訳の分からないショート

Hayoti

色彩が表す もの

色が好きだ。


色は自分の感情や、

その人のイメージを表してくれる。


ドロドロな汚物のようなときもあれば、

爽やかな空気を吸わせてくれるようなときもある。


自分は少しでも色について知りたいから、

色彩についての教科書を買った。


机上で一枚の厚いそれを開いて、

真っ赤に広がる片面と対面。


真ん中を指でなぞった。


するとなぞり切らないまま、

私の親指は消えていった。


背中を冷気が襲う。


指を咄嗟に外す。


先端は付いている…


親指を見つめ、

もう一度”赤”をなぞる。


指はていった。


第一関節。


思い切って第二関節まで入れてみる。


中は何も感じ取れなかった。


取れなさすぎて

無に触れられた。


他の指も

一本ずつ。


手首まで”赤”に吸収させる。


どっぷり、

は似合わないな。


すんなり、

その空間は受け入れてくれた。


「ご飯できたよー。」


部屋の外から、

親の声が聞こえてくる。


「はーい。」


本を閉じると同時に、

私は手を横に外しながら、

本を閉じた。


ブゥィチ゛ブチブィチ!!


──────ッッ゛!!ァ゛!!!


喉がカッ開いた。


声帯が筋肉で塞がれる。


手首からの急な激痛。


あまりの痛さに、

一瞬、

意識が飛ぶ。




閉じられた教科書の上。


紅の───いや、真紅の結晶が


華を描いて、


年月の経った手へ行き渡る。

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