暵赫
@yuzu_dora
第1話
公園
ガックリと肩を落とし、しょぼくれている初老の男がベンチに座っている。
そこに髭面の男がやって来る。
髭
「どうしたの?」
男、髭面に白い目を向けベンチを離れる。
髭面、そんな男を軽快なステップで追い駆ける。
男
「な……何なんですか!?」
髭
「なぁーんかさ、おじさん放っておけないなーっとね。」
男
「結構です。」
髭
「何があったのか当てても良い?」
男、走って逃げようとする。
しかし、足は動かない。
男、周りを見渡す。
時間、人間、全てが止まっている。
そんな中、近付いて来る髭面。
男の膝が笑いだす。
髭面、軽快ながらもゆっくり近付く。
髭
「ちょっと待ってよぉ。」
男
「こ、これは何だ!」
髭
「俺のちょっとしたサプラーイズでぇす。」
男
「何が目的だ!金なら無いぞ!」
髭
「だろうね。」
男
「……。」
髭
「リストラされたんだろ? いや、懲戒免職と言った所かな。」
男
「……笑いたきゃ笑え。」
髭
「最近の人間はヤワだもんなぁ。すーぐ体罰だ!パワハラだ!って喚き立てる。」
男
「そう、そうなんだよ!」
髭面、優しい笑顔で男を見つめる。
男
「……俺は少し子供に仕事を頼んだだけだ。先生に頼まれたら断らないだろ?
普通。」
髭
「だよなぁ。」
男
「それをちょっと叱ったら体罰だとか言いやがって。」
髭
「酷いよなぁ。」
男
「若い奴らも面倒臭がって上の言いなり。」
髭
「何だかなぁ。」
男
「正直、周りのおばさん連中の方がタチ悪いぜ?」
髭
「そうなのか?」
男
「気に入らない事があると人を小馬鹿にして、ネチネチネチネチ嫌味言いやがる。
それは良いのかって話だよ。」
髭
「だよなぁー。ちょっと手が出たくらいで。」
男
「全くだ! 俺達の時代じゃ当たり前だったんだ!」
髭
「おじさんの前にやらかしちゃった若いのは助けたの?」
男
「それは……。」
髭
「……。」
男
「顔を触って振り向かせるのはセクハラってヤツだろ。」
髭
「手が出るのはパワハラだろう?」
男
「軽いゲンコツだ。」
髭
「ふぅん。」
男
「何だよ。結局責めに来たのか?」
髭
「いや、何となく気になっただけー。」
男
「……。」
髭
「まぁ、ドンマイだよね。」
暫くの沈黙
髭面、何かを思い出した様子。
男、訝しむ。
髭
「そんなあんたに頼みたい事があったんだった!」
男
「……その前に座らせてくれ。」
髭
「おぉ、そうだった!」
髭面、奇妙な踊りをする。
周りの雑踏が動きだす。
段々と大きくなる雑音にふらつく男。
髭
「大丈夫か?」
男
「あぁ。」
髭
「早速、本題に移るぜ。」
男
「おう。」
髭
「俺は未来から来たんだ。」
男
「そうか。」
髭面、目を丸くして男を見る。
男、そんな髭面を不思議そうに見る。
男
「さっきのがあったら、もう驚かんよ。」
髭面、ガックリ落ち込む。
男、笑う。
髭
「おっ、やっと笑ったな!」
男
「……。」
髭
「俺は嬉しいぞ!」
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