第10話 魔法使いとの戦い(守人の場合)

「はぁ、はぁ……身体が重い……少しは回復したと思たけど、全快には遠いのか?」


 私は思う様に動かない身体に苛立ちを覚えるも、急いで広間へ駆けつける。すると、既にそこには杖を手にした三十代くらいの黒いローブ姿の男が立っていた。


「あのローブ姿。それに輝く魔石ませきが埋め込められた杖……魔法使いか!」


 気配の正体を確認した私は、すかさず槍を構えて訊ねる。


「ここへは何しに来た?」


 当たり前じみたセリフに対し、魔法使いは無表情でてのひらを見せて……


アイスアロー氷の矢……」


 先制の氷結ひょうけつ魔法を放つ!


「挨拶も抜きとは上等ね!」


 飛んで来た氷の矢を最小限の体捌きだけで簡単に避けて見せる。しかし、そんな余裕のある動きを見せても相手の表情は崩れないので……


「もしかして、今のはただのおどしだったかしら?」


 皮肉ひにくめいた発言で牽制けんせいしつつ、距離をジリジリと縮めていく……っが、その動きを察知されて第二射となる氷の矢が発射! しかも、最初よりも高速のものを二発連続でだ!!


「くっ……!」


 距離を縮めていたのがあだになるも、その場から大きく跳び退いて二本の矢を躱す……っが、そこにワンテンポ遅れてからの三本目が襲う!


「コ、コイツ! 私の動きを予測よそくした!?」


 このままだと回避動作が間に合わないと判断する私は、槍を自分の前面に立て構えると、それを高速で回転させて三本目の矢を弾き返す!


「よしっ!」


 しかし、安心するのは束の間。さらにもう一本の矢が向かってくる!!


「四連続!? しかもさらにスピードが乗って……って、これが本命かぁ!!」


 猛スピードで向かって来る氷の矢ではあったが、これを逆手に取って弾かずにそのまま魔法使いへ向かって思い切り打ち返す!!


「な、なにっ!?」


 まさか自分の放った魔法が、自分に返って来るとは思わなかったのだろう。相手は驚愕きょうがくの表情を浮かべてやっとの思いで身を伏せて躱す!


「悪いけど、そんな子供騙しの小細工なんて通用しないわよ!」


 私が再度の攻撃に備えながら言ってやると、向こうもカウンターを気にしてか迂闊に攻撃をしかけない。結果、今度は互いが手を出せない膠着こうちゃく状態に陥ってしまう。


「さぁて、ここからどうしたものか……ん?」


 先の展開を思案してるなか、魔法使いはゆっくりとした動きでてのひらをこちらへ向けてそのままの姿勢で固まる。


「何のつもりかしら?」


 そう思った時だ!!


「危なっ!」


 予想外のタイミングで放たれた氷の矢をギリギリで躱す。どうやら初動しょどうの動きで困惑させてから私の鼻の穴を三つにする気だったようだ。


「ほう、今のはよく躱せたな? さすがは剣の番人といったところか?」


 不敵なセリフを吐く魔法使い。最初の四連射といい、今のだまし打ちといい、コイツは対人での戦いに相当慣れていると見え……来る!!


「また二連射!?」


 心臓を狙った一本目は単純に槍で叩き落とせる。だけど二本目は……届かない? 


「距離を見誤ったのか!?」


 ともかく、まずは一本目の矢を想定通りに叩き落とす。次の届かない矢は無視して……!?


「え?」


 撃ちそこねた矢が地面を滑って……いや違う! 氷の特徴を生かして滑走かっそうさせてる足元を狙ったんだ!!


「ちっ、色々やってくれるわ!」


 間一髪で気づけて宙に跳んで難を逃れるも、攻撃はまだ終わらない。案の定ヤツは身動きがままならない空中にいるところを狙われる!

 まるで、今までの攻撃全てがこの一撃への伏線ふくせんだと言わんばかりに!!

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