていく。
「す、す、す、す、す、すみませんでしたぁぁぁぁぁぁぁ!!」
彼女を起こして素早くそこから抜け出すと土下座をして額を床に擦りつけた。
「女性の身体に無闇に触れるなんて、本当にごめんなさい。――殺してください!!」
「えええええっ!? そこまで!? あの、その、顔を上げてください。私別に怒っていないですから」
「どうして!? いきなりおっぱい触られたのに!? まさか、おっぱい触られても気にしない派なんですか!?」
てっきり怒りで駆逐されるかと思ったのにまさかの気にしていない発言に驚いてしまう。こういう経験が豊富な人なのだろうか?
よくよく考えれば綺麗な人だし、男性が近づいてこないはずがない。きっと僕のような陰キャと違って色々と経験済みのリア充な人なのだろう。
「おっぱいおっぱい言わないでください。恥ずかしいじゃないですか! それに何なんですかその派閥、胸を触られて気にしない女の人なんていませんよ! ……たぶん」
「だって……経験豊富なリア充の女性はそれぐらいじゃ動じないって爺ちゃんが言ってたから……そうだよね、爺ちゃん?」
「ごめん、あれ嘘」
「ええ~!? うそ……? ええーーーーー!!」
「すまんのぅ、カナタよ。それはわしが昔経験した場所での話じゃ。ちょっとお触りしても許される。むしろそういう事をする為の場所。一時間で一万クレジットぽっきり。また行きたいのぉ」
「「それってそういうお店の話でしょう!!」」
爺ちゃんのスケベっぷりを忘れていた。思わず名前も知らない少女と同時にツッコミを入れてしまった。
結局この件はこっちに悪意があった訳ではなく、彼女を助けようとした際のアクシデントだったので、それで手打ちとなった。
どうやらかなり心の広い女性みたいだ。そして話題は彼女の事になった。
「助けていただいてありがとうございます。私は【フィオナ・トワイライト】と言います。あなた方は……?」
「僕はカナタ・クラウディスです。サルベージャーをやっています」
「同じくサルベージャーのノーマン・グラスじゃ。カナタはわしの弟子みたいなものじゃな」
その時フィオナと名乗った少女が目を大きく見開き驚いたような顔をした。
「ノーマンさんに……カナタさん……ですか?」
「そうですけど、どうかしました?」
訊ねるとフィオナさんはハッとなり笑顔を取り繕う。
「すみません、私の知り合いに似ていたものですから」
気のせいだろうか。何だか彼女から熱い視線を感じる。僕が自意識過剰になっているだけだろうか?
そんな事を考えていると、フィオナさんは真面目な顔になって話を切り出した。
「あの、私が乗っていた機体はどうなりましたか? 状態を見たいんですけど……」
これはヤバい事になったぞ……。
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