ボススライムは裏技でワンパンK.O!

「そっちに行ったぞ!」


「倒したわ!」


 今、スライム平原ではスライムの大量虐殺が行われていた。


 スライムが凄い速度で逃げるが、【神速】を使いたい放題の俺らからは逃げられない。


「ピギッ!」


「これで15体目か……」


「そろそろ良いかしら?」


「そうだな、スライムゼリーはこんくらいあれば良いだろ」


「良かったわー、初クエストクリアね! 本当にありがとう!」


「良いさ、俺だって初クエストなんだから」


 本当は初じゃないけどな。


「それじゃあ帰りましょ」


「テレポートで良いか?」


「……ええ」


 うわー、めっちゃ嫌そうな顔してる。


「嫌なら一泊二日の野宿だ」


「え!? そんなここ遠いの!?」


「逆に知らなかったのかよ!」


 そう言った時、ズゥゥンと地響きがした。


「な、何かしら?」


「……まさか!」


 この地響きには聞き覚えがあった。


 俺がまだインワドを始めて一週間くらいの超初心者の時に、ソイツと出会ってトラウマを植え付けられた。


「な、何なの!?」


「ボススライムだ」


 スライムだが、かなり強いモンスターの内の一体に入り、滅多に出会わないレアモンスターなんだが……運が少し悪かったか。


「どうにかして倒すか……」


「えぇっ!? 倒すの!? あれを!?」


 そうルリカが指さす方向には、クソでかいスライムが猛スピードでこっちに向かって来ていた。


「ああ、あれを倒す」


「どうやって!? 私のスキルじゃ無理よ!?」


「安心しろ、俺のでも無理だ」


「そんなぁ!?」


【麻痺付与】とかそういうデバフ系は図体がデカい敵には効かないからな。


 どんどんと近づいて来て、地響きも大きくなってくる。


「ピィィィィギィィィィ」


 そしてボススライムが凄い野太い鳴き声を発した。


「こっ、怖っ!」


「この程度でビビってちゃあ冒険者なんて出来ないぞ」


「これがこの程度ってやつに入るの!?」


 ……入らないな。


 実際俺も最初そんな風になったし。


「んじゃあ頑張って倒すから、出来れば援護えんごを――」


 ルリカはものすごい勢いで首を横に振った。


「……さいですか」


 10歩くらい進んでボススライムの目の前に立つ。


「ま、こんくらいか」


「ピィィィィギィィィィ」


 やっぱ迫力満点だな!


 圧が凄いもん圧が!


「ピギィッ!」


 ブンと自分の体で俺に攻撃してくる。


「うおっ!?」


 危ねー! 今の【神速】発動してなかったら当たってたぞ!?


 やっぱスライムのボスなだけあって速度がヤバい。


 普通のスライムの五倍くらいはある。


「……うし!」


 俺はボススライムめがけて駆け出す。


「ピィギィ!」


 ボススライムが攻撃をするが、【神速】を発動しているので普通に避ける。


「おらよっ」


 そしてブニブニした体にパンチをお見舞いする。


 普通だったら弾かれて終わりだ。


 でも、今の俺は……


「ピギィッ!?」


 裏技バグ使ってるから、ワンパンです。


「パァァァァァン!」


 ボススライムが弾けて、ボススライムゼリーが辺りに散らばる。


Lvレベルが100になりました。

 HPの上限が505になりました。

 MPの上限が606になりました。

 スキルポイントを4獲得しました』


 よしっ!


「す……凄い……」


 ルリカは目を見開いて俺を見ていた。


「裏技使えばこんなもんよ」


「え、あれ? いつその裏技を発動させたの?」


「んー? マジでついさっきだ。

【神速】にも裏技があってな、【神速】を使って18歩目の時に73°の角度から右手でぶん殴るとワンパンになるんだよ」


「あ、だからさっきこんなもんかって……」


「おっ、聞いてたのか。そそ、距離とか角度とかそこらへんを……」


「やっぱ貴方凄いわね……」


「いやいや、裏技が凄いだけさ」


 そう言って帰り支度を始める。


「俺は疲れたし、テレポートで帰らせてくれないか?」


「わ、分かったわ」


 スライムゼリー達とボススライムゼリーを集めて、また木の幹にタックルしようとしたのだが……。


「あっ、これダメだ」


「え?」


 そのままバタンと倒れる。


「ちょ、どうしたの!? イイジマ!?」


「MP使いすぎた」


「え? で、でも今MP無限なんでしょ?」


「おいおい、エネルギーが沢山あるからってそのエネルギーを出し続ける体がずっとつと思うか?」


「あ……」


 そう、MPが大量にあるからって慣れてない体で発動したからとこうなる。


 慣れって大事なんだなやっぱり。


「少し休憩してから行こうぜ」


「ごめんなさい……貴方にやらせちゃって」


い良い、どーせ倒せなかっただろうし」


「ちょっ、酷くない!?」


「あははは」


 ルリカが俺の体を優しめに殴る。


「痛てっ、おい俺今重傷者だぞ!?」


 そう言うと今度はルリカが爆笑する。


「笑いながら殴るってサイコパスか……?」


 その後も少しだけ殴られるのであった。

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