石を投げればスライムゼリーに……(?)

「な、何をしているんだ!?」


 突然地面を掘り始めた俺を見て試験官はめっちゃ戸惑ってる。


 いやぁ〜、この裏技バグを見つけるのには苦労したわ……。


 ホリホリしまくると右の方に小さめの石がある。


 それを右手で取って赤スライムがいる方向に投げる。


「ふんっ!」


 因みに思いっきり投げないと意味ないからそこ注意。


 んで石が落ちた場所に行ってみると……


「よーしあったあった」


 石が、赤スライムを倒すと落とす赤スライムゼリーに変わってる。


 戦わなくても良いって最高だな。


 さっきの所に戻ってまた違う場所を掘る。


「お、おい、赤スライムゼリーをどっから持ってきた?」


「え? あー、倒しましたよ」


「は、早すぎる! まさかズルしたんじゃないのか?」


 実際してるから何も言えねぇー。


「え、えーと……」


 どうすりゃ良いんだこれ?


 と、取り敢えずホリホリ再開するか……。


「おい! 無視をするんじゃない!」


 試験官がそう叫んで俺の服を掴んでくる。


「ちょ!?」


 ビビって腕をブンと後ろに回す。


「どわあぁぁぁ!?」


 すると試験官は吹っ飛んでいった。


 ……あ、俺今レベル99なんだった。


 あちゃーやっちまったな。


 確かゲームだとNPCを攻撃するとなんか犯罪者レベル的なのが上がっちゃうんだよなぁ……。


 で、でも今のは掴んできた向こうが悪いし? まずわざとじゃないし?


 ……いやあの、なんかすいません。


「貴方」


「ん?」


 突然声をかけられた。


「今試験官を吹っ飛ばしてたけど、何者なの?」


 声の主は先程とんでもない速度で筆記試験を終わらせた彼女だった。


 てか俺と彼女以外いないから当たり前か。


「えー……何者と言われても……」


「まさか、魔族?」


「な訳ないだろ」


「なら何であんなに力が強いの?」


「あー、それはな、レベルが……」


「レベルが?」


「99だから」


「はぁ!?」


 あれ? 正直に言っちゃダメなヤツだった?


「99って……う、嘘はやめときなさい、レベルが99の人間なんていないし魔族にもいないわ」


 えー……インワドには普通にいたんだけど……。


「でも実際そうだしなー」


「ス、ステータス! ステータス見せて!」


「ほい」


 ステータスは基本自分にしか見えないが、見せようと思えば見せる事が出来る。


「嘘……本当に99……」


「だから言ったろ?」


「信じられない……一体どうやって……?」


 ……裏技の事、話しても良いかなぁー?


 ……まあ、別に存在自体を教えてあげるくらいは良いか。


 知ってもそう簡単に見つけられるものじゃ無いし。


「裏技だ」


「ば、ばぐ?」


「そ」


「な、何なのそれ?」


 やっぱこの世界裏技は認知されてないんだな。


「んーと、言わばこの世界の不備だな。MPを使わずに壁を貫通したり浮いたり出来るぞ」


「そ、それでレベルを……」


正解せーかい、しかも結構簡単になれる」


 彼女は驚愕の表情のまま固まった。


「あー、大丈夫か?」


「だ、大丈夫よ。ただ簡単にレベルを99に出来るっていうのが衝撃で……」


「そうか。ところで、それもう取ってきたのか?」


 そう言って彼女が抱えていたスライムゼリーを指差す。


「? えぇ、だってスライムくらい簡単に倒せるでしょ?」


「……マジかお前」


 確かにスライムは弱い。だが、それは防御力や攻撃力の話だ。


 こいつらはスピードがエグいほど速いのだ。


 あのドロドロとした体のどこからそのスピードを生み出しているんだと本気で考えるくらいには速い。


 だからもうそれに追いついて素材を取ってきてるのは異常なのだ。


「取り敢えず、私はこれで試験合格よ。貴方もその裏技とやらを使って合格しちゃいなさい」


「ああ、そうする」


 またホリホリを再開して石を投げる。


 んでスライムゼリーを持ち帰る。


 7分くらいで終わった。


「ご、合格だ」


 試験官はそう言って『合格』と上の方に書かれた紙を渡してきた。


「それを持って受付嬢達のところに行くんだ、そしたら冒険者になれる」


「ありがとうございました」


 さぁーてと、んじゃあ冒険者カードを受け取ったら早速クエスト受けてみますか!


「あっ、ねえ」


「ん?」


 先程の女性に声をかけられる。


「良かったらなんだけど、クエスト一緒に受けない?」


「え? 何で?」


「は、初めてやるクエストが一人なのって……こ、怖いじゃない?」


「あぁ〜……」


 確かに俺も最初の頃は怖か……いや、すんごい楽しみだったな。


 でもこの世界じゃあ命がかかってるんだから怖くて当然か。


「分かった、一緒に受けよう」


「! ありがとう! 私の名前はルリカ! よろしく!」


「イイジマだ、よろしく」


 握手を交わした俺らは、受付嬢の元へと行くのであった。

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