神との決戦

@AI_isekai

Final "Or death"

遥か遠くまで荒れた大地が広がる場所。

決戦の地として示されたその場所から遠く眺めれば深い渓谷や山間台地が点在していることが分かる。


デッドモニュメントと言われるその大地では、今まさに決戦が行われようとしていた。



大地を揺らし大気を振るわす雷鳴が響くと、辺りは一瞬赤く光る。赤電と呼ばれる特殊なそれはある一点へと収束し大地へと直撃する。

その場所には一人の人間、一人の男――サモンがいた。

膝を曲げ着地した彼は、辺りを覆う砂埃を払うと立ち上がった。


黒い髪の毛、黒い瞳、死を連想させる彼の姿はここデッドモニュメントには相応しくない。


彼は、首を鳴らす。


「スカイ。ガイア。俺は、ここまで来たぜ。決着を付けようじゃないか」


多くの仲間、人々の犠牲を払い想いを抱えて相対するは神。その張本人である。

彼の仲間たちは、今も神の軍団と死闘を繰り広げている。ならば、こそ決着は急がねばならない。


人類対神の勝負の行方は、彼に懸かっている。


一瞬、風が動いたかと思うとサモンの右側に青い髪と白く光る光輪を持った者が顕現した。


「天空の神、スカイ」


そう名乗る者は、雷の速度で動くことができる二柱いる神のうちの一柱であり青の魔力を行使している。


「大地の神、ガイア」


サモンの左側の大地が大きく隆起するとそこから大地の神ガイアを名乗る赤い髪と白い光輪、そして巨体の男が顕現した。

ガイアと名乗る彼は、超音速で動きその強靭無比な身体によって暴力的な力を操っている。そして、赤の魔力によって爆発などを自在に起こすことが出来る二柱いる神のうちの一柱である。


「ふっ、役者は揃ったな。さぁ、来い。俺が相手だ!」


サモンは、腰を少し落とすとスカイとガイアに対して両手をそれぞれに向けると、指を曲げ挑発した。


「舐めた真似をしよって、楽に死ねると思うなよ。人間」

「我を挑発するとは、どこまでも愚かなのだな。人間は」


スカイが一瞬でサモンとの距離を詰め、右腕を振り上げそのままフェイントを仕掛け肘による強打を狙う。

ガイアも力強く地面を蹴り、サモンに対してその凶悪な右拳を叩きつける。


両柱ほんの数コンマの遅れもない完璧な連携。


だが――


「笑止、この俺が二対一の対策をしていないとでも思ったか?」


右足を上げ、右膝でスカイの攻撃を防ぐと左腕を用いてガイアの剛腕を受け止める。

まさに、完璧な防御。


そのまま右足でスカイの顎を狙った蹴りを繰り出し、左拳を振り上げようとしていたスカイはその攻撃を直に受ける。これにより、一時的にスカイを攻防からはじき出すことに成功。


ガイアもすかさず身体を一回転させ、一度目の殴りの速度を殺さずに右拳による殴りをもう一度行う。


しかし、サモンはそれに対して左拳を合わせお互いに拳は弾かれる。サモンが右腕に力を貯めているのを見るとガイアはすかさずカウンターを繰り出そうとするが、それはサモンのフェイントであり右足による蹴りを腹部に食らう。


ガイアもその強靭な肉体によって、耐えるものの力強いサモンの蹴りにより後ろへと吹っ飛ばされる。なんとか、飛ばされぬように足に力を入れて耐えようとするもののサモンとの距離が少し開いてしまい、飛ばされることへの抵抗を行ったこともあり少しの間サモンとの戦いに参加できない形へとなってしまった。


丁度そこに、スカイが舞い戻り後ろを向いているサモンの背中に対して手刀を狙うもののそれを読んでいたサモンはすぐに後ろに身体を捻りスカイの脳天に対してかかと落としを決めた。


あまりの衝撃に、地面へと叩きつけられたスカイの身体は1mほど宙に浮き上がった。


腹部へのダメージを受けたガイアは、動きが鈍っておりサモンはそれを見て地面を蹴りつけると、ガイアを蹴り飛ばし自身もガイアに続くように飛び上がった。

そのまま、サモンはガイアの上空を取り空中で攻防を行う。重い一撃を与えようと、左拳をガイアの顔面目掛けて押しつける。

しかし、ガイアは両腕でそれを受け止めるとサモンの次段の攻撃である右拳の攻撃を避け、赤の魔力を用いて空中で軌道変更を行いサモンから上を取る。


そして、赤の魔力を拳に乗せ無防備となったサモンに対して爆発する拳を叩きつけた。

空中で大きな爆発が起きると、サモンはそのまま無防備な体勢で落下していった。ガイアは、追撃を入れようと落下の勢いを用いて、サモンを地面へと叩きつけ、さらに地上で数度殴るとその場で大きな爆発が起きた。


爆風の中、ガイアはそこから飛び出て様子を伺っていた。


 「手ごたえはあり、やはり所詮は人間。我の敵では――」


ガイアのその言葉を言い終える前に、事態はさらに悪化する。

爆風の影から見えたのは、立った状態のサモンであった。あれだけの、攻撃を受けてなお彼は平然と立っていたのだ。


制御解放リミッターオフ


サモンのその呟きによって、爆風は一瞬で晴れ彼は身体に赤い雷を纏っていた。

そして、サモンは赤電を足へと送ると地面を蹴り上げスカイへと一直線に駆けた。


それを見て、スカイもすぐに青の魔力を拳に宿すとサモンに向かっていった。


お互いの拳がぶつかり合う、という瞬間。

ガイアが全速力で後方より迫ってきており、サモンの後頭部を赤の魔力を纏わせた右足で大きく蹴りつけた。


あまりの衝撃に、サモンは一瞬ではあるものの意識が飛びその隙を狙い青と赤の魔力を融合させた紫の魔力による光弾をサモンに浴びせた。


「「勝負あったな」」

「やはり、人間か。所詮は、やつらと同じ」

「貴様のあとは、我らが軍団と戦っておる者どもも一緒に送ってやろう」


増幅し続ける、紫の魔力を直に受けたサモンを見やり両柱は勝利を確信した。


しかし、異変が生じた。



――紫の魔力は、徐々に赤色に変色しやがてそれは黒へと成った。


サモンを囲うその黒い球体の周りで、黒い雷である黒電が迸る。して、サモンの変貌が生じる。

黒い球体が、はじけるように四散するとそこから出てきたのは黒の魔力を纏ったサモンであった。


黒の魔力、それは遥か昔から死を象徴していると言われていた黒の根源的な魔力。

黒の魔力は、"物体の顕現"を可能にする魔力である。いわば、何もない空間から剣を取り出すことも、何もない空間から盾を取り出すこともできる。


サモンの内に秘めていた"黒の魔力"は、彼の死に際についに目覚めたのだ。


サモンの周りは、大きなクレーターが出来たように大きくえぐれ両柱もサモンの異変に気付き距離を置いた。


「まさか、これは」

「ありえぬ、なぜ人間ごときが」


スカイはそれに勘付き、ガイアはそれを疑問に思った。

両柱の驚愕は、サモンが黒の魔力を用いた"物体の顕現"を行うのに十分な時間であった。


サモンは、両腕をそれぞれスカイ、ガイアへと向けると黒の魔力である黒電を腕へと収束させ、自らの手のひらから腕を模った非常に頑丈な物体を生成していき両柱にそれを押し当てた。

そのまま、両柱をはるか遠くにある大地の崖へとぶつけた。


それに対して、スカイは崖と板挟みになる前に抜け出すと腕を模った柱のような物体の側面を雷撃の如く速度で駆け走ると腰に隠しておいた刀を抜いて一気に距離を詰めサモンの下腹部目掛け刀を振るった。サモンは一刀両断されたかに思われたが、そうはいかず瞬時にプロテクターのように腹の前に盾を生成し致命傷を逃れた。


しかし、超高速で切られたためその威力は凄まじく大きく後方へと飛ばされる。

サモンが、飛ばされた先はガイアが待ち伏せておりサモンを後ろから数度蹴ると回転蹴りを頭部に行った。サモンはそのまま気を失ったようにその場で倒れ伏した。


「これで、終わりですかね。念のため、私がとどめを刺しておきましょう」

「分かった、では我は残党を彼と同じ地獄へと送ってくるとしよう」


ガイアがサモンから離れ、スカイがサモンへと近づてくる。その時、ある声がサモンに響く。


『このまま負けていいのか?』

『仲間が無残に殺されてもいいのか?』


黒の魔力は、宿主を強くするために在る。サモンは、その声を聴き仲間の今を想う。

そして、サモンは覚醒する。


「そうはさせねぇ、絶対に止めて見せる!」


「「―――!?」」


逡巡、神ですら理解に苦しむ状況。

否、神だからこそ理解に苦しんだ。


いま、そこにいるサモンと名乗る"人間"は神へと至ろうとしていたのだから。


黒の魔力である黒電と彼自身の力である赤電が、徐々に融合していくのを神々は感じ取った。

サモンの周りにある多くの瓦礫は、世界の法則に逆らって宙に浮いている。サモンは赤電と黒電が融合した赤黒雷を纏っていく。


「「殺す..!」」


神である両柱が、その危機を感じ取ったときには既に遅かった。


その瞬間、世界は震えた。


赤い光が世界全体を包んだ後、黒の光が世界を包んだ。瞬きするよりも何千倍も短い時間の、その現象に。

そして、大地を断絶させ、大気を壊すほどの雷鳴が響くと、赤黒雷がサモンのいるその大地へと直撃する。


――――――神格覚醒


「すべてを終わらす」


白いマントを羽織り、黒の光輪を持ったその男こそ――サモン。

いや、人神サモンと呼ぶべきであろう。


黒の魔力と赤電を完全に制御下に置き、覚醒させた今の彼にとって――神々はもう敵ではない。


サモンの後ろから繰り出されるは、スカイの超音速を超越した雷の速度による全力の殴り。それを、振り向きもせず完璧に止めたサモン。

逡巡によって、スカイとの攻撃を合わせられなかったガイアが一瞬遅れてサモンの前より迫ってきた。


サモンは、スカイの拳を止めた右手でスカイの手を握るとそのまま腕を回転させガイアが自らの懐に来た瞬間にガイアの上からスカイを叩きつけた。


お互いに、無抵抗になった瞬間にサモンは黒の魔力によって自らの腕を巨大な物へと変えてそれに赤電を帯電させ大きく殴りつけた。


ガイア、スカイ。両柱ともに、背中から無防備な状態で崖まで吹っ飛ばされる。


ガイア、スカイはその衝撃によって、制御解放リミッターオフが行われ赤の魔力、青の魔力を全身に巡らせ圧倒的なまでの力を手に入れた。


「ガイア、この一撃に賭けよう」

「スカイ、我もそのつもりだ」


空を自由に滑空し、雷の速度を超えたスカイ。

大地を自由に駆け、瞬間的に雷を超える速度と衝撃を手に入れたガイア。

互いに、この一撃に賭けてサモンへと全力の突貫を行った。


「俺も、仲間たちのためにこの一撃ですべての力を使い切ってでも倒す!」


対するサモンも、地面を蹴ってスカイに匹敵する速度で立ち向かう。




―――衝撃



互いの拳が、ある一点で収束し爆発。

その威力は、デッドモニュメントと呼ばれる大地すべてを飲み込み強大なクレーターを生み出した。


まさしく爆弾。核をも超えた、巨大な爆発であった。


そして、倒れ伏す二柱。


立っているのは、サモンただ一人。












――試合時間 15秒

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