太宰治。悪役令嬢になりました。

わたちょ

プロローグ

「はて、さて、一体これはどういうことなのかな?

 夢であればいいのだけどね」

 口に出しながら太宰はあたりを見ていた。やたらと広くそして豪華な部屋だ。落ち着いた色合いで統一されているが、装飾品から推測するに女性の部屋だと思われる。確実に言えるのは、つい先程そこで寝たはずの大宰の部屋ではないこと。

 でも目を開ければ目この部屋だった。

 あたりを見る。そうしてから己の体を見下しては吐息をつく。どういうことか大宰はきた覚えないフリルのついたネグリジェを着ており、またその胸には彼にあるはずのない両手で抱えても溢れそうなものがついていた。

 念のため揉む

「感触は本物だね。触っている方も触られている方も。

 普通に考えるとこのような状況は夢以外ありえないけど、ただどうにも私にはそうも思えない。夢ではないそんな気がするのだけど、どう思う?」

 太宰がふっと横を見ていた。そこにはわざと見ないようにしていた手の平サイズの人が浮いている。

「説明しなくても分かっていただけるなんて嬉しいです。その通りここは夢ではありません。あなたが普段くらす世界とは違う世界だと思ってください。

 今の貴方はそこで生きるアーク・ビオーナ様の中にいるのです。

 そして貴方にはこれからアーク・ビオーナ様として暮らしていただき、彼女を断罪される未来から救っててほしいのです」

 子供は機械的にそう口にした。まるでそういうことがプログラミングでもされていたようにその顔は口元以外動くことはなかった。

 はぁと太宰の口から吐息がでた。その目は天井を見上げ、そして己の体を見下す。

「それを私が断ることは」

「できません」

「そう。じゃあ、私はそれが済むまでこの体なのかな? もし救えず断罪された時はどうなるの」

「いえ、貴方の暮らしを奪うつもりはありません。貴方がこの世界で眠れば、貴方の世界でめざめます。また眠ればばこちらの世界で目覚めます。

 断罪された時についてですが、その時にビオーナ様は殺されます。そしてここでおった傷は貴方の世界でも貴方に影響を与えてしまいますので、貴方も死ぬことになるでしょう。すみません。僕らにはそれを回避することはできませんでした」

「なるほど」

 また太宰の口からの吐息がおちる。

「予想通り。毎日元に戻れるなら思ったよりはいい感じかな。

 何で私がと言いたい所だが、喚いた所で事態が改善されるとはないのだろう。となると……この娘について教えてくれるかい。性格や普段誰とどんな話をしているのかが分からないと成り代われない」

「……」

「もしや」

 半目になっていく目は子供のことを冷たく見ていた。無機物的な子供はその目をみても何も変わらない。だか太宰にはには伝わっていた。

「情報は何も無しかい。口頭で言えることだけでいいのだけど。このことの関係性や何を話せば良いのかは会話の中で掴めても、口調が分からなければその話ができないからね

 記憶喪失にでもなるか、口が使えなくなったことにするか……」

「申し訳ございません。

 彼女のことをずっと見つめてきておりますが、その分奴らのことをみてきております。彼女のことを話そうとすると奴らことを思い出し、冷静でいられなくなるため話すことはできません」

「ほう、機械のようなやつなのかと思っていたけど、そうでもないのかい」

「代わりにですが、元の世点に戻りましたら○○というゲームをしてみてください。

それはこの世界の一欠片。丁度ビオーナ様が断罪される時間が舞台となっております。

彼女のことを知ることのできます」

 なるほどと太宰は一つ頷く。そうして立ち上がっていた

「そんなものがあるのか。なら今日の所は散歩をしようか

 道案内ぐらいはできるよね」




ぱちりと目をあけた先に見えるのはいつもの天上だ。あの後成り代わることとなったビオーナの姿で子供の言う所の違う世界の中を歩き回った太宰は、大体どういう世界なのか掴むと一日を終わりにしたのだった

 これからは太宰治としてのいつもの一日が始まる。

 のだが、起き上がった太宰は、あ〜〜と低い声を吐き出していた

 朝の爽やかさなんてものは何処にもない。その目元には薄っすらとだが隈がついていた。

「なるほどね。動いているのは他人の体だけど、動かしてるのは私の頭と言うこと。

 折角久しぶりによく眠れそうだと思って眠ったというのに、全く眠れてないなんてね。否、体は多少疲れがとれてるかな??  

 これ、救出する前に私の体が壊れてしまいそうだね」

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