第17話
新たにマンションの管理人を引き連れ、二人は一日ぶりに園恵の家の前まで戻って来た。変化があるとすれば、昨日は空だった園恵宅のポストに配達物が届いていた事くらいだ。
管理人「ホレ開いたぞ入れ入れ」
満「ありがとうございます。――ソノー? ……おーいソノー?」
引かれたままのカーテンの隙間から差し込む日光にやんわりと照らされた薄暗い室内。静寂の中に、蛇口からの水滴がシンクへと打ち付け等間隔で鳴り続けている。
満「……私奥に行くからゲンは手前の部屋から隅々まで見てきて」
玄「は、はい!」
人感センサーに出迎えられた二人は家主を探して侵入。玄関から廊下、トイレと照明が点灯していく中、この何処かにいるであろう娘分を一刻も早く視界に収めたいと、満の車椅子操縦にも力が入る。
廊下の角を曲がった彼女の前に、手招きするかの様に半開きとなっているドアが一つ現れた。それは脱衣所への入り口。付きっぱなしの照明が半開きのドアから覗けた満は気が気でなかった。
片足で雑にドアを蹴り開き彼女は脱衣所へと立ち入る。脱ぎ捨てられ洗濯されぬまま籠に放置された二日前の衣服に、回り続ける換気扇。そして床には乾き切った血痕が点々と、浴室で倒れる園恵の元まで続いていた。
浴室の床は彼女を中心に赤黒く染まり、ほんのり赤みを帯びた温水は浴槽一杯に。それらがどの様にして赤くなったのかを、倒れている園恵の左腕に幾重にも刻まれた切り傷が告げていた。
満は車椅子から立ち上がり、そのまま倒れ込む様にして園恵の元へと近寄る。血色は青ざめ、沈痛を湛えたまま意識を失っている園恵。彼女が繰り返しその名を呼ぶも反応が返される事は無く、悲愴に満ちた声は血に勝る紅となって浴室を彩ったのだった。
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