睨む女

しおとれもん

第1話

 

「睨む女」

第1章


「雷・いかづち」

 

「睨む女」


第1章


「いかづち」


大人の恋愛とはナニ?

結婚という金メダルを目標にしてそれを目指した二人三脚の仲良しレースの事なのかな?脇目も振らず、ゴールを目前にした時に不意にすれ違うイケてる男に振り向いてはいけないのかな?私は待たされ過ぎた。

結構複数の男に振り向いている・・・。

ついて行ったりもした事・・・、幾度となく有る。待たせる彼に当てつけた私。でも空腹のままだった。

それがどういう結果をもたらすのか考えもしないで、短絡的な私・・・・。

あんな恋なんてしなきゃ良かったのに結局私は女の身体を弄ばれて、日本の政治家に莫大な金を見せ付けた結果、メンタルを支配して行く狡猾なあの国の様に離婚という異次元の青空の下に誘き寄せ、しっかりと私を堪能した男。

それでも嫌いにならない煮え切らない,

わ ・た・し・・・。

ICUには宗像亮一(むなかたりょういち)が生命の危険に晒されて溶解剤を点滴していながら人工呼吸器を施され静かに横たわっていた。

男は微動だにしなかった。

そしてメラメラと、立ち込める憎悪が睨む女の怨念と為り、ロングストレートが蛇のように蠢き逆立つメドゥーサの様相を含め、静電気から磁力が生じて稲妻が走っていた。

地の底から絞り出したような重低音で「最後まで生きて生き抜きなよ!その惨めな姿を私の目の前に晒すまで!」

ビニールカーテンの外から睨み続けていた。

睨む女はつり上がった目尻も眉根に立てた皺も怒りと憎しみの鬩ぎ合いに立ち合う機会を持てた征服感に高揚していた。


黒豆病院。病棟は東西南北の順に並列して建てられていた。

各病棟には、採光を採るためのパティオが造成されていて手入れもしないで伸びきった芝生は約5センチ程度に成長したまま密生していたからかなりのクッション材に為っていた。

ヒューッ!ヒュル!吹いては止み、止んでは吹く、1階から超スピードで吹き上がりながらも4階に到達しては止む虎落笛(もがりふえ)の鳴る鋼鉄扉の表側にて院内通路側の扉には、関係者以外立ち入り禁止の看板が掲げられて幅広い通路では病院職員が忙しく往来していた。

黒豆病院では食事の時間は殆どこの光景が観られた。

職員用兼非常階段の4階最上段踊場から下り階段の踊場に男が乗った車椅子が一台、最下段の方を見下ろしていた。15段は有る。

しかも勾配は30%だ。

スーッ、ハァー・・・。一回腹式呼吸をした直ぐその後で「ヨシッ!」両足を駆って50センチ前進した!スライド電源をオンにしてモーターを始動させた。

 シュルシュルシュル~・・・。最速でシリンダ内の摩擦音がハウリングしていた。

車椅子の車輪が階段の一段目に落ち、そこから落ちるベクトルに任せて前傾姿勢を取り、車椅子の手摺をしっかりと握りしめる!

モーターの暖機が終了し地球の引力と回転数が最高潮に達したモーターエンジン!段鼻に車輪が当たり特別な干渉ノイズを発していた。

一段、二段とスローな降下を始めた。

次にガガガッガガタンガタン!と、自動で走り出した車椅子のサイドブレーキを解除!

丁度その頃、下階から階段を一段ずつ登って来る看護師の髙橋直美(たかはしなおみ)が上階を見上げて、「まだ20段は有るわね!」ふぅ~と、ダイエットの為にエレベーターを使わず自らの足で上った事を後悔し始めていた。

頭上で階段を叩く様なノイズに気付き上を見た。

しまった!階段の下段の向こう側は鉄筋コンクリート仕立ての壁だ!男は計算ミスを後悔していた!遅かった。

「ウアーッ!」は!男の叫び声に気付き顔面の前に両肘を上げ橈骨を頭上に着けて、ジェット機の緊急着陸の態勢の様に頭を抱えてギュッと目を瞑り背中を丸めて膝上に頭を近づけた!

叫び声?直美が見上げた途端、車椅子に乗った男が、車椅子ごと壁に吸い込まれて行くのが眼に入った!

「ちょ、ちょっと!」自殺?

「あれは常磐(ときわ)さん!?」確かに見た!

自殺なんてしないでよ~と、狼狽した声を上げ階段を駆け上がったが、男と車椅子が激突した壁には何の形跡もなく男が書いたと思われるであろう方程式のメモが落ちていた。

2.5×√3=7.5メートル。

「なんだろこれ?」立ち上げた擁壁に掛かる土圧の摩擦力が安息するセットバックの方程式だったが、土木業界に無関係の直美には興味がそそられなかった。


ICUには宗像亮一(むなかたりょういち)が命の危険に晒されて特別呼吸器を施され静かに横たわっていた。

そしてめらめらと立ち込める憎悪がその女の怨念と為り、長い毛髪が逆立つ程の磁力が生じていた。

最後まで生きて!生き抜きなよ!その惨めな姿を私の目の前に晒すまで!

ビニールカーテンの外から睨み続けていた。

高橋直美(たかはしなおみ)はつり上がった目尻も眉根に立てた皺も怒りと憎しみの鬩ぎ合いに立ち合う機会を持てた征服感に高揚していた。

黒豆病院2年前。

ヒューッ!ヒュル!吹いては止み、一階から吹き上がり4階に到達しては止む虎落笛(もがりふえ)の鳴る鋼鉄扉の表側院内通路は、関係者以外立ち入り禁止の看板が掲げられて幅広い通路には病院職員が忙しく往き来していた。

食事の時間は殆どこの風景が観られた。

職員用階段の4階最上段踊場から下り階段の踊場に車椅子が一台、最下段の方を見下ろしていた。15段は有る。

しかも勾配は45%だ。

一回腹式呼吸をした直ぐ後でヨシッ!両足を駆って50センチ前進した!車椅子の車輪が階段の一段目に落ち、そこから

落ちるベクトルに任せて、車椅子の手摺をしっかりと握る!ガガガガ!段鼻に車輪が当たり特別な干渉ノイズを発していた。

丁度その頃、下階から階段を一段ずつ登って来る看護師の髙橋直美(たかはしなおみ)が上階を見上げて、「まだ30段は有るわね!」ふぅ~と、ダイエットの為にエレベーターを使わず自らの足で上った事を後悔し始めていた。

しまった!階段の下段の向こうは鉄筋コンクリートの壁だ!「ウアーッ!」は!今の声?見上げた刹那、車椅子に乗った男が、車椅子ごと壁に吸い込まれて行った!

ちょ、ちょっと!「常磐(ときわ)さん!」駆け寄ったが何の形跡もなく男が書いたであろう方程式のメモが落ちていた。2.5×√3=7.5メートル。

「なんだろこれ?」


第2章


「リベンジ」


小難しい・・・チッ!舌打ちした刹那、西病棟の西側の小庭からザワザワガヤガヤと人々の喧騒が聴こえて来た。

急いで階段を降り小庭に出た直美は観た!

地面に叩き付けられて飴棒のようにぐにゃぐにゃに折れ曲がり原型を留めない車椅子が存在していていたが兼生の姿は無く遠方から常磐兼生の拡声器を通してがなりたてる

所信表明演説の声が聴こえていた。

「みなさんこんにちは!この度兵庫県県議会議員に立候補した常磐兼生です!

その目的は神戸市や芦屋市、尼崎市、姫路市等の防災工事をメインに県政を行って行きたいと想い立候補しました。

例えば何年か前、線状降水帯から豪雨が降った灘区で土石流が発生しました。防災工事を!と、叫ばれるなか県は、安全かつ合理的で安価な土石流止めの擁壁を設計して、地域住民に圧迫感を感じさせない県政でした。

その地勢を確認すれば一目瞭然ですがさんな事は尾首に出さず飄々とやってのけた県にリスペクトして、私は県で防災工事のスペシャリストとして、県政を執り行って参りたい次第です。どうか皆さん!常磐兼生を覚えて下さい。

私はそんな地区の危険性を調査して、事前に防災工事を執り行いたいと考えて居ります。

「貧すれば鈍する」と言われている様に事前調査の上、ローコストハイクオリティな防災工事にチャレンジして行きたいと思いますので、お住まいの裏山が崩れそうだ、川が増水して氾濫しそうな水位があるので怖い!

崖の崩落が始まって自宅へ迫っている等の不安案件があれば、遠慮なく私に相談して下さい!地盤調査の上、必要とあらば、公共工事を施工する様に取り計らいます。

そしてどうか皆さん!自宅を建てる時は予め地盤調査をして、ベタ基礎判定が出れば無難ですが、地盤改良と出たら地盤改良工事に費用は掛かります。表層改良ならば、そんなに高額ではなく表層を固めるだけで費用は低額です。

しかし、杭打ち判定となりますと鋼管杭だけでも一本20数万円から複数本打ち込まないと安定を得られませんから酷い時には20本前後の杭打ち判定となりますから、しかし皆さんあの東京タワーでも80メートルの杭打ち工事若しくは深基礎工事をしております。

何とか契約が欲しい住宅営業マンは、そんな付帯工事を度外視して契約を勧めて来ますが、自宅の足元を確かなものにする地盤調査判定を真っ向から受け止めて下さい!人の命は金では代えられません!どうか皆さんローコストでハイクオリティな防災工事を求めて下さい。そして高齢者や身体障害者に優しい兵庫県でありたいと願う常磐兼生ですが、私が当選した暁には兵庫県民の安心健やかな暮らしを守って行きたいと考えて居ります!

市県民税の有効利用を公約します!

ふうっ!遣り切った。時間を10時間後にしておいたから余裕があって集客準備も捗れた。聴衆は約5百人!この人数が投票数と為る訳はなく。例え一票にでも為ってくれればと謙虚な面持ちで後片付けに入った。

車椅子は破壊されて使用出来ない。何とか車椅子仕様のタイムマシンで日本国中各地域で自然災害を被る以前に脚を踏み入れれば、被災は最小限に留められる筈だ!


第3章


「見えない金」


防災工事の優先順位は?

・・・いつか発生するやも知れない表六甲の表層には、阪神大震災の爪痕が残る。無数のクラックがが大地震のレジェンドだった。必ず起こると言われている南海トラフ地震がトリガーとなる危険性を孕んでいる。表六甲の全層が崩れたらその麓に開かれた町ごと土石流にのまれる!これは、科学者や識者の唱える地震の二次被害は素人の常磐が幾ら市長や県知事に幾度となく起案しても、認可されないだろう。

そうならばいっそのこと、県議になれば市長や県知事にアポ取りも容易に出来る!だから県議に立候補したというわけだ!

「何で立候補されたのですか?選挙活動費用もままならず、例えば新聞折り込みチラシにしても常磐さんの顔姿はカラーにして他は白黒刷りでB4サイズで一枚20円だとして、配達全地域で15万世帯だったなら単純計算で300万円だからね。」街宣カーをレンタルしてマンスリーで205万円、選挙ポスター貼り付け1ヶ所400円でまさか1ヶ所だけポスターを貼る訳でなし、千ヶ所も2千ヶ所も貼る訳で、その分を計算しなくてはね?ザッと一千万円程度でしょうか・・・。」

国政と県政。規模は違えど、降りかかる費用は県会議員で約3千万円、国会議員で約3億円と、いう訳だ。


第4章

「一縷の望み」


その頃高橋直美は恋の花が満開だった。

咲き乱れていた。

「もう寂しくは無い!亮一さんが居るから。」両手に直美の乙女の花束を持ち澄んだ瞳はキラキラと煌めいていた。

いつまで私の事を待たせるの?

いつまでも有ると思うな金と恋人!

「もう別れます!待たせ過ぎよ・・・。」決意をした女はゴジラよりも強く死なない。

直美は目の前のメガネを掛けた亮一を選んだ。

彼は離婚予定。一緒に居ると落ち着く。一人にさせない、季節の行事には直美を誘う。彼は何時も新しい。抱かれる度に体温を共有させてくれる。

今までは返って来ないメールを打っては自分で言い聞かせ納得していた。


神戸ハーバーランド。

潮風が心地好い。

二人の間隙をすり抜けて行く。

まだ秋の装いのままだったが神戸港の海は穏やかで波という波は無く凪状態だった。暖冬という季語が良く似合っていた。

49年前に入港したクイーンエリザベス号の乗組員はハーバーランド造成工事前の現場を観ている筈だ。

「亮一さあん!写真撮ろうか!?」大きめの声でなければブルースカイに抜けて行く気がしていた。静かな昼下がり、頭上の太陽と周りの空模様は季節の先取りをしていて、空はもう真冬だった。

「僕は良いよ、ナオを撮って上げる。おいで!?」護岸フェンスに凭れていた亮一が背中を離して二、三歩直美に近付きカメラを奪った。

黒い革コートの裾が翻ってまるでハリウッド映画の様でカッコイイと思っていた。

「シャッターを押すだけなね?」一人でこう言いながら直美から離れてファインダーを覗く。

直美のバックは巨大な観覧車がゆっくり回りながらこちらを観ていた。一縷さんが私達を観ているかもね・・・。

浜風に吹かれながら脳裏の片隅で考えていた。

シャッターを押した亮一が顔をカメラから外して「今、何か考えてる?南海トラフ地震の大津波がこっちへ来たらどーしよう?って考えてんじゃ無いの?」にやけながら直美の方へ歩み寄った。

「良いお天気だなって・・・。」亮一を見上げながら笑った。

「嘘つき。」

カメラを渡しながら半笑いで呟く。

超能力者なの・・・?

差筋が寒く為ったが、先程から選挙演説の街宣カーのスピーカーからかなり犯則気味の大音量の選挙演説が流れていたが、亮一の言った南海トラフ地震の大津波は、大阪・和歌山で34メートル、神戸で5メートルの津波に襲われると言う。

「5メートルの津波と言えば、JR三宮の鉄橋スレスレの波が来るし、新幹線の新神戸駅の足下スレスレまで波が及んで来る筈。」

「今来たら死ぬね。泳げないもん」

「オ?」

「ナオってば!どーした!?」怪訝な面を浮かべて「今日泊まる?神戸に。」「それとも帰ってキラキラ行こうか!?」しばらく考えてコクりと頷いた。このまま神戸にお泊まりして、神戸の夜景を観てみたい100万ドルの夜景だもの、でもイベントが一杯の亮一さんとキラキラに行きたい!

としたら・・・亮一さんとキラキラに行きたいの勝ちね!「岐阜に帰る、キラキラに行こう!」亮一の言葉が耳に入った刹那、だから気の置けない男!だから好きになっちゃう!目一杯笑顔になった!屈託の無い笑顔だった!

亮一が直美の笑顔を観たとき亮一の腹の中にあった怪訝な思いは、秒殺で吹き飛んでいた。

岐阜のキラキラが終わり、寂しくないクリスマスの朝・・・。


第5章


「優しさの代償」


「ねえナオちゃん!驚かないでよ!?」

「エリ、どーした?」直美の幼馴染が日勤の朝、息咳切らして緊急事態だと言い、黒豆病院ナースセンターに走り込んできた!

「これ!観てみ!」

直美に差し出した彼女のスマホのディスプレイには、「ご近所さんの旦那に出逢おう!」という出会い系サイトに顔写真とペンネームで、メガネのシンちゃんの名前でバツのある元人妻を募集していた。

愕然とする直美!

口に手を当ててオロオロする幼馴染!

昨日までのホクホク感は何処へ行ったんだろう?

直美の周辺は昨日の高気圧とたった今、急激に成長を遂げた低気圧との気圧の谷が出来ていた。

直美が夕方のウェザーニューズに出てくる天気予想図を想い浮かべて

狭い等圧線が出来たせいで、吹き荒ぶ真冬の嵐の風が直美の顔にダイレクトに殴り掛かっていた。命知らずの嵐だった。

「私と一緒の境遇の人を探してる!?出会い系サイトで?・・・、クォおのオオ~裏切り者めーッ!」般若と化した直美の怒りと失望は境地に達していた。「アメリカの都市ロサンゼルスの語源はスペイン語の発音で、ロサンヘレスから来ているんだ。」

「マゼランはイタリア人でね、スペイン王朝から援助されてあらゆる海の冒険をやったんだ、その時にアメリカ大陸の南端にマゼラン海峡を発見したし、インド航路も発見している。」優しい口調に博学醸し出していた。のに・・・。

優しさの代償は、時に反比例のしっぺ返しをお見舞いすると、決まっていた。そのダメージはボディブローをワンツーでマトモに食らった時と同じで息子が交通事故に遭い死ぬほど心配してやつれた時と等しかった。直美の男性不審は酷くスレ違い様に男の気配が漂えば即反応して嘔吐した。窮極だった。もう彼の声や彼が打ったラインのテキストを読むのが苦痛で、思案の末ブロックした。

しかし、直美の潜在意識は心の襞に絡まった亮一を全て摘除するのは困難を極め漂う亮一の面影を求めて身体が無意識に動いていた。まるで夢遊病だたった。

抱き締められたら反射的に顎が上を向く。キスされ易くするためだった。全て身体で覚えていた。

今思えば、手前勝手な振舞いが多かった。

一縷の時は、連れ子の心配を親身になって良く世話を焼いてくれていた。

窮地に陥れば窮地の状態の人が良く分かるし考えも理解出来る。気が付けば良く行く神社の境内の前に立つ、

「一縷さんな事業が忙しかったのね・・・、ごめんなさい。」はあーっとタメ息を突けば全てが終わる事があっても良いのに、神様は何て意地悪なの?

両手を合わせて眼を閉じた。

深い深い溜め息を突いた後で、閃いた!と叫び一度賽銭箱の中を覗き二百五十円を投げた。刹那に一礼二拍手、二礼して小走りに参道を駆けて常盤兼生が所信表明演説をしている沿道へ行き演説を終える時間を待ち、「男と出逢う前にやり直したいから二年前に連れて行って!?」と懇願し、「スーパー看護師のナオちゃんが言うなら仕方無いか!」と、時間旅行へ旅立った!

黒豆病院。

車椅子に座る直美は、バックダイヤルを2年6月前に合わせた!

「後悔しないね?」常盤が釘を差す!4階階段の踊り場にて虎落笛を背後に常盤が踊り場を蹴った!ガタン!車椅子の車輪が傾き下り階段の一段目の段鼻に干渉してノイズが響いた。

大きく傾いた車椅子から落ちそうになる直美は全身を強張らせ、手摺にしがみついた!顔は俯き歯を食い縛る!ガタガタ!ガタガタガタガタ!「壁だ!」常盤が叫んで直美が顔を上げた!直美の眼前に白い霧の様なものが漂い湿度が高く為って意識が遠退いた。

「ナオちゃん!?」誰かが肩を揺する?誰?変態か!「止めろこの野郎!」右の裏拳が炸裂した!「常盤さんごめんなさい!殴っちゃった?」後ろを振り向いて鼻を押さえた常盤が目に入り直ぐ様ハンカチを差し出した。

刹那、遠くから救急車のサイレンが近付いて来た!職務上、救急を当院が受け入れた事を察知した直美は、身体が救急受け入れ搬入口まで急いだ!

途中、直美が車椅子に乗って常盤が、車椅子を押している事に気付き車椅子を降りて一緒に走る!

ストレッチャーに仰向けで寝ている患者を見ると、なんと裏切り者の宗像亮一だった!「なんで?」両手を頬に当てて叫んだ!「亮一さん!」左手の4指が欠けていて出血が夥しかった!

止血はしてあるもののまた出血は続いていた。白い包帯が赤く染まり四つの赤い円が出来ていた。

亮一の顔面は真っ青で、大量出血が有ったものと推察される!

一人の救急隊員が直美に気付き、ツカツカと近寄り耳元で「実は大阪で極道の妻に惚れられて、その旦那が組幹部だとの事で、舎弟に裁断器で左手の親指を残して4指を切断されて、極道の妻が救急に電話してきたんですがね?探しましたが小指が見当たりません。」

極道の制裁は無惨を極めた!改めて観察すると股間にも出血が見られた!「二度と悪さしない様にあそこをチョン切られて、切られたぺニスはまだ見つかっていません。」

救急隊員の中に亮一の同級生が居て親切にも直美に教えてくれた。

「あいつはバツの付いた元人妻が好きで、抱くと待ってましたと言わんばかりに積極的に攻めてくるからこちらも性欲の捌け口になって大満足だよってスケベなかおして笑ってたよ。」聴きたくは無かったのに、余計な事を・・・。疲れるのよね

長い頭髪がザワザワと蠢き顔面は鬼の形相をしていた。

透明のビニールカーテンの外側に立ったまま瀕死の亮一を睨み付けそのベクトルはビニールカーテンを溶かせるほど怒りの熱量は、あった。

「オカマとして生きなさい!人は平凡に生きて家族に囲まれて死んで行くんだよ、あんたみたいに不幸を背負った女を欲に任せて抱いてたら鬼畜以下なんだよ!」呪いの呟きが終わってもまだ睨む女は亮一の業を許さなかった。(了)

















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睨む女 しおとれもん @siotoremmon

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