ハエと美少女姉妹

第17話 インストしてないアイコン

　で、結局、パーチンプロジェクトは、週末に行う。

　そこまでは決まったが、土日のどちらかになるかも、どこに集まるかも、まだ知らされてない。

　こう一々驚かされていたら、若い高校生の俺でも身が持たない。

　なるようになるさ。

　これが今の心境だ。

　昨日は大変な夕方だったが、今日、金曜日はフライとの会合はない。

　まあ気配を消すバリア、とかなんとか、初日の水曜日に言ってたから、

ひょっとしたら、フライが今も室内に居る可能性は排除できないが。

　フライは、こんなことも言っていた。

　午後８時からは、宮坂家で１時間の会合を持つ。

　その他に、別に一人、男性を推進委員にリクルート中だとか。

　宮坂の妹はたった１時間、俺は３時間拘束。

　不公平極まりないが、これも俺が上級で、宮坂しのぶが、平の、つまり下級推進委員だというのが理由らしい。

　ここがフライの駐留基地というのは、そのままの意味だったんだな。

　ここから、宮坂家などへ出張しているのだから。

　あれでフライも中々忙しいようだ。

　今日は俺一人、とは行かないが、クモミンは中々かわゆい奴で、ペットとたわむれる時間は、そう悪くない。

　名前を付けて、少しフレンドライクに話をしたら、その後は満足したのか、おとなしく気配を消している。

　クモミンは、実際に小さな虫などを、食事にしていると言っていた。

　アンドロイドだと思っていたが、どうやら、虫の生体に超小型AIが寄生だか、共生だかしているらしい。

　宿主のハエトリグモは、クモミンのおかげで、病気知らずで、長寿命が約束されていると言うから、ウインウインの共生なんだろう。

　蚊とか、小さなハエは結構おいしい。

　獲物を捉えるまでは、ゲームみたいで愉快だし、体にはいい運動になる。

　そんな気持ち悪いことを言っていた。

　その様子を撮影して公開すれば、その内俺も、人気ユーチューバーになれるかもしれんｗ

　ケージの中で飼うのではなくて、放し飼いだから、けっこうバズる可能性もありそうだｗ

　ちなみに、フライの方はアンドロイドらしい。

　さて、俺は今、好きなアプリをいくつかインストールした、最新のiPadを楽しんでいる所だ。

　火曜日までの平穏を取り戻して、とてもいい気分だ。

　次のゲームを遊ぼうと、アイコンを探してみると、インストした覚えのない、アイコンが二つほど見つかった。

　HuluとU-NEXT。

　何だこれ、うちじゃ契約してない、見放題動画配信サービスのアプリだ。

　なんか、これ怪しいな。

「クモミン、いるか」

　少しすると、

『ヒュンヒュンヒュンヒュン』

　あの音がして、iPadの画面がホワイトアウトして、次いでハエトリグモが大写しになった。

「お呼びですか、ご主人さま」

　かわいらしい女児の声で、そう挨拶（あいさつ）されるのは、悪くないが、画面の大きなクモになれるのには数秒を要する。

　本体は小さいんだけどねｗ

　その本体は、いつの間にか、iPadのトップに鎮座（ちんざ）していた。

「おまえか、勝手に動画配信サービスのアプリをインストしたのは」

「あれ、もうバレちゃいましたか。

　新作の秋アニメも、マイリストにリストアップしておきましたから、ご主人さまも楽しんで下さいね」

　クモミンは、前足でお手上げ、バンザイみたいなポーズを作ってから、次いでガッツポーズを見せた。

　俺がちょっと席を外した時間に、そんな早業を繰り出したのか、さすがだな、、、

「入れるのは良いけど、毎月課金されるんじゃないか」

　俺も、プライムビデオで配信されてない、アニメとか見たいけど、金の問題はクリアされていない。

「それは大丈夫ですよ。

　クレカを作って、口座振替の口座もこちら持ちですよ」

　親の名義で勝手に作られたりしたら、これは大問題だぜ。

　俺は少し焦ってきた。

「クレカって誰の名義だよ」

　俺は恐る恐る訊いた。

「仲村幸太名義だよ」

　可愛い声で、クモミンは恐ろしいことを言う。

「俺のかい！

　まだ未成年の俺にクレカは作れない筈だし、銀行口座なんて持ってないぞ」

　親のクレカの家族名義ならまだしも、主契約など結べる筈がない。

「まあ、なんとかなりましたから」

　クモミンの答えは屈託（くったく）がない。

　こいつら、本当になんでもありだな。

　そんなことを思っていると、俺のスマホで、

『ライン〰♪』

　と、音がした。

　母さんかなと思ってラインを開くと、なにやら、友だち申請しているヤツがいる。

　俺は、家族以外とはラインをしていないから、こんなものは無視するに限る。