貴方は自分を愛していますか?
東線おーぶん
出会い
「もしもし」
「もーしもーし!」
貴方はぼんやりとした意識の中、まるで誰かに揺すり起こされるかのように目覚めました。
そうして貴方はこう思いました――ああ、夢だな、と。
「あ、今夢だなって思ったでしょ?」
「・・・何故分かった?って、そりゃ自分自身だし分かるに決まってんじゃん。いやーそれにしても我が事ながら本当に顔に出やすいわ、マジで」
「え?私みたいな女の子と自分みたいな男が自分自身って何だよって?」
「え?分かんない?何となくシンパシーとか感じない?ホラ、喋り方の癖とか魂の波長とか気とか直感とかそんな感じとかで」
「分かるわけないだろって・・・言われても、うーーん。あ!じゃあこれは!今まで碌に彼女も出来ず女の子に話しかける事も出来なかったヘタレで童貞な君が自分で言うのもなんだけど私みたいなスーパー美少女とちゃんと会話出来てるっていう事実!」
「うんうん、納得――してくれないよねうん。だよね知ってた」
「えーとじゃあ、一つずつ、説明していくね?」
そういうと彼女はどこから説明していけばいいんだったかなーと顎に手を当てながらうんうんと唸り始めます。
この要領の微妙な悪さ、次に考える事をついついその場で決めてしまいがちなめんどくさがりな所、何だか貴方にはとても親近感がわきましたが貴方はこの世界は夢の世界だからとスルーする事にしました。
「うん、とね・・・じゃあーまずは、ここは夢の世界ではありません。あ、ほっぺた抓ってみてもかまいませんよ?」
貴方はちょっと動揺して、頬をつねりました――そして気付きます。
まったく痛くない事に。
「おぉー本当にそんな古典的な事するなんて流石この頃の自分」
貴方は満足してホラ夢じゃんと目の前のちょっと頭が痛いと思われる女の子に向き直ります。正直、タイプの子だったからです。
「うんうん。そうきたかー。でも、夢にしては思考が明瞭だし現実みたいに意識がはっきりしてない?」
「――言われてみればっ!みたいな顔してるね・・・おっかしぃなぁ・・・此処まで分かりやすかった筈なんだけど・・・」
「・・・え?自分みたいな奴が女の子と話せるなんて現実な訳がない・・・って?」
「あ、あぁあーそういやうん、この頃の自分ってそうだったわーうん、納得」
貴方はいちいち謎の上から目線の言葉にイラっとしましたのでもう一度某ロボットパイロットのパロディ並みに説明をしろよっと叫びました。
「うん分かったわシ〇ジ君。それじゃあ話すわね話はこれからずっと前――一億と二千年・・・いや、つい昨日の事だったかもしれないが・・・君にとっては明日の出来事であった――異世界転生の話からするとしよう」
・・・それなんてエ〇シャ〇〇?貴方は困惑しました。
「ある日寝てたら突然神様って名乗る謎の高次元存在に異世界に願い事を三つだけ叶えてあげるから転生してって言われたんです」
・・・うんうん。貴方は頷きます。
「因みに神様は視た瞬間に神様だって何故か分かりました。姿や声すら認識出来ませんでしたしそもそも其処に存在があったのか・・・チートを貰った今でもあの当時の事を思い出すと脳が処理しきれなくなります」
・・・こわい。貴方は震えました。
「因みに願い事は神様の創る人間最強の肉体、その肉体の扱える最高峰の魔法というシステムツール、残りは保留でどうしても困った時に叶える様にして欲しいという形にして貰いました」
・・・貴方は驚愕しました。
その思考が日頃異世界に転移したり学校でテロリストと戦っている妄想をしている自分と同じ思考だったからです。
「因みにその転生という運命は私というある種異世界の同位体?が背負った事で他の次元、世界の軸の何処からもその可能性の線、或いは点――」
・・・つまり?
「・・・オホン、つまりは貴方は異世界転生しなかった私であり。私は異世界転生した貴方、という事になるのですよ」
・・・じゃあ、その体も?
「えぇ・・・お察しの通り、神様に願い事を叶えて貰ったらTSしてたんですよ」
流石神様、ええ仕事するわ。
貴方は自分だったら絶対嫌だと思いつつも神秘的な金の毛髪が線の様に刻まれた夜空の如く煌めく黒髪に一房程垂らされている特徴的な銀の前髪、星座をそのまま瞳に移した様なエメラルドがかった目に端正な顔立ち、くっきりとした目鼻立ち。
どれも神様が創ったとしか言えず、この表現でも足りないと確信出来る程です。
顔一つでもこれ程なのですから彼女の肢体を全身目に納めたら理性等容易く吹き飛びかねない程の魅了さを持っています。某TRPGなら間違いなくAPP18レベルです。
「・・・おい、今変な事考えてるでしょう?」
にしても口調まで女らしくなっちゃってまぁ・・・
「・・・今生の両親には恵まれたから、その、女の子らしく教育されましたのでそこはそれ、価値観とかも色々変わったので、自分自身と言われてもそりゃ違和感かもしれないですけど・・・あ!よく使ってるオカズとか言えますよ!!」
「えーと近所の爆乳お姉さんと深夜の逢引彼氏持ちのお姉さんに無理矢理誘われてしまって僕は・・・とか巨乳彼女とイチャイチャ〇〇〇それから・・・ってうひやぁっ!」
「・・・い、いきなり肩を掴まれるとその、今生では全く異性間の接触なんてなかったわけだし、大体驚くのも無理はない・・・ってえ?何?それどころじゃない?羞恥プレイは辞めてくれって?」
「・・・じゃーぁ、納得してくれた?」
貴方は全力で首を縦に振りました。
「言葉じゃなく、魂で理解出来たから・・・だから・・・!という奴だねぇ」
ちょくちょくオタク用語を挟みながら彼女は眼を細めながら話をします。
「公開処刑を辞めてくれって事ね?自分自身なんだから君が人には言えない恥ずかしい事も失敗も初恋も凡そ知られたくないと思う事の全ては知ってるよぉ」
クツクツと笑う声が響く、その声はまるで天使がベルを鳴らしてるように厳かでしかしからかいを秘めた小悪魔じみた魔性ささえ含まれていた。
「ああそれで・・・ね?」
「本題に入るんだけどぉ・・・異世界で、私と結婚してくれないかな?」
神様みたいな微笑みで彼女はそう言い放ちました。
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