第40話 テスト初日と女子耐性レベルアップ
明くる月曜日。
始業時間はいつもと同じだが、試験開始の午前10時までは、各自の自習時間となっている。
自習してると、沙織が俺の机までやって来た。
「どう? 調子は。
今回、私すごい自信があるんだけど。
私と総合得点で勝負してみない」
「いや、やめとくよ。
俺も自信はあるけど、目立ちすぎるのは嫌なんだよね」
「コウタ、お一人様卒業のチャンスなのよ。
一緒に頑張ろうよ」
普段仲が悪いと思われてる俺たちを、クラスの数人が、一体どうなってるんだと言う目で見ている。
他の奴らは、国語対策に余念がない。
今週からウチの高校で行われる中間テストは、毎日2教科ずつで、例外的に3教科になる日もある。
午前中に主要6教科から、それぞれ1教科、午後からそれ以外の教科を1教科か、2教科という構成だが、
最終日の金曜日は、主要6教科の内、地理歴史を午前に、残った主要教科の公民を午後で実施することになる。
これは前回と同じだし、一年次と比べても同じだから、おそらく3年生も同じやり方だろう。
それとも受験生は違うのかな、まあ、今はそんなことはどっちでも良いさ。
初日午前の国語が終わった。
早速、沙織が俺のところへやって来る。
「どうだった、コウタ、どうだった?
私、これまでで最高の出来だったと思う。
試験で緊張しなかったの初めてだし」
小声だったし、アクションも抑えていたが、その喜びっぷりは周囲にすぐに伝わった。
沙織の女子ともだちが、一人一人集まってきて、俺の回りは女子だらけになった。
ちょっと、やめてくれ女子耐性がどんどん削られるぜ、、、
「さおりん、国語のテストできたんだ。いいな」
「あたしなんてさんざんだよ。明日の英語で取り返さなきゃ」
「ねえねえ、午後のテスト終わったら、カラオケ行かない」
「何言ってるのよ、テストはまだ始まったばかりなんだよ。あんたはいつも脳天気なんだから」
「へへへ、すんまへぇん」
こんな感じで、かしましいことこの上なしだ。
俺が席を立ち、出ていく構えを見せると、沙織が袖を引っ張って言う。
「コウタ、逃げないで。
みんなで一緒に食堂行こうよ」
「ええ、俺は良いよ。
女子だけで行けば良いだろ。俺はどうせお一人様だし」
意外なことに、沙織の回りに集まった女子たちも、口々に言う。
「良いじゃない、仲村君、一緒に食べようよ。
お二人の急接近についても訊きたいし」
この誰かの発言で、みんなも同じようなことを言って、俺を離してくれそうにないので、 俺はしぶしぶ、女子たちに囲まれながら食堂に向かった。
他の男子たちは、俺たちの様子に、何事が起きたのかと面食らっているようだ。
昼食は、俺と沙織の仲についての話が中心で、俺は黙って食事に集中していたのだが、沙織は俺に断りもなく、二人が幼馴染だったことを暴露した。
そうなると、質問は当然ながら俺にも集中しだす。
俺は一言、二言しか返さないが、それに対していちいち大げさなリアクションで、女子たちはテスト期間中という緊張を忘れてはしゃぎまわっていた。
5日間のテスト期間中、似たような状況が続き、俺はいつの間にか、女子耐性レベルを1から2へ上げた。
沙織が居ない時でも、女子から話題を振られ、だんだんおもしろい返しができるようになった。
何事も経験だと思い知らされた。
テスト最終日の金曜日には、テストが終わった後の打ち上げと称するカラオケに、男子では俺だけが誘われた。
沙織の友人たちは、まだ、沙織と俺の話題を独占しておきたかったようだ。
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