第136話 ジャック兄弟、ナミとの別れ
「その変わった奴らが、ナミ様を負かせたんですか。
シン様は別行動されていたんでしょうか」
小柄な方は口をきかない。
それにしても、変わった奴らとか言いやがって、俺達はわざわざ、お前らを助けに来てやったんだぞ!
『シンも一緒だったが、分断されてな、シンもこやつらの実力を認め、和平協定を結んだのじゃ。
あたしは、中で少し休む。
身体がカチカチに
おまえたちは外で勝手に話をしていなさい』
そう言って、ナミは小山の口の中に向かった。
小さい方が、ナミに頭を下げた。
大きい方が返事する頃には、ナミはもう中に消えていた。
「ああ、そうでしたか・・・
あ、あんたらのその格好、ここらじゃ見掛けないが、どこから来たんだ」
「俺達は、マイクたちと一緒に、冒険に来たんだよ、おまえらがジャック兄弟か」
さっきからしゃべっているヤツの後ろで、少し小柄なヤツが俺達を観察している。
こいつはまだ一言もしゃべっていない。
その男が、突然目を見開いて、俺に駆け寄ってきた。
「おい、おまえ、マイクを知ってるのか。
俺達は、六日前にこの森でマイクとはぐれちまって、ナミ様、シン様に助けられたんだ」
なんだ、口がきけないのかと思ったら、ちゃんと喋れるじゃないか。
「良かったじゃないか、助けてもらって。
もうお前たちは死んだことになっているが、シンさんからお前らの話を聞いたんでな。
交渉の末、お前らを連れ帰ることで話がついてるんだぜ」
お前呼ばわりされたのが少しムカついて、立場をはっきりさせようと思って、そう説明した。
小さい方の顔がみるみる内に歪んできた。
うっすらと涙が浮かんでいる。
「おお、帰れるのか。
夢みたいだな」
まだこいつから感謝の言葉を聞いてないので、俺は少し突き放した言い方をする。
「そんなに帰りたかったのか、シン様たちとうまくやってたんじゃないのか」
「兄貴は、シン様たちと話ができるらしいが、俺はシン様、ナミ様の言葉が分からないんだ。
だから、できれば早く帰りたい」
なるほど、兄とは違って、弟の方はとっくに里心がついていたらしい。
「兄さんの方はどうなんだ」
俺は少し大きい方をちらっと見やってから、そう訊いた。
「兄貴は、ここの居心地を気に入ってるようだが、そろそろ帰りたいんじゃないかな」
俺と弟の話を聞いていた、兄の方が弟の言葉に呼応した。
「おうよ、俺も戻れるなら早く帰りたいさ」
「じゃあ帰ろうぜ、兄貴」
二人の兄弟は、
「じゃあ荷物があるなら、取ってこいよ」
俺はそう呼び掛けた。
「お前、若いくせに生意気な口をきくんだな、そんなんでマイクに怒られないのかよ」
兄の方が、そんなことを言った。
俺達を、マイクがリーダーを張るパーティの一員だと思ってるらしい。
すかさず、腰に手を当て、兄弟に指を突きつけた沙織が言い放った。
「あんたらこそ、生意気よ。
このパーティでは、コウタがリーダーやってるのよ」
「え、あんたらが」
ジャック弟がそう言った。
ジャック兄は、何かを思い出したらしい。
「そういや、ナミ様がさっき負けたとか言ってたが、この森で一番の強者におまえらが勝ったのか」
「まあそういうことになるかな。
ナミさんが油断しなけりゃ、どうなっていたか分からんが」
ようやく、このバカどもは、状況を理解し始めたようだ。
「それでも凄すぎるな、そんなに若くしてSランクハンターなのか」
Aクラスハンターのマイクを引き連れてるとしたら、そういう解釈になるのも致し方ないのだろうが、俺はハッタリは使うがウソは言わない。
って、神獣様とか方便のウソは言ってるかw
とにかくランクについては正直に言った。
「いや、俺達3人はCクラスだが、シンさんからは、Sクラスと認定されたぜ」
この一言に、ジャック兄弟の目の色が変わり、何やら尊敬の眼差しをして来る。
おい、そんな目で見るな、こそばゆいぜ。
「こりゃ頼もしい、今からあんたをコウタさんと呼ばせてもらうぜ」と、兄ジャック。
弟の方も頷いている。
「まあ良いけど、そっちがしのぶさんで、こちらが最強の沙織さんだ」
俺をさん付けするなら、他の二人にもさん付けしてもらいたくて、そう返した。
「「しのぶさん、よろしくお願いします」」
二人声を揃えて、しのぶに頭を下げた。
次いで、沙織に向き直り、さらに二人は深く頭を下げる。
「「沙織姉さん、よろしくお願いします」」
そう言われた沙織は一歩
自分からは強気に出るが、あまり
「ええと、私、あんたらより年下だけど」
兄弟はもう一度深く頭を下げた。
「この世界、年齢より実力っすよ。
じゃあ俺達、中で休んでるナミさんに別れの挨拶してきますんで。
荷物も取ってきますんで、少し待ってておくんなさい」
兄弟は小走りに、小山の口に向かった。
俺はしのぶを仲介して、ナミに告げる。
『では、ナミさん、二人を連れていきます。
シンさんには、ナミさんもお連れすると申し上げたのですが、どうしますか』
『はよ、連れて行きなされ。
シンには今テレパシーで、疲れたからあたしは行かないと伝えたわ』
どうやら、ナミのテレパシーは、しのぶよりも遠くの相手に届くらしい。
バトルの時に、もししのぶのような高出力テレパシーを使われていたら、全員が暫く戦闘不能に陥ってた可能性がある。
二度目は勝てるとは思えない、改めてそう思った。
ともあれ、俺達の残りの連中の所まで、負けた身で顔を出すのは、ナミさんのプライドが許さないのだろうと、俺は勝手に解釈した。
『さようならナミさん』
しのぶは、丁寧にナミに挨拶した。
『さよなら、しのぶ、コウタ、沙織』
さっきまでとは打って変わって、柔らかな口調で、ナミの挨拶が返って来た。
テレパシーを受けたしのぶが、ニュアンスまで伝えてくれているだけなのだが。
『元気でね、ナミ』
沙織が友達に対するような挨拶をした。
『おまえもな』
機嫌を悪くした訳では無いだろうが、ナミは沙織にぞんざいな返事をした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます