夏の訪れ

文学少女

初空

 6月の中旬、清らかで、美しい、澄んだ群青の青空が広がっていた。空は、下から上になるにつれ、深い群青の色に染まっていた。そのみずみずしい空には、膨大に、ふわふわと膨らんだ、雲が浮かんでいた。ある雲は、煙のように薄い尾を引いていた。雲は、どっしりと、横たわり、ゆったりと、動いていた。太陽の光を浴びた、雲の上層部は、眩しいほどに、白く輝いていた。雲の底は、青みがかった淡い灰色だった。その雲の底が、どこまでも果てしなく、遠くに向かって連なっていた。

 気温は三十度に上っていた。容赦なく日差しが降り注ぎ、地面を照り付けていた。僕の肌は、太陽の光を浴びているのだと、そう思える日差しだった。ひりひりと、肌が、太陽の光を感じた。眩しい光に照らされた世界は、白く、輝いていた。木々も、ビルも、白い。

 蝉が一匹、鳴いていた。ただ一匹だけが、ジー、と、懸命に、鳴き続けていた。果てしなく広がる、みずみずしい群青の空。白く輝く景色。蝉の鳴き声。

「夏だ」

 と、僕は感じた。

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夏の訪れ 文学少女 @asao22

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