Case6 姉妹(妹Side)
「何で……何で何で何で何で何で⁉︎ 何でお姉ちゃんは生き返らないの⁉︎」
気づけばお姉ちゃんが死んでしまってから六年が経った。私は何度も何度も生き返らせる実験を繰り返し、失敗をした。そんな私は、二週間前にあることに気づいた。
お姉ちゃんを生き返らせることができないのは、自分の生死に対する知識が足りないからじゃないのか。
早速、私はそれを知るための装置を作った。それは並行世界移動装置。世間に発表すれば大発明だが、私が欲しいのは名声ではなくお姉ちゃんだ。絶対に誰にも教えない。
それから私は数々の世界に行った。
ある世界では、主従関係を超えた愛を見た。
ある世界では、死してなお大切な人のそばにいる人間を見た。
ある世界では、死に悩む人間を見た。
違う。
私の見たかったのは、こんなものじゃない。もっと本質に迫るような、生死を自由に操るヒントになるものが見たかった。
「次の世界に……うぐぅ」
世界を跨ぐたびに私が私でなくなる気がする。向こうの世界に溶け込むために様々な姿になっているが、その人格が残るのだ。そしてそれが喧嘩をしているのか、最近は頭痛が止まらない。
「お姉ちゃん、お姉ちゃん、お姉ちゃん、おねーちゃん、待ってて、もうすぐ会えるよ」
装置のスイッチを押す。
動かない。
「ぇ……何で……」
もう一度押す。動かない。
「何で……何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で」
動かない。動かない動かない動かない動かない動かない動かない動かない動かない動かない動かない動かない動かない動かない動かない動かない動かない動かない動かない動かない動かない動かない動かない動かない動かない。
「それがなぜか分からないなら、それはかなり大変なことだよ」
装置の後ろから人影が出てくる。
「二十四号……何でここにいるの」
「ずっと黙って見ていたけど、もう見てられない。それ以上したら貴方が壊れちゃうよ」
「……壊れる? 」
壊れる……ね。
「生憎、私はもう壊れているの。お姉ちゃんが居なくなった、あの日からずっとずーーーーーっと」
「……巳錫」
「私を直す方法はたった一つ、お姉ちゃんを生き返らせることだよ! お姉ちゃんが生き返るまでは続けるよ」
「そう……なら、力尽くで止めるしかないかな」
そう言って二十四号が取り出したのは包丁だった。私はそばにあった工具箱から、ドライバーを取り出す。
「恨まないでね」
「こっちのセリフよ」
⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎
数分後、あたりは血まみれになっていた。その中に立っている人と倒れ込んでいる人がいた。
「あぐぅ……左腕が動かないじゃない」
立っているのは巳錫。左腕だけでなく、身体中に切り傷がある。
「う……はぁ……」
倒れているのは二十四号。あらゆるところにドライバーの芯を刺した穴があり、虫の息だ。
「ほら、どうよ。あなたに私は止められなかった」
「……そう、だね。ゲフッ」
「リセットかぁ。久しぶりすぎてできるか怪しいな。体も修復しないとだし、面倒だなぁ」
「……残念だけど……これで結城千早クローンは、最後だよ」
「……はぁ? 」
二十四号の言葉に眉を顰める巳錫。
「何を、言っているの? 貴方達はお姉ちゃんが生き返るまで、ずっといてもらうよ」
「……あとは……きっと、彼女が何……とか、して……く、れる……はず」
「彼女って誰? 」
「…………」
返事は返ってこない。そこには完全に死んだクローンがいた。
「……まあいいか。私はお姉ちゃんを生き返らせるのに忙しいんだよ」
そう言って巳錫が装置を直すためにきびずを返そうとした瞬間。
「っ⁉︎ 」
確かに壊れたはずのクローンの手が動く。その動きは腕、足、顔と全身に広がった。そして起き上がった死体が言葉を発する。
「痛た……。何だかすごい体に入っちゃった。まあいいか」
「え……ぁ……」
「さて……何とも言えない状態だけど」
目の前にあるのは、ありえない再会。普通なら叶うはずのない、奇跡。
「貴方を止めに来たよ、巳錫! 」
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