第41話 謎の状態異常……
「ねえ、しょうちゃん」
「今は待って」
モンスターの反応がすぐそこにある。だが、姿が見えない。
何度確認しても、確かにすぐ近くにモンスターの反応があるようなのだが、モンスターらしき影が見えない。
ゴブリンに重なるように接近していたらしく、ゴブリンを倒してもモンスターの気配が消えなかった。
つまり、ゴブリンを倒したからといって、ここで戦闘終了にはならない。
また何か変な状態異常も考えられるし、油断は禁物だ。
:かわいい!
:下層にも癒し枠?
:これほんとか?
:下層のモンスターは分かってないこと多いし
:いや、ワンチャンモンスターじゃない説も
かわいいのなんてどこにも、いやえりちゃんたちはかわいいけども、そういう話じゃない、はず……。
いないとか言わせるワナか?
それよりモンスターだ。ここまで見つからないとなると、ノミみたいな大きさの小さいモンスターがいる可能性もある。
小さければ脅威じゃないとは限らない。
「しょうちゃん」
「何? どうした、の?」
つんつんつつかれえりちゃんを見ると、今度は何度も下を指さしている。
「ん?」
視線を下に向けると、今まで見えてなかったものが見えた。俺の足に頭をすりつけるようにしていたのは、子猫?
俺が思っていたよりは小さい存在だったが、猫? モンスターじゃないのか?
もしかして、迷い猫かわからないが、
「うわっ」
驚いたことに、子猫はいきなり俺の肩に飛び乗ってきた。
猫にしては人懐っこい。
どうやら攻撃してくる様子がない。となると、モンスターじゃなさそうだが、それではモンスターはどこに?
「ひとまず、どうやって連れ帰ろうか」
「ね。なんとか生き延びれたんだったら飼い主に会いたいだろうし」
とは言え、雑に収納スキルで、というわけにもいかない。
転移して戻るというのはありだが、時間のロスだ。攻略はまだ始まったばかり。
「しょ、しょうちゃん……」
「今度は何? あれ、いない」
気づけば猫がいなくなっていた。
集団幻覚とかではないはずだ。実際に重みがあった。
さすがに肩に乗っていた動物がいなくなれば気がつくと思うのだが、気づくより先にいなくなっていた。
子猫は霧のように消えてしまった。
すでに疲れているのか? いやいや、そんなことはない。
いつの間にかモンスターの反応まで消えてなくなっている。
なんともなかったけど、なんだったんだ? スキルの誤作動、ということはないだろうし。
「しょうちゃん。なんともないの?」
「まあ、猫に懐かれてただけだし」
「そうじゃなくて」
全員の目線がなんだか俺の顔より高い。
頭頂部を見られている気がするのだが、別にハゲてはいな、い。
ハゲてないが、なんか変な感じがする。
「え。え、何これ」
俺の意思でひょこひょこと動く突起? なんだか自分で触ってもくすぐったい?
:猫耳しょうちゃんだああああ!
:なんて変な状態異常……
:ピンキリなんだなぁ
「いや、待って。何それ」
触り心地からして、おそらくほんとに耳が生えてる。それも猫耳らしい。
「にゃんにゃん!」
「猫が好きなのかい?」
「俺は猫じゃない」
「そういえばそんな話してたわね」
「ほら、これ」
「やめろー!」
俺の黒歴史を人に見せるな!
しかし、ダメだった。
止められなかった。
どこからともなく現れた猫じゃらしによって、えりちゃんにじゃらされてしまう。体がうずく。勝手に動く!
「ちょ、やめ! やめて。えりちゃん状態異常治せるよね? ねぇ、こんなのさらしても誰も嬉しくないから!」
「わたしが嬉しいもん」
「似合っているんじゃないかい? ワタシとしても、初めてのことで興味深い」
「あたしも猫飼おうかな」
「違う! 俺を見て判断することじゃない! 誰か止めて」
:彼女に猫耳生えないかなぁ
:このためだけに下層目指す人現れそう
:俺たちも嬉しいよ
違う。マジで違うんだって。
ここ下層だよ? これも何かのワナっていう可能性だって。
「ほらほら、ごろごろ言っちゃって」
「ちが、体が勝手に」
喉を撫でられると猫みたく鳴る。
耳だけじゃない、なんだか腰にまで変な感じが。
「尻尾も生やしちゃいました」
「生やしちゃいましたじゃないのよ!」
ちょっと待って。本当に。
「これ、まずいって。スカートが持ち上がっちゃうから」
「ほれほれ」
「ほ、本当に待って!」
「かわいい!」
炊かれるフラッシュ。
本能に抗えず、またしても体が動いてしまう。
「撮るな!」
「研究になるな」
「撮らないで下さい」
「あ、あたしの方にも……。ああ……」
「ショック受けないでください」
しばらく遊ばれてから状態異常は治してもらった。
もしかしたら、冷静じゃない状態が、状態異常の効果だったのかもしれない。
一般的な状態異常じゃない。おそらくすぐに直すならえりちゃんのスキルじゃないと無理だ。
俺は、より高位の状態異常無効スキルを即刻有効にした。
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