異能学園・ディビリティ~理論上チート能力と最高の師匠兼相棒と共に駆け上がる~
夜桜 アルト
十月のプロローグ
プロローグ《僕の始まり》
―――悪い、遅れた。
倒れ伏す僕の前で、そう告げる。
‥‥‥ああ、なんて僕は弱いんだろう。
結局僕にできたのは、勝手に敵に突っ込んで‥‥‥何もできずに負けた。
そう、何もできなかった。こうして倒れ、指一本動かせない状況にある。
―――目の前には少年が二人の男と対峙している。
その背中に守られている僕は、無力感を嚙みしめ‥‥‥ただ、それじゃいけないんだと心の中で叫び続ける。
気づけば指が地面を掴んでいた。
‥‥‥?僕は、さっきまでこの指は動かないと言っていなかったか?
そんな思考をしながらも、この肉体は息を吹き返す。指から腕、腕から胴、更に脚へ―――肉体に力が巡る。
今なら―――立てる!
「グゥッ‥‥‥ァァァァッッ!!」
声を上げ、立ち上がる。
―――今の僕は―――さっきまでとは違う。さっきまでの無力な僕じゃない。今の僕は‥‥‥この少年と肩を並べることができる僕だ。
「‥‥‥その様子なら問題はなさそうだな」
「うん、なんとかね。ここからは―――僕も手伝うよ」
「ゴタゴタ言ってんじゃねぇよ!―――燃やし尽くせ!」
爆炎が男の体から放出され、僕たちに迫る。
隣にいる少年が手を後ろに下げ―――僕はその動作を止める。
「―――ここは僕に任せて、一撃で終わらせてくれ」
僕がそのセリフを吐き、少年は笑みを浮かべる。
「―――ああ、任せた」
僕は炎の前に体を差し出し―――さっきから頭に響く感覚に身を任せる。
そうだ。僕にはこれを防ぐモノがある。だから―――宣言しよう。その力を。
「―――《
僕がその炎に触れた瞬間、ソレは消滅し―――瞬間、後ろから突風が吹き付ける。
そして―――全てのカタがついた。
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―――朝日が目に焼き付き、朝を実感させる。
また懐かしい夢を見ていた。
‥‥‥まあ、そこまで昔ではないんだけど。
「―――んぅ、あぁぁ‥‥‥」
完全に覚醒しきっていない意識を働かせ、僕はベッドから降りた。
そのまま伸びをし、一つ深呼吸を挟む。その動作により、尾を引いていた眠気がある程度消え、視界が明瞭になった。
「まずは‥‥‥朝食を取らないとなにも始まらないね」
有言実行、台所に足を進め、今日の朝食のメニューを考える。
―――そんな時間があるわけじゃないし、味噌汁はインスタント、あとは―――玉子焼きに野菜炒めぐらいか。
‥‥‥数十分後、朝食を作り終え、食べ終えた僕は制服に身を通す。
入学式まであと三十分、登校が終わる頃には残り十分となっているだろう。
「―――忘れ物も大丈夫‥‥‥だね。それじゃ―――行ってきます」
誰もいない家に挨拶をし、僕は、新たな日常への第一歩を刻む。
「―――よう」
瞬間、真上から少年の声が響く。
「‥‥‥うん、おはよ。そんなところにいないでさっさと降りてきたら?」
スタッと軽快な音を立て、僕の家の屋根に座っていた少年―――天音咲夜が僕の隣に立つ。
「―――っと。よし、それじゃあ行くか」
咲夜のその台詞に頷き、僕たちは歩き出す。
何もしゃべらず、ただ、無言で歩いていると、唐突に今日見た夢を思い出す。
あれは僕の物語の始まりだ。半年前のあの事件が無ければ今、僕はこの場所に立っていない。
始まり―――それによって思い起こされるのは一週間前の出来事。今向かっている学園に初めて踏み入れたあの日の思い出だ。
―――そうだ。僕の物語が始まったのがあの事件なら―――今から思い返すのは僕の物語の第一話、プロローグの次のお話だろう。
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