魔王の力の50分の1が俺の中に宿りました
中町直樹
第1話 プロローグ
天使と悪魔が住まう地〈ロザン・ノール〉では相反する2つの存在は互いに敵視しながらも長年バランスを保っていた。
しかし数日前、1人の悪魔が殺された。胸には天使の武器の1つである『聖星剣』が突き刺さっていた。
これを知り悪魔側の王である魔王アザリスは天使たちに宣戦布告。それを受け天使側は神王ゼテナの加護を受け戦闘体制を整えた。そこからわずか数時間後に戦争が始まる。
戦況は天使有利で進んでいった。悪魔も8人いる大天使のうち4人を戦闘不能に追い込んだものの、残りの大天使たちにやられ、残る戦力は魔王アザリス1人となったのだが、、、。
「アクリエートダガー」
「リフレクション!!」
放ったが魔法で跳ね返された。『アクリエートダガー』は本来『リフレクション』で対応できるほど弱い魔法ではない。神の加護を受けているからこその芸当だ。
「煩わしい」
跳ね返された魔法を避けながら苛立ちを露わにするアザリス。そんなことお構いなしに翼を靡かせながら4人の大天使は攻撃を続ける。
「「「「ライトニングウォール!!」」」」
4人の声と同時に光の壁が四方からアザリスを覆う。焼けるような痛みが彼を襲う。
「ぐっ!オールデリート」
素早く魔法を使い光の壁を打ち消す。しかしすでに彼の周囲を金色の槍が囲んでいた。大天使の合図でそれらが一斉に彼を襲いにくる。
「ブラックルーム」
彼を中心に黒い球体が展開する。その球体に金色の槍が飲み込まられ消えていく。立て続けに襲いかかる悪魔対策の魔法をいとも簡単に対処するアザリス。余裕の声色で大天使たちに呼びかける。
「諦めろ。このまま戦い続けてもお前たちにかけられた加護が切れる。そうなれば俺が勝って終いだ。今のうちに降伏しろ。そうすればお前たちを殺した後、他の天使たちに害は加えないと約束しよう」
実際、大天使たちの加護は先ほどの攻撃ですでに切れていた。このまま戦ってもアザリスの言う通り殺されて終わる。
しかし彼女たちは不敵に笑う。
「何がおかしい?」
「私たちは勝つつもりはありませんよ」
「あ?」
「あんたをここから動かさない。それが私たちの仕事だって言ってんのよ」
言い終わると同時にアザリスの真上から光の柱が降ってくる。焼けるような痛みと痺れが彼を襲う。それが何かを理解するのに時間はかからなかった。
(クソ!天罰か!)
『天罰』大天使よりもさらに上の神が使う技。悪魔を確実に葬り去る効果があるが発動する条件が厳しいため発明されてから今まで数回しか使われてこなかった。
(流石にやばいな。これから出るのにかなり魔力を消耗する。そうなれば出た先でクソ天使にやられるのがオチだ。だからって出なけりゃこのまま消滅する。なら一か八かやってみるか)
アザリスは魔力を一点に凝縮し解き放つ。そのエネルギーで『天罰』を打ち消すことに成功する。直後その隙を逃さず大天使たちが攻撃を仕掛けてくる。しかしそこにはすでにアザリスの姿は無く、代わりに小さな穴がポツンと存在していた。
凝縮した魔力を解き放った際のエネルギーで時空を歪め、そこにできた時空の穴から脱出。普通であればこんなことは不可能だが長年の感覚とセンスだけで可能とした。しかしアザリスに成功した喜びはない。
(あそこからは脱出できたがどこに出るかもわからん。それに心なしかどんどん力と意識が抜け落ちていってる気が、、、)
考えている途中で彼は意識を失った。
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