暵赫

@yuzu_dora

第1話

公園

ガックリと肩を落とし、しょぼくれている初老の男がベンチに座っている。

そこに髭面の男がやって来る。


「どうしたの?」


男、髭面に白い目を向けベンチを離れる。

髭面、そんな男を軽快なステップで追い駆ける。


「な……何なんですか!?」

「なぁーんかさ、おじさん放っておけないなーっとね。」

「結構です。」

「何があったのか当てても良い?」


男、走って逃げようとする。

しかし、足は動かない。

男、周りを見渡す。


時間、人間、全てが止まっている。

そんな中、近付いて来る髭面。

男の膝が笑いだす。

髭面、軽快ながらもゆっくり近付く。


「ちょっと待ってよぉ。」

「こ、これは何だ!」

「俺のちょっとしたサプラーイズでぇす。」

「何が目的だ!金なら無いぞ!」

「だろうね。」

「……。」

「リストラされたんだろ? いや、懲戒免職と言った所かな。」

「……笑いたきゃ笑え。」

「最近の人間はヤワだもんなぁ。すーぐ体罰だ!パワハラだ!って喚き立てる。」

「そう、そうなんだよ!」


髭面、優しい笑顔で男を見つめる。


「……俺は少し子供に仕事を頼んだだけだ。先生に頼まれたら断らないだろ?

普通。」

「だよなぁ。」

「それをちょっと叱ったら体罰だとか言いやがって。」

「酷いよなぁ。」

「若い奴らも面倒臭がって上の言いなり。」

「何だかなぁ。」

「正直、周りのおばさん連中の方がタチ悪いぜ?」

「そうなのか?」

「気に入らない事があると人を小馬鹿にして、ネチネチネチネチ嫌味言いやがる。

それは良いのかって話だよ。」

「だよなぁー。ちょっと手が出たくらいで。」

「全くだ! 俺達の時代じゃ当たり前だったんだ!」

「おじさんの前にやらかしちゃった若いのは助けたの?」

「それは……。」

「……。」

「顔を触って振り向かせるのはセクハラってヤツだろ。」

「手が出るのはパワハラだろう?」

「軽いゲンコツだ。」

「ふぅん。」

「何だよ。結局責めに来たのか?」

「いや、何となく気になっただけー。」

「……。」

「まぁ、ドンマイだよね。」


暫くの沈黙

髭面、何かを思い出した様子。

男、訝しむ。


「そんなあんたに頼みたい事があったんだった!」

「……その前に座らせてくれ。」

「おぉ、そうだった!」


髭面、奇妙な踊りをする。

周りの雑踏が動きだす。

段々と大きくなる雑音にふらつく男。


「大丈夫か?」

「あぁ。」

「早速、本題に移るぜ。」

「おう。」

「俺は未来から来たんだ。」

「そうか。」


髭面、目を丸くして男を見る。

男、そんな髭面を不思議そうに見る。


「さっきのがあったら、もう驚かんよ。」


髭面、ガックリ落ち込む。

男、笑う。


「おっ、やっと笑ったな!」

「……。」

「俺は嬉しいぞ!」

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