第9話 ゲーム配信

「動画といえば、ゲームだろ」ということで、一応試してみることにした。


 なにより中間テスト後で、ふたりとも息抜きをしたかったのである。


「でも、星梨セイナおばさん。再生数稼ぎに関しては効率悪くないか?」


「若者は、そういうこと考えなくてOK。動画撮影が楽しいって気持ちの方が大切だから」


 毎日動画をアップするのだ。最初から完璧な動画を目指すと、いつまでたっても完成しない。


 再生数などを気にしながらの作業は、慣れてきてからでいいという。


「だから、快斗カイト夢希ムギちゃんも、楽しんでちょうだい」


 おばさんがそこまでいうなら、楽しくゲームをさせてもらうとするか。


「夢希は、どんなゲームが好みだ?」


「ゾンビゲーはちょっと……」


「怖いのが苦手なのか?」


「いや。敵が代わり映えしないのが、しんどい」


 バトルは好きだが作業ゲーはイマイチ、という感想だな。 


 対戦ゲームより、みんなでできるゲームがよかろうと思ったので、建築ゲーにチャレンジしてみた。


 インディーズが出している本家ではなく、伝統RPGを出し続けているメーカーの作品を遊ぶ。


 これなら難しい設定なしで、二人で協力できる。


「オレが戦闘を担当するから、ムゥは建築を頼む」


「わかった。それでいこう。カイカイ」


 雑なオレが建物建築なんて担当したら、色々とメチャクチャになりそうだ。夢希の建築を邪魔するモンスターを狩ることにする。


 1Pのオレが「カイカイ」、2Pの夢希は「ムゥ」である。そのままだな。

 整地を終えて、ムゥが石を並べていく。基礎を作っているようだ。

 オレはその間に、ムゥの作業を邪魔する魔物を蹴散らす。スライムだろうがコウモリだろうがやっつける。数が多い。


「湧き潰しが完了したぞ、カイカイ」


 どうやら、フィールドを「部屋」としてゲームに認識させると、モンスターが湧かなくなるようだ。家を立てる予定がない場所も、部屋として処理していく。

 魔物が出なくなってきたので、オレも作業を手伝う。石を積む簡単な仕事程度だが。

 本命の場所以外のフィールドにも、数か所部屋を作る。ひとまず、湧き潰しは完了した。ちょっとした村が、完成している。

 あらかた進んだところで、ムゥが行き詰まる。

 オレとしては、結構おしゃれな村だと思うのだが、また景観に納得していないらしい。


「ダンジョンにレア素材があるらしい。取ってきてもらいたい。その間に、作業を終わらせておくから」


「よし。行ってくるぞ、ムゥ」


 ダンジョンでは、オレが先頭になって戦う。


「カイカイ、ダンジョンでは湧き潰しができないみたい」


「わかったぜ。素材を手に入れたら、とっとと帰る」


 戦闘ばかりしていたから、オレのレベルは結構上がっている。

 と思っていたら、ゴーレムが思っていた以上に強い。


「加勢しようか? 魔法のほうが役に立つかも」


 ムゥが、作業の手を止めようとした。なにかの設備を作っているらしいが。


「いや、やらせてくれ。お前のほうが役に立っているからな。オレにも花を持たせてもらえると助かる」


「じゃあ、お願い」


「よし、こんちくしょ!」


 ヒットアンドアウェイで、どうにかボスを撃破した。 


 ダイヤモンドを、手に入れる。


「これがレア素材でいいんだな?」


「OKOK。こっちも準備完了だ」


 ムゥの方も、作業が終わったらしい。


「おおおお! これはすごいな」


 ムゥが作っていたのは、教会だった。


「これで、結婚式が挙げられる。ゲームの中でだけど」


「え、ムゥ?」


「許嫁だから、ゲームでも結婚する」


「そ、そうか。じゃあ結婚式あげるか!」


 オレは、ダイヤモンドをムゥにあげる。


 たったそれだけのことだ。しかし、なにか感慨深いものはあった。


「ゲームなのに、めちゃくちゃ緊張した」


「オレもだ。ゲームでこんなにドキドキしたの、初めてかも」


「気を取り直そう」


 気分を落ち着かせるため、星梨おばさんにススメられたFPSを試してみる。


 ふたりとも、一分もかからないうちに死んだ。

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