第30話 しのぶからの2回目のライン

 帰宅した後、母さんからも父さんからも、どっちが俺の彼女かと訊かれたが、

クラスで同じ班だから、中間テストの勉強会を開いただけで、他の班の人たちもそうしてると答えると、父さんは露骨にがっかりした感じだったw


 俺が自分の部屋に引き上げる時、聞こえてきた二人の会話によると、

 背の高い女子の方は明るいし、スタイルも良いし、笑顔が可愛いし、あんな子を彼女にできたら、幸太を見直してやる所だったんだがという父に対し、

小さい子の方が、家庭的で利発そうだし、顔もスタイルもそれほど遜色そんしょくないんじゃないのと、母が評していた。

「それにしても、二人とも名字が同じ、宮坂って言ってたわね。

 まるで似てないから、たまたま同じ姓ってことかしらね」

 今更の疑問を口にした母の声を聞いた時、俺は思わず吹き出しそうになった。

 どうやら、宮坂姉妹の二人とも、俺と同級生と思い込んでいるようだ。

 もっともそう仕向けたのは俺だけど。

 もし、明日もあの二人が一緒に来たら、小さい方が中2だとばれてしまいそうだ。

 そうなったら、俺との関係をどう説明したら良いか、今は思いつかない。



 俺が部屋に入ると、俺のiPadがアニメを流していた。音は出てないようだが、一体誰の仕業しわざだ。

 大方見当はついていたが、ディスプレイの丁度見やすい位置に、天井から長い糸を垂らしたクモミンが見つかった。


「何してるんだクモミン」


「おかえり、コウタくん。

 今、Huluでアニメ見てるとこ。

音声はブルートゥースで聞いているから、コウタくんの家族には、音漏れで見つかることは無いから安心して」

 こいつ器用だな、クモミンはアニメを写しているiPadから自分の音声を出力している。


「そういうことを訊いているんじゃないけどね。

 秋アニメをリスト登録したのって、やっぱりおまえが見たいのをピックアップしたんだな。

 それで今季で一番おもしろいのは何だった」


「そうね、1話と2話を観た限りでは、あたしのおすすめは『自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨さまよう』かな」

(注: 現実では、このアニメは、2023年夏アニメで放映中です)


 なんだか、突拍子とっぴょうしもない転生ものアニメだな。

 タイトルだけじゃ何だかとらえどころがないが、今日は疲れたし、明日は本当の勉強会があるし、今夜は勉強せずに俺もアニメでも見るか。


「じゃあ、俺もアニメを見ようかな。

 クモミンがタブレット使ってるなら、俺はPCの大画面で見るか。

 なんだっけ、自販機に転生した俺だったか、クモミン」


「そうそれ」


 クモミンは結構適当な返事をする。

 絶対俺が言ったタイトル名は違ってるだろw

 でも、PCを起動して、WebからU-NEXTを探すと、その中のマイリストにずらっと秋アニメが並んでいた。HuluとU-NEXTもアニメのタイトルは結構かぶっているようだ。

 クモミンのお勧めはすぐ見つかったので、早速第1話と第2話を見た。


 おもしれえ! 疲れた俺の脳は、さっきの和三盆糖わさんぼんとう干菓子ひがしと、このアニメですっかりリフレッシュされた。

 さっきもリフレッシュされたと言ったけどw さらにリフレッシュということだw


 夕食までにはまだ時間があるので、もう一つ何か見ようかと見繕みつくろっていると、俺のスマホが音を鳴らした。


『ライン〰♪』


 おお、しのぶちゃんからだ。

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