60. 読書歴のようなもの(終)ルポそして雑学【回顧録】
真野魚尾(まの・うおお)の『読書歴のようなもの』、最終回です。
〈前回〉
★55. 読書歴のようなもの(4)科学から哲学へ【回顧録】
https://kakuyomu.jp/works/16817330658975712480/episodes/16817330667411921758
これまでに取り上げていなかったジャンルと、最後に総括「のようなもの」を。
◆ルポルタージュ:少数派の視点から
『アイヌ民族』(第11回で紹介)をきっかけに本多勝一のルポルタージュをひとしきり読破しました。第1回で挙げた『日本語の作文技術』もその流れで出会った一冊です。
それ以外の著者によるルポでは、
『被差別部落の青春』角岡伸彦
『セックスボランティア』河合香織
『ネグレクト』杉山春
など、マイノリティの実情に切り込んだ内容は深く考えさせられました。
『アンネの日記』アンネ・フランク
主義思想を超え、大変な時代を生きた一人の女性の等身大の記録として、深く心に刻まれています。
◆雑学:多種多様な主義主張
ハードカバーよりも手軽に読める新書は沢山読み漁りました。とても全部は挙げられないので、
高校時代まで
それから時期を下って、現代のサブカルチャーを読み解く論説にも興味を持ち始めます。大塚英志『キャラクター小説の作り方』、東浩紀『動物化するポストモダン』他多数、宮台真司の著書にもいくつか触れました。
他に思い出せる範囲で挙げると、
『日本の偽書』藤原明
『「噂の真相」25年戦記』岡留安則
『「感動」禁止! 「涙」を消費する人びと』八柏龍紀
『人形作家』四谷シモン
『アウトサイダー・アート』服部正
などが印象に残っています。
特に最後は、ヘンリー・ダーガーというアウトサイダー・アーティストを知るきっかけとなった重要な一冊です。その存在は、私が自身の創作に向き合う姿勢に大きく影響しました。
◆まとめ:読書という旅
読書を通じて、多くの立場、様々な人の考え方に触れてきました。以下、私自身の反省も込めて記すことにします。
一つの答えを追い求める姿勢は大事です。しかし、視野狭窄に陥っては、独り善がりにしかなり得ません。寛容に振る舞っている著者が、別のテーマになると途端に偏狭になったりする例もよく目にしました。
何から何まで全面的に同意できる人間なんて存在しません。「私の言いたかったことはこれだ!」と、他人に自分の思想を仮託するのは危険です。部分的に賛同できたり、己を正す「鏡」になれば儲けものでしょう。
世の中には沢山の正しさがあります。世界はあまりにも大きすぎて、たった一つの正しさだけでは覆いきれないからです。
好奇心旺盛だった若い頃と比べて、歩む速度こそ緩やかになりましたが、これからもまだまだ遍歴は続きそうです。
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