宇宙の果てを目指すだけのお話
黒井丸@旧穀潰
1章
第1話 宇宙の果てを目指すだけのお話
本作では『私』しか登場人物は存在しません。
そのため、容姿、性別、年齢、体格などは物語中特に重要な意味を持たないため、読者諸兄のご判断に委ねます。
ご自由に想像してください。
それでは、思考実験にお付き合い願います。
~ 宇宙の果てを目指すだけのお話 ~
2XXX年。
「退屈だな」
『私』はそうつぶやいた。
科学が発展した今、人間が出来る仕事と言うのは激減しAI搭載の機械や一部の資本家が独占するようになった。
星新一という偉大な短編小説家が予想したような世界になったわけである。
そうなると『小人閑居して不善を為す』という言葉通り、人間暇になるとろくなことをおもいつかなくなるので、なにかひとつ変わった事をしてみたいと思った。
「そういえば、宇宙の果てってどうなってるんだろう?」
科学が発展した現在でも、宇宙の果てというものはどのようなものか知られることはなかった。
特に、月面都市の建設に失敗し火星も人が住むのに適さないと判断されてから人類は宇宙への興味は残ったものの、金持ちたちは宇宙への投資を止め、この世界でいかに効率よく金を稼ぎ、快楽をむさぼるかに腐心し出した。
人類を人間に例えれば、受験とか就職に失敗し、少し(200年)だけ引きこもっている状態に近い。
いくつかの発明品や発展はあったが、目新しい発見などはとんとないのが今の時代だ。
おそらく私は死ぬまで不思議な事が分からないまま死んでいくのだろう。
そう思うと、寂しさと虚しさを感じる。
「だったら、いっちょ行って見るか。宇宙の果て」
『そうだ。●●へ行こう』
そんなノリで私は宇宙の果てへ行って見る事にした。
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「核融合エンジンに、3Dプリンター、酸素発生器…」
私は私財を投じて宇宙へ行く準備をした。
共に宇宙へ行くイカれた仲間は以下のとおりである。
核融合エンジン。
水素を材料に物凄いエネルギーを発生するダイナマイトみたいな奴。
これさえあれば、地球を脱出できるし宇宙だって航行可能。
ただし故障だけはかんべんな。
3Dプリンター
遺伝子レベルでの造形が可能。上下左右前後の6方向から分子レベルで造営できるためオリジナルとほぼ同様のものが作れる。
発明品が簡単に違法コピーできるため人類の発展を止めたスゴイ奴だよ。
酸素発生器
空気のない宇宙での必需品。自分の吐いた息から二酸化炭素を分解したり、そこら辺の漂流物から酸素を取り出す装置。こいつがいないと他の装置は動かせない。
『私』のクローン
3Dプリンターで作成した私と全く同じ性能のパイロットである。
リセットボタンのない現実でやり直しが出来るよう、とりあえず4人ほど作成しておいた。
「ちょっと待て、私」
さっそく冷凍豚肉をベースに作成した私が私に待ったをかける。
「私が宇宙に行くのではないのか?私?」
「いや、宇宙での生活が安定するまでは基地局が必要だろう私。だから、スペア製作用のオリジナルとして私はしばらく地球にいるよ。私」
「だったら、私が残るから、私が行きたまえよ。私」
30分ほど話し合った結果、じゃんけんで最初に宇宙に飛び立つメンバーを決め私は宇宙に飛び立った。
地球を脱出する程度の宇宙船の設計図はネットに普通にアップされていたので、これも3Dプリンター製である。
こちらは廃車寸前の普通自動車を材料にした。
これに無尽蔵エネルギーの核融合エンジンを搭載し、私の旅は始まったのである。
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技術的な難しい事はなるべく省き、どのような計画を立てれば宇宙の果てまで到達できるか、戦略的な部分での話を脱力的な文体で進めていきたいと思います。
変わった話をぼんやりと眺めながら、すこしだけ冒険小説でも読むようにワクワクしていただけたら幸いです。
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