第16話
また、だ。
またもや、私の夢の世界に笠井さんがいる。
笠井さんが、私に手招きしている。
にこやかに笑い、パクパクと口を動かしているのは理解できるけれど、声が聞こえない。
「なんて言ってるの???」
笠井さんの言葉を聞くためにも、私は彼女に近寄る。
まだ聞こえない。近寄る。
まだまだ聞こえない。近寄る。
おかしい。
もう、笠井さんは私の目と鼻の先にいて、本来この距離ならば声が聞こえないなんてことはあるはずがないのに。
笠井さんの口はパクパクとして、その声を聞くことは出来ない。
「だから、なんて言ってるの?笠井さん」
私はもどかしくなって、笠井さんのパクパクと動く口元に、耳を至近距離まで寄せた。
すると、『声』が聞こえてきた。
でもそれは、笠井さんの口から出てる声では無くって。
まるで、頭に直接語りかけてきているような、そんな声。
―――桃花ちゃんは、今日の私……
―――桃花ちゃんは今日、私とえっちなことがしたくて堪らない
―――桃花ちゃんは。桃花ちゃんは。桃花ちゃんは。桃花ちゃんは。あなたは!!
あなたは私のことが大好き。あなたは今日から私以外の女なんてどーでもよくなる。あなたは私のことが大好き。そーだよね?大好きって言って。大好きって言って欲しい。あなたに大好きって言われたい。あなたは目が覚めたら私が大好きなの。だからお願い。あなたは私に大好きって言わなきゃいけないから。大好きって言って。あなたは私のことが大好きになる。私はあなたのことが好き。大好き。だから、ねぇ。
桃花ちゃんは、
そんな、笠井さんの懇願のような、か細い声が私の頭に響いた。
いつまでも。
いつまでも。
それは、今、目が覚めても。
まるでエコーするように。
私の頭に響き続けた。
あぁ、どうして。と思う。
目を覚まして、気がつけば汗だくの待ち人がいて。
彼女は、こんなにも心の中で私を想い続けてくれていて。だけどそれと同じくらいに、こんなにも彼女は不安にしていて。
あぁ、どうして。
彼女がこんなに切羽詰まるまで、私は気づいてあげられなかったんだろう。
こんなの、まるで脳に刷り込みをするみたいに。暗示?はたまた洗脳??
そんなことまでさせてしまうほどに、私は彼女を不安で不安でいっぱいにさせてしまった。
こんなの。
こんなのって……………
カノジョ失格じゃん。
好きな人をこんなになるまで放っておいてしまった。気づいてあげることが出来なかった。
これは、私の落ち度。
なんとか、カノジョに嫌われないためにも。
これ以上カノジョを不安にさせないためにも。
カノジョを、好きな子を、安心させる方法。
私は決めた。
「つぼみちゃん。今日の夜なら、、その、、、、つぼみちゃんになら、私、、抱かれてもいい、、よ?」
カノジョを安心させるためには、体で分かってもらうしかない。
その、えっちはまだしたことが無かったけれど、なんでだろう。
なんだか、今日は私もつぼみちゃんを今しがた見た時から、無性にえっちがしたくて堪らなかったから。
だから、サプライズ。
今日の夜にあげるプレゼントは。
私だよ、私の大好きな笠井 蕾ちゃん♡
━━━━━━━━━━━━━━━
宣伝
『秘密のサインは×印』(クズ百合)
↓↓↓↓↓↓↓↓↓
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます