サンゴキノコの作り方 2
すやすやと安心しきった顔で眠ったアレクシアを見ながら、グレアムは小さく笑った。
(まさか、アレクシアが来るとは思わなかったな)
心配しているだろうなとは思っていたが、自ら探しに来るとはグレアムも想像していなかった。
ましてや、ファシーナにのしかかられている時に、部屋に飛び込んでくるなど誰が想像できただろう。
――わたくしの夫に何をするのですか‼
普段からは考えられないような剣幕でファシーナに向かって怒鳴るアレクシアには本当に驚かされた。生来、怒るのはあまり得意でないようなので、迫力はまったくと言っていいほどなかったが、それでもあのアレクシアが誰かを怒鳴りつけるなんて思いもしなかったのだ。
華奢な体で、必死にグレアムを守ろうとする姿はたまらなく愛らしかった。
(まあ、恥ずかしくもあったのだが)
とんだところを見られたと思ったし、アレクシアを守るはずの自分が逆に守られているという状況は情けなくもあったが、今まで見たこともないアレクシアを見られたのは少しだけ嬉しかったりもする。
愛されていないとは思ってはいなかったが、他の女が触れて嫉妬するくらいに想われていたのだと思うと一種の感動すら覚えた。
(嫉妬するのは俺だけだと思っていたんだが、違ったんだな)
アレクシアの周りには何故か目障りな男が集まる。ジョエル然り、ガイ然り。ドウェインも油断ならない。
アレクシア本人が気づいていないのだからなおのこと心配でやきもきしていたのだが、アレクシアもグレアムにちょっかいを出す女がいたら焼きもちを焼くらしい。
頬を撫でると、眠っているアレクシアがふにゃりと笑う。
(勝負とやらは心配だが、腕輪が外れない以上、アレクシアに任せるしかないか……)
ファシーナの言ったサンゴキノコが何なのかは知らないが、ドウェインがいるのだ。キノコがかかっている以上、最悪ドウェインが何とかするだろう。
もし負けたとしても、アレクシアとドウェインがいるので外部と連絡が取れる。クウィスロフト国を通して抗議すれば、ファシーナとて太刀打ちできない。
どう転んでも問題ないはずだ。
グレアムはアレクシアを腕に抱きなおして、目を閉じた。
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