執事に恋したお嬢様と愛の重たい執事

アオツキ

一章

第1話 お断りしますお嬢様

「執事、紅茶をいれて下さるかしら」


「どうぞお嬢様」


「執事、このカーペット汚れてるわ。買い換えておいて」


「かしこまりましたお嬢様」




この家にお仕えする事となり、早数年……執事として働く私は今日もまたお嬢様の命令にお答えする。紅茶と共にクッキーもお出ししカーペットの発注を素早く終えたら、白手袋を外しお嬢様の御髪を整える



「執事」




「はい。なんでしょう、お嬢様」




「あとでこの書類にサインを」




「お断りしますお嬢様」





下された命令を断ればお嬢様はピシッと固まった。これは何時もの事なので私は気にせずお嬢様の綺麗な金色の髪を整える。それを終えて手を離せば「なんでよ!!」とお嬢様がこちらをグリンッと振り返った



「お嬢様、顔が恐ろしいですよ」


「アンタのせいでしょうが!!!この書類に!サインしなさいって言ってんの!!」


「それは出来ません」



私が再度断れば鬼の形相でこちらを睨み付けるお嬢様、やれ恐ろしい。御令嬢がしていい表情ではありませんよ



「……執事、アンタは何者?」


「私は執事です」


「そうよね、じゃあ誰の執事かしら」


「お嬢様の執事です」


「そうよね?そうよね??……そうよね!?」


「はい、貴女様の執事ですよ」


「じゃあなぁあんで!この書類にサインしないの!」


幾つか質問をした後にお嬢様は手に持っていた紙をバンッと机に叩きつける。紅茶をいれたカップが揺れ、音をたてて床に落ちたスプーンを視線で追っていれば「こっちを見なさい!」との事…言葉に従いお嬢様の方を向けば彼女は幼い子どもの様に頬を膨らませていた





「残念ですがお嬢様………これでお嬢様の失恋記録が更新されました。貴女のソレにお答えするのは1358回目です。婚姻届にサインは出来ません」





胸に手を当て答えればお嬢様は膝から崩れ落ちてしまわれる


























「執事を殺して私も死ぬ!!」



「待て、その手に持ってるものを離しなさい!」



「ウワァァァン!執事のバカァァ!」



「バカは貴女でしょうが!!」




かと思えばいつの間に持っていたのか、ペーパーナイフを胸に当てていたので慌ててその手に手刀を落とした





「アンタが私を何回も振るからでしょ!!」


「死んだら私に告白すら出来ませんよ!」


「それはイヤ!」


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