ハエと美少女姉妹

千葉の古猫

現代ファンタジー編 その1

第1話 季節外れのハエ

 季節外れのハエがまぎれこんできた。


 あわてて殺虫剤を手にして戻るとハエはもう見当たらない。


 もう風が冷たいので、夏なら十分程掛けて行う換気かんきを一分半に縮めたのにその隙を狙うとは。


 見つけたら殺してやる。

 恐るべき殺意とまでは行かない決意だった。

 最後に「笑」を付けて終わらせるワンセンテンス程度のものだった筈なのに…


 二回目の遭遇そうぐうでは、刹那せつなに必殺の感情が湧いた。

 それは否定できない事実だ。



 数日後、またもやハエが一匹、パソコンディスプレイの周囲をブーン、ブーンと飛び回っていた。


「そのまま、そこにいろよ」


 座り掛けた俺は行き先をキッチンに変更した。

同時にまだ起動してない筈のPCからブツブツピーと音がした。

 思わず振り向く。


「コウタくん、殺虫剤スプレーはやめてくれないかな」


「え 誰」


 まのぬけた声が出た。


 誰も居ない所から人の声、もっと驚くか、怖がるか、冷静にいぶかるかしろよ、オレ。


 その声が子どものものだったからかもしれない、俺のマヌケな反応は。


「ワタシだよ」


 誰も居ない空間に向き合った俺は、キョトンとしたまま目だけを左右上下に動かした。


 丁度その時、ディスプレイ画面に光が射した。


「おい~~」


 またもおマヌケな声をもらしてしまった。


 しかしながら、さっきとは違って背筋にキンと冷たいものが走った。


 PCの画面には、が表示されたのだ。


 前足をスリスリしている。


 恐る恐る視線を少し上げると、ディスプレーの上枠にとまった、大きな動画と同じ動きをしている小物体を確認。


 さっき見つけたハエだ。

 刹那の殺意せつなのさつい


「頼むから大きな声は出さないでね。お話をしたいだけだから」


「ぅわっ」


 画面のハエがくちばしの先を開けて、俺に話し掛け、オマケに笑ったように見えた。


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