MPが足りないなら無限にすれば良いじゃない

 テレポートが終わり、近くの木から飛び出す。


「ちょ、ちょっと待ってて……うっ……うぇおるぇおるぇ……」


「大丈夫かー?」


「だ、だいじょ……るぶぉるうぇるうぇ」


 あー、やっぱテレポート初回はそんな感じで吐いちゃうよなー、分かるわー俺も最初そうなったもん。


「お、落ち着きてきたわ、ありがとう」


「ん、それじゃあ早速スライムを狩るか」


「えっ、ええ……」


 やっぱまだ完全には回復してないか。


「【超回復】」


「わっ!?」


 ルリカに回復魔法をかけてやる。


「な、なんか吐き気が消えて……」


「回復魔法でお前を回復した」


「……ありがとう……」


「んじゃ今度こそ行こうぜー」


 そう言って歩き出したが……スライムどこにいるんだぁー?


 見渡す限り草、草、草、スライム、草、草、草。


 …………ん? 今居たよな?


「おい、あそこ!」


「あっ、居るわね……【神速】!」


【神速】を発動してルリカは駆け出した――が……


「あ、あれ?」


 速くなかった。


 普通に目で追えるくらい速くなかった。


「ね、ねぇ、【神速】ってめちゃくちゃ足が速くなるスキルじゃないの?」


「いや、めちゃくちゃ足が速くなるスキルだ……何が起きて…………あ」


 分かったぞ俺。


「なあ、ルリカのMPが足りてないんじゃね?」


「……それだわ!」


 当たり前だがMPが足りなかったら魔法やスキルは発動しない。


 そして【神速】は【加速系】スキルの最上位のスキルだ。


 ルリカの今のレベルは18だから、まあそりゃあMP足りないよな。


「って事は私この【神速】使えないって事!? た、楽しみだったのに……」


「……使えなくはないぞ」


「え!?」


 ルリカの目がめっちゃキラキラ光る。


「ど、どうやるの!?」


裏技バグを使う」


「うっ……」


 さっきのテレポート裏技で吐いたりしたからか、あからさまに嫌そうな顔をする。


「あのな、裏技全部あんなんじゃないんだぞ?」


「あれよりもっと酷いのがあるの!?」


「逆だ逆、裏技の全部が全部吐いたりとかいう体に異常をきたすやつじゃないって言ってるんだ」


「じゃ、じゃあ今からやるのは?」


「……ナ、ナラナイヨ……?」


「棒読みすぎよ!」


 くそ、俺こういう系の嘘は下手なんだよ!


大丈夫だいじょぶ大丈夫、ちゃんとやればあんま痛くないから」


「痛いの!? でも……うぅ……分かったわよ……」


「んじゃあちょっと付いてきて」


 そうしてその裏技を発動できる場所までテレポートで移動する。


「うっぷ…………な、なんとか大丈夫だわ」


「そりゃあ良かった。んじゃー今からMPを無限にしていくぞー!」


「………………へ?」


 頓狂とんきょうな声がルリカの口から出て、固まる。


 あれ? そんな驚く? テレポートで裏技には慣れたかと……。


「とりまそこに立ってー」


「ちょ、ちょっと待って! MP無限ってどういうこと!?」


「そのまんまの意味だ。どれだけ魔法とスキルを使おうがMPがなくならない、つまり使いたい放題になるって事」


 ルリカがピキッと音を立てたかと誤認するレベルで固まる。


「ルリカー? おーい?」


 反応、無し。


「あちゃー立ったまま気絶してるや」


 じゃあ俺が先にMP無限になっとくか。


 やり方は簡単!


 まずテレポートした場所の近くにある石を持つ。


 んでその石を持った時に一回転半して、ジャンプする。


 そんでその石を思いっきり落とすのだが、その際落ちるところに足を置いといて落ちた石に少しだけ角度を付けさせる。


「痛って……」


 その痛みを我慢して足を思いっきり上に上げる。


 そうすると石がひっくり返った状態になる。


 そしたらその裏面が出た石に足を乗っけて片足立ちをする。


 そしてわざと後ろに向かって転んで、頭を地面にぶつけると……


飯島イイジマ 小夜田サヨダ


 Lv99


 HP:500/500


 MP:∞


 魔法:【超回復】【麻痺付与】【毒付与】【眠り付与】


 スキル:【業火斬り】【氷雨】【剣の舞】【創造】【神速】』


 MP無限じゃおらぁ!


 でもこれクソ痛い事やる割には永続じゃなくて寝たら直っちゃうタイプの半永続なやつなんだよな……。


 ま、寝るまで出来るってので十分ありがたいんだけどな。


「う、うーん……」


「お、起きたか」


 ルリカがようやく目を覚ました。


「あ……ごめんなさい…………驚いちゃって……」


「良いさ、んじゃあ今度こそパパッとMP無限にしようぜ」


「……分かったわ……」


 その後、ルリカが石を足にぶつけて悶絶もんぜつしまくっていたのは実に滑稽こっけいだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る