78. 武侠語り~生兵法は創作の源〈前編〉【回顧録】

真野魚尾(まの・うおお)です。開き直ったタイトルで失礼します。


真野の創作ルーツは、これまでに語ってきた少年漫画やファンタジー、時代劇など色々です。今回迫るのは、その一つでもある武侠についてです。




◆『カンフーチェン』知ってる?


順を追って、まずは武侠ものの原体験から探ってみようと思います。


漫画ですと、以前に感想を書いた『北斗の拳』や『闘将たたかえ!!拉麺男ラーメンマン』は外せません。

TVドラマで言うと、堺正章主演の『西遊記』は勿論、土曜夜に放送されていた『カンフーチェン』も無視はできません。

映画では、ジャッキー・チェンやジェット・リー(リー・リンチェイ)の初期作品群が挙げられます。


いずれの出会いも幼稚園から小学校低学年の出来事なので、中には殆ど詳細を憶えていないものもあります。


ですが、これらの作品に通底する、義を尊び、弱きを助け強きを挫く精神性は、子供心に深く刷り込まれていたのではないかと思っています。




きょう子牙しがじゃないと違和感


当エッセイ過去回『読書歴のようなもの』でも触れましたが、高校生の時に吉川英治『新・水滸伝』を手に取ったのが、真野の武侠小説との出会いです。


その後『三国演義』を岩波文庫で読み始めましたが、途中からストーリーとキャラが頭の中で整理できなくなって挫折しました。ちょううん阿斗あとを救うあたりまでは憶えています。


安能務訳の『封神演義』は仙侠もののお手本ですね。藤崎竜の漫画版の原案でもあるらしいですが、こちらは未読です。しんこうひょうまわりが盛られているとは聞いたことがあります。少年漫画にライバルキャラは必須なのでしょう。




◆「小龍女 ntr」とかで検索するなよ!? 絶対だぞ!?


武侠小説の大家・金庸の作品群も『書剣恩仇録しょけんおんきゅうろく』から一通り読み漁りました。序盤から出てくるよう金針きんしんみたいな外連味のある暗器は大好物です。


代表作『射鵰英雄伝しゃちょうえいゆうでん』は、とりあえずこれを読んでおけば間違いないという王道作品です。続編を十二分に楽しむためにも一読をおすすめします。

余談ですが、本作はPS版ゲームもプレイしました。意外とと言っては何ですが、改変こそありつつ根幹部分はしっかり受け継がれていたような。東邪ことこうやくは本当に面白いキャラですね。


その続編『神鵰侠侶しんちょうきょうりょ』(邦題『神鵰剣俠』)は大好きな作品です。

主人公・ようの境遇がとにかく激重で、読み進めるのに気力を消耗しますが、隻腕に巨大剣というロマンには厨ニ心がワクワクします。

師匠にしてヒロインの小龍しょうりゅうじょとのロマンスも本作の醍醐味の一つです。幾多の障害を乗り越えて結ばれた二人を、真野は武侠史上ベストカップルに認定します……!


秘曲ひきょく 笑傲江湖しょうごうこうこ』は『スウォーズマン』のタイトルで映画化もされていました。ブリジット・リン演じる東方不敗のインパクトは絶大です。おかげで後から読んだ原作の方に違和感を覚える副作用が……。


金庸作品のヒロインたちは真面目であれ奔放であれ、みんな自立した考えを持っているのが素敵です。書かれたのが1950~60年代の中国であることを考えると、その先進性に驚きと尊敬を禁じえません。


どの作品にも言えることですが、アクションにロマンス、ミステリ要素まで盛り込まれた贅沢なエンタメ性は、目の肥えた現代のオタクたちにも充分通用するのではないかと思います。




後編に続きます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る