今日も元気にポーションを作ります
ダレンの事は全て終わった後に師匠経由で処分を聞いた。
ダレンはもう、王都にいない。
降格後異動になったと聞いた。
ダレンとは、もう会えないじゃない。もう会わない。会いたくない。
もう終わった事だ。
私は処分の重さは分からないけど、きっと王国軍団隊員が大通りで起こした不祥事の見せしめの意味もあるんじゃないかと思う。慰謝料に、降格、異動、接近禁止。
異例の早さの処分だ。
きっと今までにも私以外に辛い思いをした人は沢山いる。浮気男への戒めもあって欲しいと思う。
勿論、師匠の御機嫌取りの為に軽い処分は出来ないと言う事もあっただろうが。
きっと、私は師匠やランさんが言うように運が良かった。
浮気された事じゃない。その後だ。私を守ってくれた師匠や姉弟子がいた。
私は仕事で何倍にもして返すと錬金釜に誓った。
そして、お金は裏切らない。
昨日、私の口座には400,000ルーンが振り込まれた。
内訳が100,000ルーンがダレンからの怪我の慰謝料。
100,000ルーンが第二軍団による監督不行届きの慰謝料。
200,000ルーンが王室からのお見舞い金らしい。
お見舞い金、多くない?
第二軍団の隊長と王国軍団のトップの大隊長、宰相から手紙も添えられていた。
なんか怖い。
ちなみにこの金額は、師匠と王国軍団、王宮で話し合った事らしく私からの異論はもう認められない。
そして怪我の事に関してはこのお金を受け取る事で許して欲しいとの事だった。示談金だな。
師匠に言わせると、「ケチ臭い」らしい。
話し合いの時に、腕がすぐに治ってる事等から過去の判例を見てあまり大金は積めないと言われたと言っていた。
師匠は、「表に出す金を積もうとするから少ないんだ。阿呆だな。しみったれだな。あいつらのポケットマネーを出せばいいんだよ。裏から金回せ。誠意を見せろ」と言っていたが、もう言ってる事が裏通りの人なので、怖いので聞かなかった事にする。
実家やダレンの家からも、私の魔鳩便に驚いて、「急に一体どういう事なのか」と、手紙が届いたが師匠からの手紙が届いた後は「私の好きにするといい。師匠に宜しく」と返事が届いた。ダレンの家からは謝罪の手紙と、特産品のチーズが大量に届いた。
チーズは師匠とランさんと美味しく頂き、ご近所にも配った。皆喜んで食べてくれた。
初めはダレンの実家から貰ったチーズに複雑な思いもあったが、ランさんが「食べ物に罪はない」と言ったので、それもそうかと思った。悪いのはダレンだ。ダレンのお母さんもお父さんもいい人だった。チーズに罪はない。
ダレンと別れた時は勢いと、許せない気持ちで、一杯だった。でも、時間が経つと、ダレンが私に言った言葉一つ一つを考えたりする。言葉は小さな棘になっていつまでも抜けない。
ジクジクと胸が痛む。
私が忙しくて会わなかったのが悪かったのかな。
ダレンの言葉通りにしてたのがいけなかったのかな。
私だから浮気されたのかな。
ダレンの事は好きじゃない。
それでも、気持ちの整理はついてない。
浮気をされたという事が、裏切られたという事が頭の中をぐるぐる回る。が、もう過去の事と割り切るしかない。
王宮の配達はランさんに甘えている。
今はまだ軍団の隊服も見たくないので、王宮の薬の受注配達はランさんが代わりに行ってくれている。
「気にしないでいいよー。配達の後、散歩したり、おやつ買って帰っていいなら、私おつかい係ずっと引き受けてもいいよ?」とまで言ってくれた。
ランさんの胸は優しさが詰まっている。
きっと時間が解決してくれる。
だから、私は、この気持ちを浄化する為、
うおおおおおおおおお!!!!
ちくしょうめええええええ!!
浮気男は滅びろぉぉ!!!!!
と、ポーションを作っていたら新しい薬を思いつき、そして作る事が出来た。
浮気する男なんてクソくらえだ!と思いながら薬を作っていたら出来た脱毛剤だ。
ハゲろ!ハゲろ!と思いながら、ランさんに教わりながら材料を分別し調薬したら出来た。
まあ、本当は浮気男ハゲ薬なのだが、お肌をツルツルに保ちたい麗人達に人気の脱毛剤となった。
「おお。なかなか売れるな。浮気男ハゲ薬。なかなかいいな」と師匠からも褒めて貰えた。
ランさんからも、「次は何つくるー?」とニコニコして言われ、私のやる気はみなぎった。
次はワキが臭くてたまらなくなる薬を作ろうか。口臭でもいい。それともオナラが止まらなくなる薬がいいのか。太りやすくなる薬がいいか。ぶよぶよ薬。
浮気男クサクサ薬か浮気男ぶよぶよ薬を作ろうと、本を眺め、材料のメモを取っているとカラン、とドアベルが鳴りお客さんが来た。
「いらっしゃいませ」とランさんが接客をしている。
私は錬金釜の近くにいたのでどんなお客さんか見えなかった。
「こんにちは。お肌がツルツルになる薬があると聞いたのだけどあるかしら?」
ん?この声は?
私がちらっと錬金釜から顔を出し、お客さんを覗くと私の部屋に来た綺麗なお姉さんだった。
あ、やっぱり。あの綺麗なお姉さんだ。
「はいありますよー。ただこれは肌のキメを整えるものではなくて、産毛処理や、気になる場所の脱毛に使う薬なんです。まあ、毛が薄い方でも、産毛が無くなるだけで、肌が明るく綺麗に見え、ツルツルになるのでそう言われてますが」
「まあ。そうなの?でも試してみたいわ。おいくらかしら?」と購入していた。
「まいどどうもー」とランさんがお金を受け取り商品を渡していた。
「脱毛剤なので、気を付けて使って下さい。注意事項は中に書いてますのでしっかり読んで下さいね」と言って渡すと、「ええわかったわ」と言っていた。
綺麗なお姉さんは脱毛剤を買うのか。そしてさらに綺麗になるのか。
相手がいない私には必要ないがな!!!
ふははははははははは!!!!!
私は材料を分別しながらノートにメモを取り、心の中で、胸を大きくする薬を作ろうか。と考えた。
ふん、男なんてまっぴらよ。
もう、泣いてやるもんですか。
そうぶつくさ言ってる私を、ランさんが見守り、師匠がニヤニヤ笑う。
「さ、やりますかバンバン作りますよ!!」
名無しの薬局、魔女見習い、ロゼッタ・ジェーン。
今日も私は元気よくポーションを作ります。
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