私たちの百合は国防です! ~壊獣災害対策庁・魔法少女作戦群~

いち亀

ふたりは学生、その使命は……

 ヴァリリア聖女学園には、魔法への適性を持つ少女たちがシマキト皇国の全土から集められる。彼女たちは切磋琢磨しあいながら、皇国最高峰の責務と栄光を背負う魔法技師を目指している。

 特別な才能を持っているとはいえ、年頃の少女たちの集う学び舎である。喜怒哀楽と好き嫌いの本音と建前が、華やかに密やかに交錯している。


 例えば、昼休みの教室。 



「ヒ~ナちん! ご飯たべよ!」

 級友のユイコに呼ばれ、ヒナツ=アカシナは顔を上げる。

「いいよユイちゃん、中庭でいい?」

「だね、いこ!」

 生徒たちで混雑する廊下の先、独特のオーラを放つ一名。

「お、ミユキ様じゃん。ヒナちん、声かけなくていいの?」

「今はいいよ、どうせまた会うし」


 ミユキ=シモザキ。とても16歳には見えない怜悧な美貌と知的な言動で、入学当時から大きな話題を呼んでいた生徒だ。同学年のヒナツたちもたまに授業で一緒になるが、座学でも実技でもやっていることが高度すぎて怖いくらいだった。

 そしてヒナツには、さらに特殊な接点があった。


「じゃあヒナちん、あんまりミユキ様と上手くいってないんだ?」

 中庭で弁当を食べている間、ヒナツはユイコに訊かれる。

「そんな険悪って訳じゃないけど……こう、ミユキと仲良くするのがあまりにも演技っていうかさ」

「そもそも演技だもんね。けどヒナちん、大体誰とでも仲良くなれるでしょ?」

「っていう自信はあったんだけどね、とにかく厳しいんだよあの人……危ない現場だから仕方ないんだけどね。あたしはアホだし」

「ウチはアホなヒナちんも愛してるよん」

「きゃ、ユイちゃんたら大胆……いやアホなのは否定しないの!?」


 などとふざけている、平和な昼休みを。

 校内放送のけたたましい警告音が引き裂く。

壊獣かいじゅう災害対策庁より、ドドラ上陸警報が発令されました。ドドラ上陸警報が発令されました」


「うっわ、来ちゃった」

 ヒナツは呟くと、食べかけだったサンドイッチを一気に口に放り込み、ユイコが差し出してくれた牛乳で流し込んだ。


 校内放送は続く。

「一般生徒は速やかに教室に戻り、避難方法について担任の指示を受けてください。生徒会ならびに壊対庁に所属する生徒は、それぞれの持ち場へ急行してください」


 ユイコは前者、そしてヒナツは後者である。

「ユイちゃん、あたしの荷物まとめといて」

「了解、ヒナちん今回ローテ?」

「だね、まあ大丈夫でしょ」

「うん――無事に帰ってきてね、約束!」


 ヒナツとユイコはぎゅっと抱き合って、それから逆方向へと早足で向かう。

 職員室へと急ぐヒナツは、道中で相棒となる彼女と合流。内心の緊張に蓋をして、努めて元気な声を出す。


「今日もよろしくね、ミユキ!」

「ええ――今日も無理はしないでね、ヒナツさん」

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