第10話 俺を巻き込むなよ、国際紛争に

 おいおい唐突とうとつに、やけに難しい政治的問題だぜ、それは。

 少し間違えば、第4次世界大戦につながりかねない。

 めちゃくちゃきわどいテーマをぶっこんできたな。

 大丈夫か、これ、、、


 俺は危険を察知さっちして、黙っている。


「コウタは、ラシアのエクライナ侵攻しんこうについては知らないのかい」


「知らないわけないだろ、そんなの小学生でも知ってるぜ」


 無知をあざ笑う響きを帯びた、子どもの声に、思わず言い返した。


 しかしだ、ここは知らないと答える方が安全だったか、とすぐに後悔する。


「で、コウタはどう思う」


 返答にしくじった気がするが、ここからは俺も慎重しんちょうに行かないとな。


 なにせ、俺の返し次第しだいで、異星人が大戦への引き金を引くかも知れないんだから、地球人類のために、くれぐれも慎重に、、、


「それぞれの内部事情を詳しく知らない者が、軽々しく戦争や国際紛争こくさいふんそうについて語ることは控えたいね」


「何だよ、コウタ、どこかの官僚並みにつまらない答えだね」


 俺は返事ができない。


「どうした、どうした、そんなんじゃ、こっちの意向だけで、試しにパーチン大統領を暗殺しちゃおうかな」


 フライは俺を挑発ちょうはつする。

(こんなヤツだっけ? ちょとキャラ変してんじゃねえか)


 このままだんまりを決め込んでも、事態は好転しないのか。

 仕方なく、俺は口を開く。


「僕がもし、ラシアが一方的に悪いとか、パーチンが独裁者だから起きた必然の結果だ。

 とかなんとか、そんな意見を言ったことで、フライたちが、どちらかに加担かたんして、超強力な火力攻撃に出たりしたら、東西の核戦争になるかも知れないんだ。

 だから僕が何か言うことは控えたい。

 僕はこれでも平和主義者なんだよ」


 フライは、少し沈黙してから言った。


「前にも言ったろ、地球人を攻撃するつもりはないと。

 じゃあこれだけたずねようか。

 君はパーチン大統領とゾレンスキー大統領では、どちらが好きで、どちらが嫌いだ?」


 俺はしぶしぶ答える。

「被害国のゾレンスキーを嫌う理由は、僕にはないし、世界中の多くの人もそうだと思う」

 あれ、少しまずいこと言ったかも。


「パーチンは、このまま生かしておいて、少し罰でも与えて反省させることにしようか」


 言葉には出さず、俺はうなずいて肯定こうていした。

 これは俺の意見じゃないしな、大丈夫だ、きっと。


 突然、部屋の天井辺りから、色とりどりの小さな紙切れが大量に舞い散った。

 くす玉かよ。ていうか部屋が散らかってるじゃんか。


「フライ、僕の部屋にゴミを撒き散らさないでくれないか。

 掃除するのは、僕なんだからね」


 なんのつもりかと思っていると、

フライは、俺以外の何かに向かって、少し強めの声を出す。


「スパイ2号、これちゃっちゃと片付けて。

 終わったら支部につないで、3D映像を投射せよ」


 紙くずはあっという間に消えて無くなった。


(スパイって、なんだ。諜報ちょうほう活動していたのか、やっぱり)

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